MICO YAYOI

穴八真綿

第1話 ◇ 巫女 弥生 ◇

-1-


「やい、このブス」

「キツネ」

「お寺の化け猫」

「……」


 唇を跡が付くほど強く噛みしめ、周りをぞろっと取り囲んでいる悪ガキ達を少女は強い眼差しで、きっと見据えた。

 切れ長の大人びた目が、幼いながら何か徒者でない印象を与える───。


 束の間、両者の間に静電気のような、殺気立った緊張感が走る───!

 淡い桜の花弁の唇が、かっと開いた!!

 皆、一同にはっと息を呑んだ。


 その時───。 


「やよい・やよい・やよい様。世界で一番美しい」


 悪ガキ達一人一人に、長い人差し指で論しながら、勝ち誇ったような少女のよく通る高らかな声が神社の広い境内中に響き渡った。


「───」

「……」

 悪ガキ達は、顔を見合わせホントくそ面白くないといった風にゾロゾロと帰っていった。


 きっとこの時だったと思う。この時から、私はもう何からも逃げないと誓った。


 他人からも自分自身からも。

 そして、これからの長い人生にも。


 神社の境内には、まだ肌寒い三月の風が吹き荒れていた。

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