捨て猫少女を拾う

YUUma0000

捨て猫少女を拾う

僕は片田舎に住む大学生だ。順風満帆な生活している僕にはひとつの悩みがある。それは、家に猫耳をつけた少女がいることだ。始まりについて話そう、大学から帰ったある日家の前にダンボールが置いてあった、少し湿っていてかなりでかい。最初は捨て猫かと思った。これは困った。

家にゲージなどは無いのだ。飼いたくても飼うことはできない。無視して家に入ろうとしたその時

「食べ物をくれませんか?」

 驚いた、日本語を話したのだ。

「君は誰だ?」

 そういった時ダンボールの上側が空いた。そして、そこには猫耳をつけた少女がたっていたのだ。何度も目を擦った。

「なんでこんな所に」

「それは話す事ができませんが、お腹がすいていて、なにかくれませんか?」

 僕は、渋々了承した。彼女は聞く。

 「名前は?」

「和也(かずや)だ、ところで君の名前は?」

「私の名前は、…………美希(みき)です」

 なんでそんな格好してるの?

「それは、猫の自由さに憧れたからです。この広い地球で、のびのびと生活出来たら、どれだけ幸せだろうと考えていました」

「なるほどね、でも生活はどうするつもりなんだ?」

「養ってくれませんか?」

 彼女は目を輝かせて言う

「そんな急に言われたって、自分まだ学生だし、そして君は幼い女子だろ、無理だよ」

「そこをなんとか!お願いします!」

「ん〜わかった、でももし警察でも来たらお前を突き出すからな!」

「はい〜わかりましたよ〜」

 彼女は浮かれている。

「今日から家族だ!家事ぐらいはしてもらうぞ!」

 まず、汚れた部屋を一緒に掃除する所から始めた。一人暮らしの大学生の部屋なんて汚いもんだ。

「ふぅ〜ある程度は片付いたな。これから何すっかな〜」

 まずは掃除してくれたご褒美をあげるべきか?いやいやこれからの事を話すことが先か?とりあえず、もう受け入れてしまったもんだから、将来について考えるしかない。

そんな妄想に浸ってる間に彼女から話しかけられた。

「私ほんとはね、怖かったの、お兄さんが悪い人だったらって、でも貴方みたいな人で良かった」

 僕は、飛びつかれた衝撃で膝から崩れ落ちた。いきなりの事だったからびっくりしたけど、よく良く考えればこんな展開、俺以外なら断ってただろうな。

「とりあえず、今日は疲れたから寝よう。」

「そうだね、おやすみなさい」

 彼女をベットで寝かせ、僕はソファーで寝た。誰かと同じ天井の下で、寝ることなんて無かったから嬉しかった。まあ恋人じゃなくて特殊な関係だけど。

 翌朝、目が覚めると彼女の方が先に起きていた。

「あら、起きたの?気持ちよさそうに寝てたから起こせなかった」

 一瞬夢かと戸惑った現実だ。そうだった幼い少女を引き取ったのだった。

「自分は今日学校あるから、ひとりで大丈夫?」

「うん!」

 彼女は元気よく答えたが心配だ。電話番号を伝え何かあったら連絡してくれと、使わなくなったガラケーを渡した。学校に向かう途中聞いてた音楽も、学校で受けた講義も、帰り道での友人との会話も、何も頭に入らなかった、それは全部彼女のせいだ。心配でたまらなかったのだ。我が子のように、弱くて、いつでも居なくなりそうで、たまらなかったのだ。

 ガチャ!勢いよくドアを開ける。見るとそこには料理をしている彼女を見つけた。

「良かった、無事だったか」

「お疲れ様」

 まるで新婚のようだった。

「あなたのために晩御飯を作ったの、あんまり料理慣れてないから味が濃かったりしたらごめんね」

 彼女の指に絆創膏を巻いているのを見つけた

「どうしたの?」

「料理する時に切っちゃったの、けどね、痛くないから大丈夫よ」

「それなら良かった」

 作ってくれた晩御飯は、目玉焼きと波のような形になるまでこんがりと焼かれたベーコンだ。まるで朝食のような食事だが彼女はまだ幼い、仕方ないであろう。

 1口そしてもう一口と勢いよく箸を進めていく。最後に一言。

「美味しかったよ」

「あなたにそう言って貰えて幸せ」

 ああなんて幸せなんだろうこの時間がずっと続けばいいのにな、そう考えたのもつかの間家のドアをノックする音が聞こえた。恐る恐るドアの隙間からチラ見するとそこには警察の姿があった。

「すいません、今人探しをしていまして」

「すいませんちょっと待ってもらってても良いですか?ほんとに一瞬で終わるので」

「どうぞどうぞ」

 まずい、このままでは刑務所に入ることになってしまうしかも前科は幼女を誘拐、社会に戻る事と周りからの目は大変な事だろう。彼女に一目散に駆け寄り

「タンスに隠れて静かにするんだ」

「いきなりどうしたの?」

「説明は後でするからとりあえずしたがって!」

「わかった」

 彼女をタンスに押し込め平常心を保ちながら玄関へ戻る

「すいません遅くなっちゃって、それでなんの御用ですか?」

「美希という女の子を探していましてね。4日ほど前から行方不明なんですよ。良かったらお話聞かせて貰えませんか?」

「いや〜知らないですね。近所でそんなことがあっただなんて。怖い世の中ですね」

「そうですかお手数お掛けして申し訳ないです」

「いえいえいつもご苦労さまです」

 ガシャ、ドアが閉まる音が確認でき隙間から消えたか確認した。一安心、なのか?

「いきなりタンスに閉じ込めて悪かった。実は警察が来てだな、君の過去について話してはくれないか?」

「うん、わかった、実はね親から虐待を受けてて、虐待から逃げるために家出してきたの、飼ってた猫がいてその子だけが唯一の友達でそれに憧れて私も猫になろうって思ったの」

「なるほどな、よしっ決めた。俺がお前を守ってやる!」

「ありがとう」

 まずはスマホを買わないといけないな、連絡ができないとなったら不安だし。

「明日一緒に電気屋さんに行こうか」

「うん!楽しみ!」

「今日は疲れたし寝ようか」

ソファーに横たわり目をつぶった時肘と肘を囲うように小さい腕が伸びてきた

「どうしたの」

「怖くて寝れないの、この幸せが終わることが怖くて、私たちずっと一緒にいるよね」

「当たり前だ、お前が大人になるまではとりあえず守るから」

 2人はそのまま抱き合いながらその日は夜が明けた

「おはよう!起きて起きて」

「ハイハイ、起きますよ〜」

「もう!二度寝しないでよ!」

 僕は朝に弱い、そのせいで留年しそうなぐらいだ、まず人間は朝に起きるように作られていないのだ、人間は夜行性の動物なのではないかと思う。

「ハイハイわかったからモールにでも行こうか」

 今日は学校休みだというか休みにした、1日休んだところで変わらない、まあダメな学生の考えかもしれないが。

 まずは、腹ごしらえだ。美味そうな匂いが漂ってくる、何だこの匂いは、あれだ!ラーメンだ!

「ラーメン食うか?」

「甘いのがいい!」

「ワガママ言うなよ〜甘いのは後にしよ、お腹にたまらないし」

「わかりました」

 少し不貞腐れたような様子だ。

「え〜っとじゃあチャーシューメン1つで」

「私も同じのがいい!」

「仕方ない、チャーシューメン2つで」

 ラーメンはいつだって学生の味方だ安くて美味しい。

 音のなる板をもらい待っていると五分ほどで鳴った。彼女が取ってきてくれるらしい。

「美味しそう」

「そうだね、冷めないうちに早く食べよう」

 2人はまるで仲の良い兄妹のようだった。ラーメンを食べ終わり2人はショッピングモールを歩く。彼女は替えの服を持ってなかったので。ここで買うことにした。

「こんなの似合うんじゃない?」

「ちょっとこれ、スカート短くない?」

 正直可愛いと思ってしまったしてしまった。彼女を見ながらニヤニヤしていると。

「変態!」

「ごめんごめんつい見とれちゃって」

「恥ずかしいから!」

 彼女も少し頬を赤らめた。結局その服は買わずに黒色のパーカーに縦線が入ったズボンを買った。パーカーを来た彼女はまるで猫のようだった。

「今日は俺が家事をする番だ」

 俺は風呂場を洗うことにした、持ち手付きのスポンジに泡を染み込ませ満遍なく拭いていく。水周りはしっかり洗わないとカビが出てきてしまうのだ。

「わぁ」

 転んだ。大きな声を出し盛大に転けた。頭を風呂の縁に強くぶつけ意識が朦朧とした。その時。

「大丈夫?」

 彼女が助けに来た。彼女は僕をベットまで移動させて膝枕までしてくれた。おかげで僕は意識を失わずにすんだ。

 いつも助けているばっかりだと思っていたらいつの間にか助けられていた。今だけじゃない。何気ないこの日常に楽しみを見出してくれたのも彼女だった。人と人。繋がりの大切さを身に染みて感じた。幸せな毎日に転機が訪れる。

「おはよう〜」

「おはよう〜」

 あれ?声がしないな。どこへ行ったのだろう。ベットを見てもソファーを見てもいない。僕は全速力で玄関へ向かった。ポストに手紙が入っていた。

「和也家に入れてくれてありがとう。そして自分の子供のように優しく接してくれてありがとう。ほんとはねあなたのことが好きでずっと一緒にいたいのだけどそうはいかないみたい。あなたの事を好きになったからこそ、好きな人に迷惑は掛けたくない。これ以上いたら噂になって和也が捕まっちゃうかもしれない。そんな事になって欲しくないから私から離れるね。またどこかで会えたら。その時を心待ちにしています 美希より」

 僕は涙をこらえることが出来なかった。ずっと一緒にいると思ってたなんなら捕まってもいいそう感じ始めていたのに、命をかけて守りたいと願ったのに。今日も学校だ、本当は休みたいが休んだところでもう君はいないし何もやることが無いや。学校に行きながら僕の心はぽっかりと大きな穴が空いていて螺旋状の階段を落ち続けているような感覚だった。また会えるかも。その気持ちだけを大切にして。

 5年後……

 僕は学校を卒業し、就職した。大手には入れなかったけど、まあまあいい所には入れた。不満は無い。美希の事も忘れかけて、あの時ほど絶望はしてない。過去ばっかり見てても仕方がない。前をみたい、目の前に見えるレンガに登る野良猫のように。この世界で自由に生きててくれてればそれでいい。

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