乗ってるカー
EDMを爆音で流し、ノリノリでヘドバンをする車の収容が完了した。
車は爆音で流す音楽に乗ってあげると、かなり素直に着いてきてくれる子だったらしく、俺達は帰りの車がグラグラと揺れるほどにはしゃぎまくった。
俺の想像するアンノウンとは随分と違う存在であったが、何がともあれ無事に収容が成功し、俺はアンノウンの特性を見抜いた功労者としてその日機動部隊のっちゃん達に感謝されていた。
アンノウンの特性というのは、研究してみないことには分からない。
常に危険であると言う前提の元動く為、下手に刺激をしたがために大惨事を招くなんて事も少なくないそうだ。
そりゃ、危険な存在であるという前提で動かないと、本当に危険な存在だった場合に酷い事になるしな。
しかし、その危険であるという前提がマイナスに働く事もある。
アンノウンの鎮圧及び収容は、かなり運ゲーに近い部分もあるそうだ。
「おーい。どうやらあの車の報告書が出来上がったみたいだぞ」
「もうできたのか?」
「かなり単純でわかりやすい奴だったというのもあるが、基本的にアンノウンの報告書は翌日には作られるんだ。危険な事、やっては行けないことを伝えるためにな。ただ、後々その危険性が増えたり新たに分かることもあるから、書き換えられる。あくまでも参考として読むぐらいがいいんだよ」
アンノウンは未知なる存在。その存在を全て解明するのは現状出来ないらしい。しかし、分かっている部分も多くある。
それを纏め、他の職員達に知らせるのが報告書だ。
「情報クリアランスレベルはいくつ?」
「1だ。音楽流しながらヘドバンするだけの車だしな。情報を封鎖する必要性がない」
情報クリアランスレベル。
このGAと言う組織には、情報クリアランスレベルと言うものが存在し、そのレベルに応じた場所までの報告書は見れるらしい。
企業にも採用されているセキュリティクリアランスと同じで、必要な分だけ情報を得るためのシステムだ。
例えば、バイトで雇った清掃員なんかがアンノウンの情報を必要とするか?
答えは否である。
清掃員は清掃に関することだけを知っていればいい。
ちなみに、俺の情報クリアランスレベルは3。
基本的なアンノウンの情報は見られるが、組織に取って重要な情報などにはアクセスできない。
最大レベルが5らしいので、半分ぐらいの情報にはアクセスできるだろう。
まだこの機動部隊に入って二日目だから、このクリアランスを使ったことないけど。
一応、緊急時の場合は例外的に情報クリアランスレベル5を付与されるとの事らしいので、組織の柔軟性が伺える。
「見てみるか?」
「見たーい!!」
「もちろん見るよ。何せ、茜が初めてお手柄を上げたアンノウンだしね」
「俺も見てみたいな」
全員が見たいと言ったので、雫は報告書を机の上に広げる。
さて、どんな事が書いてあるのかな?
────────
Ujp-05-147 乗ってるカー
危険度レベル
safe(まぁ、安全)
状況
収容
説明
・Ujp-05-147は白色の普通車の見た目をした車高が高いアンノウンです。新潟県■■にて発見されました。
・Ujp-05-147は、その異常性により施設■■にて収容されます。
・Ujp-05-147は、人に危害を加えずまた脱走の危険性も低いためsafeに分類されます。
詳細
・Ujp-05-147は、爆音で音楽を奏で独りでに動き出す異常性を持っています。その原因は判明していません。
・Ujp-05-147の流せる音楽は多彩であり、現存する音楽であれば全て流せるものだと予想されます。
・Ujp-05-147は、その音楽とノリの良さから職員のメンタルケア及び研究の対象として収容されます。気分が落ち込んだ時や、はしゃぎたい時はぜひ訪れてください。
・Ujp-05-147の流した音楽にノらないとUjp-05-147は凹みます。
職員の会話
職員A「次は何を流してもらう?」
職員B「そりゃ次は、アレだろ。頼んだぜ車!!」
職員A「うはっ!!懐かしい曲が来たな!!最近同人系の曲は聞いてなかったし、これで盛り上がるか!!」
職員A「( ゚∀゚)o彡゜」
職員B「( ゚∀゚)o彡゜」
以上のことから職員たちのメンタルケア及び、交流として使われます。気になるあの子を誘って、さぁ貴方も!!
─────────
ええんか?アンノウンの危険性や異常性を纏めた報告書がこんなので。
何気にアンノウンの危険性がないと判断されたら、遊び場として使われる組織の管理体制の緩さよ。
実際は滅茶苦茶危険な存在でした、とかだったら大惨事になるんじゃないのか?
後、乗ってるカーってダジャレじゃねぇか。“乗ってるか?”と“カー(
「ツッコミどころ満載だな。マッチョが売りの少女の報告書を読んだ時もそうだが、なんだ?アンノウンってこんなネタキャラばかりなのか?」
「いや、こう言う面白いアンノウンは多いけど、ちゃんと危険なやつもあるよ。それこそ、後輩がであったアンノウンはかなり危険な存在だしね」
「その報告書を見てみたいものだ。このままだと、アンノウンが人類に危害を加えているとはとても思えん」
「あはは。気持ちは分かるけどね。僕も最初マッチョちゃんを読んだ時は“アンノウン?これが?”って思ったものだし」
今の所、2つの報告書を読んだが、そのどちらもがネタキャラであることに俺は困惑を隠しきれなかった。
アンノウンって危険な存在って授業で聞いたんだけど?人を殺すどころか、場合によっては世界すらも滅ぼし得る存在もいると言われたのに。
俺が出会ったあのアンノウンは、確かに危険なものであったのは間違いない。
もしかしたら、俺の想像するような報告書が見られるかもしれないし、後で見せてもらおうかな。
情報クリアランスレベルが十分なら。
「そういえば、アンノウンには“収容”“監視”“破壊”の三つの状況がるよな?あまり詳しい話を聞けてないんだが、どんな感じなんだ?」
報告書に書かれた“状況”と言う項目。
ここはアンノウンが現在どのような状態にあるのかを示している。
“収容”、“監視”、“破壊”の三つがあるのだが、“監視”についてはあまりよく分かっていなかった。
うちの隊長がかなり端折ったからね。
「あれ?説明しなかったけ?」
「三つの状態があるよ、としか教えてもらってない。収容はその名の通り、どこかの部屋に閉じ込められることを言うのは分かるし、破壊もその名の通り壊された無力化されたと言うのはわかる。だけど、“監視”がよく分からない。見守るだけなのか?」
「ふむ。確かに監視はちょっと複雑だから分かりにくいか。よし、教えてやれ先輩!!」
「え、私?まぁいいけど」
奏音先輩に解説を丸投げする隊長。
それでええんかとは思うが、多分俺との会話がちょっと少ないのを察して会話の頻度を上げようとしてくれたのだろう。
雫は性格がちょっと........いや、だいぶ悪い気がするが、こういう気遣いができると俺は思っている。
もしかしたら、単純に面倒なだけかもしれないが。
「よく聞くといい後輩。監視とはその名の通り監視することである!!」
「「「........」」」
胸を張ってそういう先輩。
あの、その詳細を聞いているんですが........
「えーと、先輩具体的には?」
「天使が人間界に干渉することは無いでしょう?それと同じ。後は私達のように、その有用性から意図的に封印をされなかった者たちの事だ!!」
「........なるほど、つまり組織が観測事態はできるけど収容できない存在だったり、俺達のような収容されずに利用される奴らのことを纏めて“監視”にしているわけか」
「え、今のでわかるんだ........」
「スゲェな。後半はともかく前半はサッパリだったぞ。今度から通訳頼もうかな」
なるほど。確かに“監視”なわけだ。
それにしても、厨二言語で話すのやめて貰えませんかね?翻訳するの大変だよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます