u機動部隊
ここ数日間、俺は常人では体験し得ない体験ばかりしている。
遭遇するまでは鼻で笑っていた、現代科学ではどうやっても説明がつかない異常現象に遭遇し、挙句の果てには自分自身が異常現象となってしまった。
未だに俺の“異常性”という物が何なのかは分からないが、この組織がそう判断し収容したという事は何らかの異常性を俺は持っているのだろう。
そして、そのための検査。
身体検査はこの16年という長いようでみじかい人生の中で何度も経験してきたが、その横に銃(ホンモノ)を持った人達が着いて回るなんてことは無かった。
間違いなく人生で初めての経験だっただろう。そもそも、この国は一般人の実銃の所持が認められていない。
そんな初めての体験を数多くする中で、俺は遂に“機動部隊”に所属してしまう事となった。
正直に言おう。
かなり不安であると。
このままの生活は確実に精神が腐ると思い、半ば賭けのような状態でこの提案に乗ったが、本当にこれでよかったのかと言う不安は拭えない。
しかし、俺は雫を信頼するしか選択肢が無かったのも事実なのだ。
「この組織については軽く説明したね。覚えているかい?」
「現代科学では解明できない、異常性を持った存在“アンノウン”の研究をする組織」
「惜しい。正確には、アンノウンから人類を守る組織の方が正しい。研究しているのは、後の人類の発展やアンノウンに対する対抗策を見つけるためだね」
u機動部隊の隊員に合わせると言った雫は、俺を連れて施設の中を歩く。
俺はその後ろを大人しく着いて行った。
「アンノウンはこの世界の驚異となり得る。ものによっては、それ一つで世界が滅ぶ可能性すら秘めているんだ」
「........にわかには信じ難いが、存在するんだろうな。つい三日前なら鼻で笑ってた」
「海外に行って“価値観が変わった!!”とか言うやつの気持ちが少しは分かっただろう?それとは比べ物にならないほどに、大きく変わっただろうけどね」
この三日で俺の価値観は大きく変わった。確かに雫の言う通り、海外に旅行へ行って“価値観が変わった”という人の気持ちが分かる。
こんな価値観を知りたくもなかったが。
「この組織“GA”はそれらのアンノウンを人々から守り、一部を利用して共存している。比較的安全で、尚且つ制御が効くアンノウンを味方にしているという訳だね。例外もあるけど」
「俺やアンタのように?」
「そういう事。ちなみに余談だけど、GAは
どうでも良さそうに組織の名前の由来を話す雫。
守護天使と言えば、ガブリエルとかミカエルとかそういう奴か。有名なものだと七大天使とかになるのかな?
俺はそこら辺の神話や伝承に詳しくは無いが、このような設定は何かと使いやすくゲームや漫画などにもよく見られる。
名前ぐらいなら知っていた。
「そして、私達の所属するu機動部隊は茜を含めて全員がアンノウンだ。日本で唯一アンノウンだけで構成された部隊であり、GA日本支部の最高戦力でもある」
「........!!全員がアンノウン?いいのかそれ」
「安全面の話で言えば、暴走さえしなければ問題ないね。それと、アンノウンを倒すならアンノウンをぶつけた方が確実なんだよ。毒を以て毒を制す。異常存在には異常存在なんだよ」
と、言うことは、あの眼鏡をかけたお兄さんもアンノウンであるという事か。
確かに明らかに変な力を使っていた場面も見られたし、アンノウンと言われた方が納得出来る。
あれは、アンノウンvsアンノウンの戦いだったという訳か。
u機動部隊がどのような組織なのか、また俺が捕まっているこの組織はどのような組織なのかと言う説明を受けていると雫がある部屋で立ち止まる。
「ここがみんなが居る部屋だね。ちなみに、普段私達が居るのは東京だったりする。だから、今はちょっとした出張かな?」
「日本中を飛び回りそうだね」
「実際、沖縄にいた翌日に北海道に飛ばされるなんて事もあったぞ。真夏の時期だったから、北海道は快適だったね」
本当に北から南まで行ったり来たりしてそうだな。俺が思っている以上に、ここの仕事は大変なのかもしれない。
そんなことを思いながら雫が扉を開くと、そこには俺を助けてくれた眼鏡のお兄さんとピンクのメッシュが入っ他ツインテールの眼帯少女がいた。
「あっ!!大丈夫だった?!」
「アンノウンになったという事以外は特に問題ありませんですよ」
「良かった。いや、良くないか。本当にごめんなさい。僕が油断したばかりに........」
「いえ、なってしまったものは仕方がないですから。それに、命を守って頂いたので」
俺が部屋に入ると、俺を助けてくれたお兄さんがペコペコと頭を下げながら、謝罪をしてくる。
正直、それに関してはもうどうでもいいんだよなぁ。確かに不自由の生活が待っているのは明白だが、それを今更どうこう言ったとしてもこの現実が変わる訳では無い。
偉い人は言いました。“人間、諦めも肝心だ”と。
「紹介しよう。このポンコツ君はUjp-01-83“亡霊の手”。こっちのツインテールロリがUjp-01-66“✞片翼の天使✞”ちゃんだ」
「ちょっと雫お姉ちゃん。ちゃんと名前を言ってよ。あの人も困ってるよ」
名前を紹介してくれるのかと思ったら、訳の分からない紹介をされて困惑する俺。
助かる“✞片翼の天使✞”ちゃん........✞片翼の天使✞ちゃん?!
スゲェ名前だな。中学二年生でももう少し自重した名前を付けそうなものなのに。
もしかして、その眼帯ってそういう事?
「なぁ、俺も前にUjp〜って呼ばれたけど、それは何なんだ?」
「んー、簡単に言えば個体番号だな。Uが
へぇー。そうなんだ。
番号にもちゃんと意味があるんだな。
「まぁ、その辺の話はまた追々するとしよう。あ、もちろん茜にも番号が割り振られているぞ」
「最初に話しかけられた時になんかそれっぽい事を言ってたね」
「Ujp-01-98“スノーシャークマン”。それが茜の個体番号だ。ちなみに、まだ発見されて間もないアンノウンだから、場合によっては番号が変わることもある。特に分類を表す01の所だな」
「俺は人間だぞ?」
「“人型”と“人間”は違うんだよ。ま、そこら辺も後でお勉強の時に話してやる。今は交流を深めるのが先決さ」
雫はそう言うと、俺に向かって手を差し出した。
どうやら、握手を求めているらしい。
「改めて、Ujp-01-32“それ、ダメです”こと、雨宮雫だ。これからは君の上司に当たる。隊長と呼んでくれ。よろしく」
「竜胆茜だ。よろしく、隊長」
「Ujp-01-66“✞片翼の天使✞”こと、鈴仙奏音(れいせん かのん)だよ。私の事は........んー、先輩って呼んでね!!」
「よ、よろしく。先輩」
「僕はUjp-01-83“亡霊の手”こと、丸魔瀬名(まるま せな)。僕のことは普通に瀬名って呼んでいいからね。それと、本当にごめんなさい........」
「もう気にしてないって。よろしく」
こうして俺は、今度仕事を共にするu機動部隊の面々と顔を合わせる事となったのであった。
その日の夕食はちょっとした歓迎会を開かれ、俺は久々に誰かと共にご飯を食べることが出来て少し嬉しかった。
俺は意外と、一人ぼっちがダメな性格なのかもしれない。
【アンノウンの分類】
Ujp-〇〇-〇〇と表記される中の真ん中の部分。ここの番号によって分類分けがされている。
00:分類不明
01:人間
02:生物
03:物質
04:宗教又は歴史
05:機械
06:自然
07:抽象、概念
08:空間、時間
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