真っ白な世界で君だけが笑ってくれた

山田空

真っ白な世界

「だいじょうぶですか」


久しぶりに誰かの声を聞いた気がした。


「だれだ」


「お母さんがこういうのは聞くほうから名乗るべきだっていってましたよ」


「……俺の名前は山田啓介(やまだけいすけ)」


「啓介っていうんですね」


声の若さからして10歳ぐらいに感じる。


それにお母さんっていってるしきっと10代だろうな。


「名前は教えてくれないのか?俺が名前を言ったんだ教えてくれてもいいだろ」


「わかりましたそれじゃあいいますね私の名前は柊 結衣(ひいらぎ ゆい)っていいます」


「柊か良い名前だな」


「えへへいなくなったお母さんがつけた名前だからそういってもらえると嬉しいです」


俺はそのことばを聞いて驚いて開かないはずの目が開きそうになった。


「母親を失くしたのか?」


「……ええ」


「……失礼なことを聞いてすまなかった」


「いえだいじょうぶですよ」


「それならよいが」


「山田さんは目が見えないんですか」


「……うんああそうだ」


「それじゃああなたにはこの世界がどう見えているんですか」


「真っ白でなにもない」


「それじゃあ山田さんはそのことを辛いと思ったことがありますか」


「ないな」


「……即答ですかなんでですか」


「今いうのもなんだが俺はきみと同じく家族を亡くしている……まあ俺の場合は母親だけでなく父親もだがな」


「そうなんですねでも笑っていますよねなんで笑えるんですかそんな辛い境遇で」


「辛そうだと心配してくれるのは嬉しいが俺はこの境遇を一度も辛いなんて思ったことはないよ……いやそれはうそだな」


「ウソなんですか」


「ああ心が壊れかけたことがある」


「それじゃあなんでまだ笑えているんですか」


「たった1人の女性に出会ったからかな」


「その女性ってどんな人なんですか」


「目が見えないからどんな見た目かは語れないが勇敢で頼もしくてそして優しかったな」


「優しい?」


「よく俺は八つ当たりをしてしまっていた言い訳をするなら目も見えず両親もいなくなって心が疲れてなにもかもいやになってたからというのがあるのかな」


「それでもずっと寄り添ってくれたんですね」


「ああその子だけが俺を寄り添い一緒に笑ってくれた優しい女性だったよ」


「でも女性は近くにいませんよね」


「だって別れてしまったからな」


「なんでですか」


「なんでと言われたらケンカをしたからかな」


「なぜケンカをしたんですか」


「しょうもない理由だよ……俺には娘がおった娘は病気でからだが弱くてだからその娘の話でケンカをしてしまった」


「後悔していますか」


「後悔しているに決まっているだろ」


ふと気になったことを質問してみることにした。


「なあもしかしてイチゴなのか」


「……お父さん」


そして抱きついてくる俺の娘のイチゴ


私の名前は柊結衣


私はいえなかった本当の真実を


本当はこの人の娘さんはおなくなりになっている。


そのことを知ったらきっと思い詰めて自殺をしようとするかもしれない。


だから私は真実をいわないことにした。


会いに来た理由は本来は娘さんの死について話すためだったけど

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真っ白な世界で君だけが笑ってくれた 山田空 @Yamada357

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