奪われたもの
緋山宥
エピローグ
どうしてこうなってしまったのだろうか? どこで間違えたのだろうか? 何が間違いだったのだろうか? それとも最初から間違いなど一つもなく、こうなることが決まっていたのだろうか? まあ、どうでもいい。どうしようもなくちっぽけな自分の過去と向き合うのも、くだらない自問自答を繰り返すのも今日でおしまいなのだ。
ある人は言った。
「お前は悪くない」
ある人は言った。
「お前が悪い」
ある人は言った。
「お前の責任じゃない」
ある人は言った。
「すべてお前の責任だ」
頭が狂いそうになるほどに毎日繰り返されてきた自分にとっての地獄。何もかも奪い尽くされた。そこで生じた感情の果ての形はどんなものなのだろうか? 今自分の中に残っているのは何なのだろうか? 失った果てにあるものは何なのだろうか?
もう僕の中に、何かを受け止められるほどの器は残っていない。すべて持て余し、流れ出ていってしまう。せめて彼女が僕に与えてくれるささやかなやすらぎだけでも最大限に味わいたい。でもわかっている。もう今の僕にはそれができない。
彼女は涙を流しながら言った。
「そんなの悲しすぎるよ」
その涙の意味が、僕にはわからなかった。その言葉の意味が、僕にはわからなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます