第二章: 笑顔の中にある違和感

第8話 新しい日常

「ねえ、あゆみちゃん、一緒にこれやろう!」


りおが色とりどりのクレヨンを手にして、あゆみの手を引っ張る。


リビングには、散らばったおもちゃや色紙が溢れていた。


「何を描こうか?」


あゆみがそう尋ねると、りおは「おうち!」と元気よく答える。


その声に、隣で静かに絵を描いていたれんもちらりと視線を向け、「僕も手伝う」と小さく呟いた。


それからの時間、リビングは子どもたちの笑い声で満たされた。


りおが「ここにお花を描こう!」と言えば、れんは「これじゃバランスが悪い」と少し口を尖らせながらもクレヨンを動かす。


その二人を見守るあゆみは、自然と笑みを浮かべていた。


「二人とも仲がいいね。」


帰宅したすばるがリビングを覗きながら言うと、れんが「うん、今日は僕がりおの手伝いをしてあげたんだ」と得意気に話した。


その姿に、すばるが「さすがだな」と頭を撫でる。


この家に訪れるようになってから数週間、あゆみは二人の子どもたちと自然に過ごせるようになっていた。


最初は警戒していたれんも、今では「一緒に遊ぼう」と自ら声をかけてくれる。


りおに至っては、「あゆみちゃんがいい!」と父親よりも彼女を頼る場面が増えてきた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る