第41話 買い取り担当者
日曜日。
昨日端末を誤タップしてインストールした疑似マッチングアプリはすでに消去した。
もちろん星華の目の前でだ。
三十数件のお相手がピックアップされていたようだが、そんなのには目も通していない。
あとでさゆりさん(暴熊メンバー)から聞いたところによると、その三十数件のだれかにお気に入りのボタンを押すとマッチングが成立していたのだとか。
なぜさゆりさんがそんなことに詳しいのか聞いてみると、フフフと妖艶な笑みで躱された。
うーん、ミステリアスだぜ。
ということで、暇つぶしのアプリも無くなったオレは絶賛ヒマを持て余していた。
星華はいつもの通り勉強中で、にゃあ助は香箱を作ってお休み中だ。
環那も家で勉強していると思われ、我が家はとっても静かである。
昼寝しようにもまだ朝の時間だ。
それに、昨日の午後から寝続けていたので眠気が全くない。
勉強でもしようかなとも思ったが、高等部に通ってないオレが勉強する意味が分からない。
なので結局は携帯端末をいじくるしかやることがない。
ヒマをこじらせ、探索者協会からダウンロードさせられた『探索者基本要綱』を流し読む。
だいたいのことはザワさんから教えてもらってはいるが、こうしてしっかりとした文章を読むことも必要だろう。うん、これがオレなりの勉強だ。
そして3分もしないうちにウトウトし始めると、端末にメッセージが送られてきた。
「探索者協会からか」
今日は日曜日だというのに、ご苦労なことである。
まあ、協会は年中無休である。
週末の会社の休みの日に潜っている兼業さんも結構な人数がいるので、土日を休みにするわけにはいかないのだろう。
で、メッセージの内容はと言うと、送り主は前回顔を合わせた副支部長の濱屋さん。
お偉い人なのに日曜日も出勤してるんですね。
そして要件というのは、前回の話にもあったように、スライム魔石の買取の為協会の職員を我が家に派遣してくれるという件のことで、今日の午後にでもどうかという事らしい。
まあ、ヒマだしちょうどいいか。
前回は132個納品し、佳子さんの立ち合いを持って無事現金を受け取っていた。
今回も、一昨日足踏み脱穀機で乱獲したのが100個以上はある。
これで200万円以上稼いだことになる。
このペースだと、相続税の支払いなど楽勝なんじゃね?
そう思うと、胸の奥にあったつかえのようなものが取れたような気がした。
これで、名目上も、金銭的にもこの家でこのまま星華とにゃあ助と生活することができる。
これまでも先日の132万円をみてふわっとした安心感はあったが、こうして明確にめどが立つと、また違った爽快感だ。
オレは自由だ!
家族を守れる!
とはいっても、油断はできない。
また前回のように怪我したりしてダンジョンに潜れなくならないように気を付けなければ。
それに、贅沢もいけない。
前回の二日連続パーティーやらで、5万円くらいは使っている。
これまで大金を持ったことがないものだから、下手すればあっという間に使い切ってしまうかもしれない。
お金の使い方には注意しなくては。
でも、ちょっとくらい贅沢してもいいよね?
その日の昼食は、チキンなインスタント袋ラーメンに卵を3個入れて食べた。
◇ ◇ ◇ ◇
ちょうど午後1時半に彼女は訪れてきた。
「こんにちは~。探索者協会です~。」
なんかほわっとした感じの彼女は、探索者協会から派遣された買い取りの担当者。
名刺を見ると、皆川紗理奈(みなかわ さりな)と書いてある。
役職は、『探索者協会広先支部 探索者対応係』とのこと。
いわゆるギルドの受付嬢みたいな位置づけなのだろう。
「さっそくですけど~、魔石を見せていただけますか~?」
「あ、はい。こちらになります。」
「は~い、では、お預かりしますね~。いち、にい、さん――」
そして彼女は魔石の数を数え始める。
「はい、確認しました~。スライム魔石が116個ですね~。こちら伝票になります~。あとで大人さんの立ち合いで現金化してくださいね~。」
「はい、ありがとうございます。」
オレは手渡された伝票を受け取る。
この紙きれ一枚が116万円になると思うと緊張する。
しっかりと折りたたんで財布の札入れにしまい込む。
これで話は終わりかと思って皆川さんを見ると、なにやら話をしたいような様子。
「どうかしましたか?」
「あっ、え~と~、こんなにスライムの魔石見ることなんて初めてなので~、すごいな~なんて思いまして~」
「そうなんですね」
「できれば~、そのダンジョンも見せて欲しいんですけど~、ダメですかね~?」
「いや、問題ないですよ」
オレは皆川さんを案内してダンジョンに向かい、スライムがぽよぽよしている所まで進んでいく。
「さすがにどうやって倒しているのかは聞きませんけど~、興味深いです~」
「あ、このへんの道具使って倒してます。倒し方は見れば想像できると思いますけど」
まあ、職員に隠し事してもあれだし、どうせこの農具武器は三上家や葛西家の人間しか使えないっぽいしな。教えても支障はないだろう。
「そうなんですね~。あ、誰にも言いませんから安心してください~。」
うん、どうやらこの人も信用して良さそうだ。
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