ポイントの使い道2
「こ、これだけ……」
ポムは袋の中身を見て顔を歪ませている。
「それと配信で得られたパトロンもみんないくらか分けておく」
ベロンがメニュー画面を呼び出して操作する。
するとイースラたちの前に勝手に画面が現れる。
『ベロンから200ポイント送られました!』
討伐依頼の報酬とはまた別に配信による収入もある。
ただしスダッティランギルドの配信はごく普通の魔物討伐なので配信による利益はあまり良くない。
だから配信による視聴数で得られたポイントやパトロンから送られたポイントは多いとは言えない。
それでも分配するのだからそこだけは偉い。
「ただ200ポイントな……」
もらっておいて何であるけれど少ないと思わざるを得ない。
こうしたポイントは直接買い物ができる他にお金に交換することもできる。
けれど200ポイントではほとんど何もできない。
ポイントでの買い物も厳しいしお金に換えても子供のお小遣いにすらならない。
「あ、兄貴……もうちょっと……」
「何を言ってる? お前はカメラアイ持ってただけだろうが!」
料理係の件以来ポムに対するギルド内での立場は弱くなっていた。
ポムが食材費をある程度横領していた可能性はみんなどこかで分かっていた。
けれどもイースラたちの作る料理のまともさを見て料理も不真面目だし思っていたよりもお金を使い込んでいたことが浮き彫りになってしまったのである。
ともなってみんなの態度も冷たくなった。
元々怠惰気味だったポムに対するわだかまりは大なり小なりあったのだろうとイースラは思っている。
さらに今はイースラがオーラを使えることがわかった。
ベロンですら改善の見られないポムに対して頭を悩ませていてポムの立場はもはや崖っぷちなのだ。
今回の討伐もポムはカメラアイを構えてみんなを撮っていただけで戦ってもいない。
そもそもポムはあまり戦力としても期待されていない。
ポムがもう少し分け前を要求してもベロンは良い顔をしなかった。
「うっ……」
「これまでのこと考えるとお金に困るはずないよな?」
これまでとは食材費のことである。
ベロンはしっかりとしたお金を食材費として渡してくれていた。
貧しい食事ばかりだったことを考えるとポムの懐に入った金額は決して少なくない。
何に使っているのかベロンも知らないがそれだけの金があればさらに分け前を要求するなんてしなくてもいいはずなのだ。
「……な、何でもありませんでした」
ベロンに睨まれてポムは引き下がるしかない。
「近々問題が起こるな」
青い顔をしているポムを見てイースラはニヤリと笑ったのだった。
ーーーーー
「ということで俺たちも分配します!」
「なんだよ、いきなり?」
酒場でお腹いっぱい食べてギルドハウスに帰ってきた。
晩御飯を作らなくてよくなったので夜の時間が余っている。
ただ討伐に行ったから疲れているので早めに休むつもりだった。
しかし寝る前にやることがある。
「お金もらってちょっと浮かれてるよな?」
「ん、ま、まあな」
たとえ少なくともお金はお金。
孤児院時代は自分のお金なんてなかったので少しでももらえればクラインやサシャにとっては嬉しいことである。
「あんなもんで満足しちゃあ……困っちゃうぜ」
「なにそのキャラ?」
いつもと違うイースラにサシャは奇妙なものを見る目を向けている。
イースラはお金をもらえる時を待っていた。
クラインとサシャがイースラから離れていくことはないと思っているけれど世の中何があるか分からない。
少しばかり別の要素においてもインパクトを与えてイースラと活動することの利益を浮き彫りにしておこうと考えていた。
「ふふ、見てろよ」
イースラがメニュー画面を開いて操作する。
『イースラから10000ポイント送られました!』
「えっ!?」
「い、10000!?」
クラインとサシャの前に画面が現れる。
イースラからポイントが送られてきたという通知が表示されているのだが、その内容に二人ともひどく驚いた。
なんと10000ポイントも送られてきたのである。
「どどど、どーゆうことだよ!?」
「何でこんなにたくさん?」
実はイースラはオーラユーザーでありハイウルフを倒したということで200ポイントだったのだけどクラインとサシャは100ポイントしかもらっていなかった。
100ポイントの二人からしてみると10000ポイントはおよそ100倍である。
驚くのも当然だ。
「まだ配信そのものの収益化は出来てないけどパトロンがたくさんいるからな」
イースラたちが行っている配信の調子はとても良かった。
今現在世界に娯楽や余興は少ない。
本などは高価で演劇なども頻繁に行くものではない。
仕事や鍛錬で時間を使っても全ての時間を何かしていられるわけじゃない。
そんな中で配信は良い暇つぶしになる。
けれども配信は戦いがメインで血生臭い。
多くの人にとって魔物を討伐する姿は興奮を覚えるものであるけれど中には苦手な人もいる。
誰にとってもいい娯楽とはいかないのだ。
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