宇宙人観察

元気モリ子

宇宙人観察

「趣味は人間観察です」


趣味を聞いてこう返ってくると、私はいつも「それを言っていいのは宇宙人だけだよな…」と思う。


人間を観察対象にしているなど、

彼らは本当に宇宙人なのではないだろうか。



👽「趣味は人間観察です」


しっくりくる。


就職活動中の宇宙人、婚活・恋活中の宇宙人たちは、日々ありとあらゆるプロフィール欄に「趣味:人間観察」と、無意識に書き込んでしまっているのだ。


それに気が付かない者は、

「あら、なんて思慮深いお方」

「いいね!不思議ちゃん!」

とほだされているに違いない。


ところがどっこい。

彼らは地球上に潜む宇宙人なのだ。

私の目は誤魔化せない。


アイドルや芸人、俳優の公式プロフィールにも潜んでいることがある。

私はこれを見つけると、「はっはーん」と掛けてもいない眼鏡を上げる。

宇宙人みーつけた、と。


こうして、私の「趣味:宇宙人観察」が始まるのだ。



不思議なもので、観察者と被観察者は、観察者の方が優位に立っている気がしてならない。

だからこそ、奴らが「趣味は人間観察です」と、あくまで自身が観察者側だというスタンスを取っていることに私は納得がいかないのだ。

動物園の動物たちも、私たちを観ている。


だから今日も私は「宇宙人観察」に努める。

人間を観察しているつもりが、

いつの間にか人間の私に観察されているのだ。


ざまあみろ。



宇宙人観察を続けてみてわかったことがある。


それは、観察されていることを被観察者に気付かせない観察者こそ、一流の観察者であるということだ。


生き物はみな、視線を感じた途端に本来の生態とは異なった行動をしてしまうものだ。

本当は大盛りを頼みたいのに、好きな人が見ているから並盛りを頼む。

これが生き物というものだ。


つまり、自分で「趣味は人間観察です」などという宇宙人たちは、三流観察者なのだ。

(私は観察者として顔を割っていないのでノーカウントにしてくれ)


私はお前たちに観察されていることに気がついている。

だから本当の生態など見せてやらないのだ!


意図せずハム太郎のようになってしまったが、このように私はひとり足掻いて、宇宙人たちの「人間生態調査報告書」を撹乱してやろうと考えている。

同志はついてくるが良い。



朝方に寝て目が覚めるともう夕方。

野菜しか食べない。肉しか食べない。

男でも男が好き。女でも女が好き。

誰も好きじゃない。みんな大好き。

本当は胸が小さい。本当は背が低い。

街中で大声を出す。肝心な時に声が出ない。

笑い方が変。走り方が変。


本当の私たちはこんなにも多様だと、

奴らは知らずに星へ帰っていくのだ。





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