ひき逃げ

天川裕司

ひき逃げ

タイトル:ひき逃げ


「わあっ!!」

キキィィイィ!!(ブレーキ音)


「………や、やっちまったのか…」

一気にどん底の気分。

俺は車に乗ったまま、しばらく考えていた。


この通りは人気のない道。

いつも会社の往復の近道に使ってた道だ。

裏通り。

そこを結構なスピードで走ってたから…


ブレーキが間に合わず、俺は人をひいてしまった。


車から降りて確認しようとしたが、

心と体がどうにも動かず、

これまでの人生…

これからの生活のことを先に考えてしまい、

俺は走り去ってしまったのだ。


(帰宅)


「はぁあぁ…!どうしよおぉ…!」

ひき逃げだ。

まさか自分がこんな目に遭ってしまうとは…。

いや被害者のことを考えれば、

彼か彼女の方が「こんな目に遭うとは…」だ。


でも実際、この段階になると怖過ぎる。

ここで勇気を奮い社会的責任を…

最低限の責務の果たせるヤツと

果たせないヤツにはっきり分かれるって事が、

身をもって思い知らされた。


「……戻らなきゃ…」

心の中で何度もそう思ってみたのだが

やっぱり…。


その直後の事、全く想像できない恐怖が俺を襲った。


「はっ…!?」

リビングでうずくまっていた俺。

キッチンの方から何か物音がして、

そっちに集中してると…


「わ…わあぁあぁあ!!」

傷だらけの女が

ボロボロの服を着ていきなり現れたんだ。


そんな時でもあったからか

俺は少し過呼吸になってしまいその場で失神。


次に目覚めると、もう朝が来ていた。


「ね…寝てたのか…」

おそらく疲れすぎてあまりのショックで、

悪夢を見て居たのだろうか。


でもあの事故の記憶だけははっきり残ってる。

俺は警察に自首した。


(捜査)


警察「ここが事故現場だったんですね?」

「…ええ」

不思議なことに、被害者が消えている。


あれから誰かここへ来て…

いやそんなはずはない。

俺が自首した時、

警察は初めて聞くような素振りだった。


そして警察は

また信じられないことを言ってきた。


警察「あなたは時速60キロで、正面からその女性をひいてしまったと?」


「そ、そうです…」

ここではっきり再確認した。

そう、確か昨日の夜、

俺がひいたのは女性だったと思う。


警察「…でもねぇ、これはさっき鑑識の調べからも判ったんですけど、何かをひいたような形跡が1つも無いんですよ?」


動画はこちら(^^♪

https://www.youtube.com/watch?v=awNOX5sICIk

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ひき逃げ 天川裕司 @tenkawayuji

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