異世界ギャルの無自覚無双~チートスキル「ギャル語」と「スマホ」でいいね稼ぎしてたらいつの間にか世界救ってました~
ラムいぬ
プロローグ ギャル、死ぬ。
校則違反スレスレの髪色で制服をオシャレに改造し、異世界アニメが好きそうなオタクくんにちょっかいを出してはケラケラと笑う。
放課後は同類とマックでダベり、家ではパンチラ寸前のダンス動画をバズらせた収益で推しのカップルチャンネルにスパチャを投げる。
休日は映えそうなスポットを巡っては自撮りをSNSにアップし、いいね数で自分の価値を推し量る。
そんな人並みのギャルことアベカナが、交通事故で死んだ。
歩きスマホ、駄目。絶対。
◇
彼女は視界一面に広がる青い空と雲の狭間に浮いていた。まるであの世とこの世の中間地点の様な場所だった。
「てかここ、映えすぎじゃね?ウユニ塩湖レベル100」
彼女は死んでもなお、スマホに夢中だった。勿論、自分もキメ顔で映っている。
「阿部神奈さん。聞いているのですか?あなたは死んだのですよ。そのスマホのせいで」
そんな彼女の眼の前に、白い衣を身にまとった女神が話を聞いてくれとばかりに嫌味を言う。
「あ~ね。死んだなうって呟いたわ」
ギャルにとっては死すらもSNSのネタだ。
「てかさっきから、メガミサマの言ってること意味わかんない。なんか転生するとか、チートだかチー牛くれるとかなんとかって、漫画の読みすぎじゃね?オタクくんみたいにさ~」
アベカナの目と手はいいねの返信に夢中だ。
「はぁ、何故、貴女の様な女性が転生者に選ばれたのでしょうか?むしろ、その手の書物に理解のある男性……オタクくんの方が良かったというものです」
女神は呆れ顔だ。
「あとメガミサマ、超絶美人で盛れてんのに逆光みたいの出すのやめてくんね?シルエットしか撮れないじゃん」
ギャルにとって女神なんてものは当然、「映え」の対象である。
「良いですか、もう一度貴女がここに来た理由について説明しますよ。かなり簡単に」
「ちょ待って、動画回すから」
女神はアベカナに再度説明を開始した。
彼女には[転生者]として[チートスキル]を付与された状態で[異世界]に降り立ち、魔王から世界を救う[使命]を果たす役目があると。
アベカナは撮影した動画を何度も再生し、女神の説明を聞いている様に見えた。
「……よし、いい感じだワ」
「ようやく理解して頂けましたか?」
「メガミサマの映える切り抜き動画、tiktakに上げていい?こりゃバズるわ~」
「……では、質問形式に切り替えましょう」
埒が明かないと思った女神は説明の仕方を変える。
「阿部神奈さん、異世界は貴女の好きな夢の国みたいな場所なんですよ?」
その目は、アベカナの願望そのものをスキルにせんとばかりだ。
「マ?」
アベカナが食いついた。
「[マ]です。そんな[夢の国]の主人公になって、[映える]スポットを[スマホ]で撮ったり、魔物の軍勢と[ショー]みたいな戦いを繰り広げたり、王子や魔王と会って[SNS]で自慢したり……もちろん[wifi]はタダです。[ヤバたにえん]で[ウケる]と思いませんか?」
女神が特定の単語を喋るたび、アベカナの体に光が差す。
「あーね、り。それちょっとワクワクするわ。メガミサマも日本語喋れんじゃん」
「極めて心外ですが……初めからこうすればよかったです。ご納得頂けましたか?」
アベカナの気が変わる前にと、女神は転生を急かす。
「まーね。てかさ、夢の国ってゆーけど、そこミッピーマウスみたいなマスコットいんの?」
アベカナが追加注文とばかり、女神に質問する。
「[マスコット]?もちろん存在しますよ!」
「おけまる水産。「ちょっと世界救ってみた」チャンネル立ち上げるわ。絶対バズるっしょ。収益化間違いなし。そんで推しにスパチャしまくって、プラベでトークしてもらお~っと」
「行ってらっしゃいませ、世界を救う勇者よ!」
こうして典型的なギャルことアベカナは、異世界に降り立った。
前代未聞の[チートスキル]を授かっていた事に気づかずに。
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