母になる、その途中で

ゆう

第1話 未知の世界

冷たい冬の風が頬を刺すような朝だった。



如月あゆみ(21)は、小さな荷物を両手に抱え、目の前の家を見上げていた。


大きくもなく、どこか古びた雰囲気を漂わせる二階建ての家。


「本当にここでやっていけるのかな……。」


胸の中に膨らむ不安を押し込めながら、彼女はインターホンを押した。


「いらっしゃい。」


ドアを開けて顔を見せたのは、星宮すばる(30)だった。かつての恩師であり、今では彼女の恋人。


「ようこそ、あゆみ。これからよろしくね。」


その言葉に少しだけ救われた気がしたが、家の中から聞こえてくる子どもたちの声に、彼女の心は再び揺れた。


「ねえ、パパ、誰が来たの?」


れん(6)と りお(3)。この家で一緒に暮らすことになる二人。


「あゆみちゃんだよ。これから一緒に暮らすんだ。」


すばるの言葉に、二人は好奇心いっぱいの目で彼女を見上げた。その無邪気な瞳を前に、あゆみはぎこちなく笑顔を作るしかなかった。


「私に、できるのかな……。」


子どもが苦手だったあゆみにとって、この家での生活は、まさに未知の世界への第一歩だった。

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