僕の嫁は龍神の嫁だったらしいです、嘘だと思っております

品画十帆

第1話 合コン

 おほっ、今日きょう今日きょうとて、いつもと違ってわたしゃ、京都じゃありませんよ、花の東京のど真ん中の新橋で、合コンなるお祭りに参加出来るのであります。


 えぇっと、新橋は港区ですよね。


 合同コンパって事は、コンパニオンみたいに超絶短いスカートをおしか、洗濯で縮んだようなお上着うわぎで、おヘソを見せていただけるのでしょうとも。


 期待がムクムクと盛り上がり、富士山に届きそうでとても硬いです、不届き千万ふとどきせんばんになっちゃいそうでおます。

 そうどすぇ。


 〈ユウト君〉からのお誘いの電話は、クッキリと「人数合わせのために、しょうがないんだ」とあきらめの色がありましたが、不祥ふしょう〈小太り河童〉の異名を持つ、このわたくしめの話術をもって、場を「ふ、ふっ、ふぇす」の会場が恥ずかしくて川へ流されてしまうような、大盛りがりにしてあげましょう、細工は流々さいくはりゅりゅうもみあげを御覧ごろうじろ、三郎四郎さぶろうしろう


 まるで受けない、完璧に受けていない、体臭が生理的に受けつけない、顔が無理ゲーできそう、頭は薄くてきたならしい。


 女性陣の「グギリ」「ガギリ」と鳴る歯ぎしりが、惨敗を雄弁に物語っておられます。

 えぇ、言われなくても分かってましたよ、僕の話術は日本海溝にほんかいこうに深くしずんだきり、再びお日様をおがめる日は来ないでしょう、軽蔑けいべつの圧でぺしゃんこです。


 それほどまでに女性陣より無視されてしまいました、クスリとも笑わなかったですね。

 たぶん、ヤバイ薬でもやっているのでしょう。


 〈ユウト君〉は他の男性の参加者から、「なぜコイツを呼んだんだ」とめられておられます。

 サンドバッグの様にゆらゆらとゆれれて、立っていられないのか、床に正座をして反省させられている、江戸時代の罪人のごとくです。


 「はぁー、人数を必ず合わせろと言っただろう。 それにコイツは何もしゃべらないヤツだったんだ。 お前は昔から訳が分からないけど、人前ではカタツムリのように沈黙していたじゃないか。 頭を強打するような出来事があったのか」


 「そうでしたかね。 ただ言われるように、頭と腰をグラインドさせるハッピーな事はありましたよ。 最近ようやく結婚することが出来たのです。 頭はつられて動いちゃうんです」


「えぇー」

「う、うそだ」

「きもいー」

「嫁はメス河童なんでしょう」


 某玉県ぼうたまけんの歯科衛生士の皆さんらしいですけど、女性陣から一斉に悲鳴のような黄色い声が上がりましたが、男性陣はあまりの衝撃に声が出ないようです。

 口をパカッと開けたまま待機をしておられます、そこにさっき叩き潰たたきつぶしたハエを入れてあげましょう、おめでとう、これで食虫人間の仲間入りが出来ましたね。


 「ペッ、ペペッ、コイツ何をしやがるんだ。 汚いだろう。 俺はカエルじゃねぇぞ」


 食虫人間ではなくて、単にカエル顔だったようです、そう言えばはだをヌメッとされています。


 「ごめんなさい。 ヌメッとしていたので、手がすべってしまいました」


 「はぁー、手が滑ってどうしてこうなるんだよ」


 「まあ、そのことはもう良いじゃないか。 俺は食べてねぇし。 それよりもお前、本当に結婚したのかよ」


 「はぁ、全然良くねぇよ。 ハエを口に入れたことを、土下座して謝れ」


 「お前、結婚しているのに、合コンに参加しても良いのか。 それは浮気って言うんだぞ」


 「いやいや、コイツの場合は浮気じゃないと思うな。 違うメス河童がいなければ、浮気が成立出来るはずがない。 人間の女じゃ無理だろう。 コイツには飲食代を多めに払う役割しかないはずだ」


 「えぇー、多めに払うとはどうしてであります。 おかしいですね。 キッチリコックリ、そこは割り勘でしょう。 不正は狐がつきますぞ」


 「まあ、それは後回しで、今のところ良いじゃないか。 それよりもお前、誰と結婚したんだ。 〈カパリン〉って言う名前なんだろう」


 おぉー、〈カパリン〉とは愛らしいお名前だ、ぜひそのメス河童との合コンを所望致しょもういたしますぞ。

 ぜひとも〈カパリン〉と、キュウリを両端りょうはじからかじり合ってみたいものです。


 「残念ですが〈カパリン〉とは違うのです。 名前は〈とわ〉と申しますぞ。 超絶美人でありますな」


 「はぁー、超絶美人って、良く言うよ。 お前の嫁が美人のはずがないだろう」


 おぉっと、僕は思っていたより信用があるな、誰も結婚したことを嘘だと思わないんだ。

 自分が結婚したと言っても、僕は絶対に嘘だと確信するぞ、結婚出来るような男じゃないからな、んー、だったら僕は結婚していないのか。

 逆に自分が結婚していないと言ったら、僕は本当だと確信するのか、そう思うかも知れない、時々僕は嘘をつく男だからな。


 「あぁー、僕は結婚しているのかしてないのか、どっちなんだよ」


 「うあぁ、何だよ。 急に訳もなく叫ぶな。 お前が自分で結婚していると言ったんだろう」



 「お前様まえさま、大声を出すのは、みっともないです。 妻の私も恥ずかしいですわ。 止めないのなら、キラウエア火山の火口に、今直ぐ投下とうかしてし上げますよ」


 いつのまにか、妻の〈とわ〉が目の前に立っていた、真っ白なワンピースを着た姿は、いつもどおりとても綺麗だ、まわりの空気さえきらめくように見える。

 ハワイのワイキキビーチで、水着を着た〈とわ〉と、グヘェヘヘェ、たわむれてみたい、サンセットに縁取ふちどられた〈とわ〉がとてもいとしいぞ。


 「お前様、お返事は」


 「ひぃ、〈とわ〉、ごめんよ。 はい、分かりました。 もう大声は出さないから許してちょうだい」


 「うふっ、冗談ですよ。 大切なお前様を投げたりはしませんわ。 ヤル時は丁寧ていねいに置いてきますよ、決まっているでしょう」


 「はぁー、それは良かった、一部良くないけど、マジで寿命が無くなると思ったよ。  それにしても、どうしてここへ来たんだい」


 「ちょっと困ったことになったので、家に帰って来てほしいのです」


 あれれ、黙って家を出て来たのに、どうして僕がここにいるのが分かったんだろう、どこかにGPSでも付けられたのかな。


 そう考えたら、背中の方から四角くて白い紙が、ハラハラと舞い落ちてきた。


 大きな雪の欠片のようだ、それとも千切れたトイレットペーパーか、ホルダーが回ってくれないと、紙がブチブチに千切ちぎれてしまうよね。

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