第47話 居候と同室者

「あいせー、明日ダンジョンなんでしょ? 私のことは気にせず先に寝てね?」


「気にするなと言われても無理なんだが?」



 うーむ、どうしてこうなった。



 ここはオレの部屋。


 言い換えれば、オレの寝室でもある。



 今の時刻は午後10時。


 うん、夜ですね。



 で、夜だというのに。


 このお部屋には、年頃の男女が二人きり。


 そう、オレと一緒にいるのは、オレの机に座って勉強している環那である。







 横道このはが我が家に転がり込んできたのは今日の夕方。


 この家に住まわせてくれと懇願するこのはの要望を受け、環那のご両親に相談し、オレの叔母である衣鈴さんもオンラインで参加した大人同士の話し合い。


 その結果、このはをこのまま自宅に帰すのは危ういという結論に至る。


 だが、だからと言ってオレと星華という子供だけの家に住まわせるのはどうなのかという議論になり。


 じゃあ葛西家ならどうだとなるが、部屋数の問題等々もあり。


 結局、とりあえず今夜は、このはは我が家に寝泊まりするということになった。



 だが、我が家には年頃の男子、つまりオレがいる。


 そこに年頃の女の子が泊まるとなれば、当然何か間違いがあってはいけないと考えるのが人の常。


 ならば、間違いが起こらないように環那がオレの部屋で寝泊まりすればいいじゃんという事になったのだ。


 おかしくね?


 しかも、この話を提案してきたのは他ならぬ環那のご両親なのだ。



 いや、間違い防止というならこの状況もまずいだろうと反論したが、「お前らのソレは間違いではない」と環那の父親にドヤ顔で言われてしまった。


 解せぬ。



 だからと言って、オレが居間とかで寝ようとすれば話が本末転倒になってしまうので、素直に自分の部屋に新たに布団を敷いて横になろうかというところである。


 環那は、これからが一番集中できる時間とのことで、もはや本来の用途で使われることのなくなったオレの勉強机に座り教科書などを開いている。


「あいせー、私が布団で寝るから、あいせーはいつも通りベッドで寝なよ。」


「あーうん、そのほうがいいか。オレのベッドに環那を寝かせるのも臭いとか嫌だよな。」



「いや、べつにそんなことはないんだけど、ほら、私が押しかけているわけだから、部屋の主の寝床を奪うのは申し訳ないと言うか――」


「オレからしたら客の方を持て成して柔らかい方に寝てもらった方がいいかと思ってしまうんだが?」



「あは、そっかー。じゃあ、一緒にベッドで寝ちゃう?」


「はい、環那は布団で寝てください。おやすみー」


 環那の冗談に付き合うのもなんか疲れるので、オレは会話をぶった切ってベッドに入ろうとして


 足音を消しながら、部屋のドアにそろりと近づいていき、


  ガチャッ!



「君たちは何をしているのかな?」


「「「あはははははは(にゃー)」」」



 そこには、ドアのそばで聞き耳を立てていた星華とこのは、そしてにゃあ助が息をひそめていたのであった‥‥‥。



◇ ◇ ◇ ◇


「まったく、にゃあ助まで」


「にゃあん」



「こんなときばっかり猫みたいな声出しやがって」


にゃあああああん?猫ですけど



「星華も星華だ。お兄ちゃんはそんなはしたない子に育てた覚えはありません。」


「うー」



「まあまああいぴょん、そこはあーしが強引に誘ったからという事で、妹ちゃんのことはお目こぼしでよろしくなのだよ!」


「お前らいつのまにそんなに仲良くなった?」



「「てへっ」」



 あーもう。


 このはに影響されて星華が不良にならないだろうな?



 だが、まあ、妹の「てへっ」はいいものではある。うむ。



「で、このははどうすんだ? 学校行くのか?」


「んー、制服とかも家に置いてきちゃったしー、家には戻りたくないしー、それにいまさらがっこー行ったって変な目で見られるだけだしー」


 まあそうか。


 家にも学校にも居場所がないんだもんな。



「だからっ! きょうはあいぴょんについて行っていい?」


「オレに? ダンジョンだぞ?」



「そっ! あーしもなんかお役に立ちたいんだよ? 夜のお世話は正妻に止められちゃったからね?」


「いや‥‥‥もしかして、お前も潜るつもりなのか?」



「足手まといはわかってるけど、荷物くらいなら持てるんじゃないかなーって」


「いや、それでも結構あぶねえし、ついてくるだけで大変だぞ?」



「ぶー。じゃあ、まずは見学ってことで」


「(うーん、家に置いておいてもろくなことしなそうだし、にゃあ助をチュールとかで手なずけて裏のダンジョンにでも行かれたら面倒だしな)」


にゃああああんそんなにチョロくないわ」 


「なんか不当に疑われてるきがする?」




「はあ。じゃあ、まずロッジまでは一緒に行くか。その後、どうするかはザワさんに聞いてみるとして。」


「やった! よろしくねあいぴょん!」



「こら抱き着くな」


「えへへへー」


「このはちゃん、それ協定違反」


 なんか星華から冷たいオーラが出てきた。



「じゃあ行くか」


「はーい!」



 こうして、いつもの原付だと二人乗りが出来ないので路線バスのバス停に行き、磐城ダンジョンのロッジ行きに乗車したのであった。





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