ポイントの使い道3

 血生臭い配信ばかりの中でのほほんと料理している配信があったらどうだろうか。

 埋もれて消えるか、あるいは血生臭い配信に飽きた人が集まるかである。


 埋もれる心配をしていたのだけどウイによって比較的注目されるように押し上げられた。

 子供が料理を作るという心穏やかに見られる配信は今のところ人気を博している。


 もっと続けてほしい。

 もっと色々料理を作ってほしい。


 そうした要望も兼ねてパトロンが贈られることも増えてきていたのである。

 子供のお小遣いにも満たないようなポイントをもらった直後にこうして大きなポイントを見せられれば自ずと二人の目の色も変わる。


「やってきたこと無駄じゃなかっただろ?」


「う、うん!」


 カメラアイで映されると結構恥ずかしかった。

 けれどもこうして数字として頑張った結果が見えると嬉しいものであるとサシャも嬉しそうにしている。


「でもさ」


「なんだ?」


「これってどうやって使うんだ?」


 ポイントを手に入れたのはいい。

 しかし肝心なのはポイントで何ができるかということである。


「それも説明してやるよ」


 スダッティランギルドでは配信について何も教えてくれなかった。

 回帰前でもそれは同じでイースラも自分でいじったりスダッティランギルドが無くなった後に出会った人に教えてもらって色々と知った。


 教えてもらったとて回帰前では何も変わらなかっただろうけど今回は知っておけば変わることは多い。


「メニュー画面開いて……これ」


 画面を指差して操作を教える。


「ポイントでやれることは二つ。一つは俺やベロンがやったようにポイントを送るってこと。知り合いなら個人間でも送り合えるし、何かの配信を見て送ればそれはパトロンになるんだよ」


「ふぅーん」


「そしてもう一つできるのがポイントで色々なものを買うことができるんだ。こっちの方がメインだな」


 ポイントを送り合ったってポイントが移動するだけである。

 なので使い道としては買い物に使うのがほとんどだ。


「今開いてもらったのはショップ画面だ。色々なものが売っててポイントで購入することができるんだよ」


 画面には色々なものが表示されている。

 二人にはわからないだろうからイースラが適当に画面を動かしてみると水や食料、武器や防具、道具や魔道具など様々なものがある。


「これをこうして……」


 イースラは試しにジュースを購入する。


「おわっ!?」


「なんか出てきたよ!」


 購入のボタンを押した瞬間イースラの手に陶器で作られたボトルが現れた。

 サシャとクラインはいきなり手の中にボトルが現れて驚いている。


 イースラはちょっと笑いながらコップを取り出して中身を注ぐ。

 オレンジ色の液体がコップに注がれてサシャとクラインは呆けたようにその様子を眺めている。


「ん、飲んでみ」


 イースラが二人にコップを渡す。

 サシャとクラインは一度顔を見合わせた後同時にジュースを飲んだ。


「ん! 美味しい!」


「うん! 甘くて……ちょっと酸っぱくてすごく美味しい!」

 

 三等分したので一人当たりの量はそんなに多くない。

 一気に飲み干してしまったのであっという間に空になったコップを見て目を輝かせている。


 柑橘系の果物を絞ったジュースで回帰前人にオススメされたこともある甘味の強いものだった。


「まあこんな感じで買ったものが手元に届く。基本的にはなんでも売ってるけどやっぱり良いものは高い。ただ売ってるのはモノだけじゃないんだ」


「モノだけじゃない?」


「どういうことだよ?」


「最初の頃にステータスってもん見ただろ?」


「そういえばそんなのあったね」


「開き方覚えてるか?」


「もちろん!」


「えーとどうやんだっけ?」


 サシャはサラッと、クラインは少し苦戦しつつステータス画面を開いた。

 ステータス画面の左側に並んでいるのは能力値である。


 力、素早さ、体力、器用さ、魔力、幸運という六つの値が数値化されて並んでいるのだ。


「あれ……?」


 ステータスを眺めていてサシャはあることに気づいた。


「なんだちょっとだけ数字が上がってる?」


 最初に見た時よりもステータスが上がっているように思えたのだ。

 サラッと見ただけだったので細かい数字こそ覚えていないものの幸運以外の数値が違っている。


「うん、上がってると思うぞ。体を鍛えて強くなれば実際にステータスも強くなるんだ」


 ステータスは変わらないものじゃない。

 鍛錬して強くなればその分ステータスにも反映されて強くなれる。


 大人になると能力の伸びは悪くなるが子供の今のうちはステータスを伸ばすのにも適した時期なのである。

 だから周りの目を盗んで鍛錬していたのだ。


「それは今はいいとして買えるモノとしてステータスを買うことができるんだ」


「ステータスを?」


「そうだ。力とか素早さとかそんなモノやステータス画面の右側に入るスキルなんかも購入できるんだよ」


「じゃあ強くなり放題ってことか?」


 ステータスを買えるなら買えるだけ買っておけば強くなれる。

 クラインの考えは間違っていない。


 ただし正しくもない。

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