職業で決まるわけではない

「今日は儀式の日でしょ!」


 この母親の声で目が覚めた。


「分かってるよ」

「やっぱり楽しみだよな!」

「でもコハクの事だから弱いでしょ」

「まぁお兄ちゃんだしね」


 父親の言う通り楽しみではある。

 今日は10歳で職業が分かるからな。


 しかし俺はこの世界では妹だけではなく姉にも馬鹿にされているのか。


「それはコハク次第だな。」


 姉妹の俺に対する言葉に父親はフォローをした。


「お兄ちゃん次第?」 

「そんなの私は魔術師なんだからそれより良い職業なんてあるはずないわ」

「確かに魔術師は良いとされてるけどそんな事ないわよ?」

「だって剣聖と魔術師が最強とされているじゃない!」


 そう。この世界での職業で最強と言われているのが剣聖と魔術師だ。他にも色々あるが職業は親からの遺伝であるのだ。自分の親に似ている職業になるのだ。


 例えば親が戦闘系と農民ならどっちにもなる。しかしその他の職業はない。


 うちは父親が剣士で母親が魔法使いだ。

 剣聖は剣士の上の職業だ。

 魔術師は魔法使いの上の職業だ。


 剣聖と魔術師だけが王国の城で働く事ができる。その他の職業は滅多にないが城で働ける事ができる。なので姉が魔術師なのも珍しいが別にありえない事はない。


「エリカ、ゴルさんを知ってるか?」

「伝説の鍛冶屋の事なんて今関係ないじゃない!」


 ゴルさんとはドワーフで伝説の鍛冶屋とも言われている。今ではゴルさんが作る物は最強と言われる様になっている。


「他に知ってる鍛冶屋はいるか?」

「知らないわよ」

「一応言っておくが鍛冶はそれしか出来ないから弱いと言われているんだ」


 そうだ。商人みたいに色々と出来る職業は便利なので良いが鍛冶みたいな一筋の職業は弱いと言われる事が多いのだ。


「私、鍛冶って強いと思ってた!」


 7歳の妹のリンカの言葉は間違っていないのだ。

ゴルさんの努力で鍛冶を強いと思う人も増えたのだ。でもまだゴルさんしか鍛冶で有名になった人はいない為に弱い印象はある。


「お父さんが言いたいのはどんな職業でもその人次第で変わるって事よ」

「そう言う事だ、だからこの職業だからって決めつけちゃダメなんだ」

「でもコハクだからいってるのよ!」


 父親と母親の言葉でも12歳の姉のエリカは反省せずに反論している。


「職業だけが全てじゃないんだ!魔法の属性にスキルだってあるんだ!」

「スキルはまだ分からないけど私は炎と風の2属性もあるんだから良い方でしょ!」

「確かに普通の人は1属性だから良い方だな。」

「なら良いじゃない!」


 姉はそう威張っていた。

 

 スキルは自分の職業をしっかりと務めていると分かるようになる能力だ。


「確かに3属性の人は珍しいから2属性は凄いわね。」


 3属性あるのは珍しいのか。


 基本の知識しか知らないからこれは今知れて良かったな。凄い人としか聞いてなかったから普通に数人いるものだと思っていた。


「てか、お姉ちゃんずっと偉そうに言ってるだけじゃない?」

「何言ってるのよ!」

「だって魔法の練習も見てないしさー!」


 基本は10歳に職業が分かればそこからは自由なのだ。冒険者になっても良いし職業に向いている仕事もしても良い。

 その分、仕事によっては色々と違う部分もある。独学や学園、下請けの年数が変わるのだ。


「私は宮廷魔術師になるから勉強中なのよ!」


 宮廷魔術師は王国のにある城専属の魔術師である。なるには3年の独学と2年の学園での勉強がいる。その後にも王国で最低でも1年は下請けとして働かないといけない。


「確かにエリカが勉強しているのは見てないな」


 何故、独学があるかというと自分自身で考える力を増やすためだと言われている。


 基本の知識や技術も必要だが教わるものより自分で得たもの方が大切だったり咄嗟の判断などの方が重要視される為に独学の方が長いらしい。


「ソルディン学園は寮らしいけどエリカは大丈夫かしら?」

「大丈夫よ!私は天才だから!」

「てか、お兄ちゃんの儀式そろそろ行かないとやばいよ?」

「そうだった!?行ってきます!」

「「「行ってらっしゃい!」」」


 父、母、リンカが返事した。

 リンカの態度を見て分かったことがある。リンカは別に馬鹿にしていなかったのだ。

 あれが通常運転なのだ。

 神様の情報には性格に関することや正確な情報は余りなかったのだ。


「君は農民だ!」

「君は商人だ!」

「君は料理人だ!」

「君は剣士だ!」

「君は剣聖だ!」

「「「「「「「おーー!!」」」」」」」


 教会の中では驚きの声でいっぱいだ。

 まぁ剣聖が出たので当然だろう。


「やっぱり俺は騎士団になれる才能があるんだな!」


 騎士団を志望する人は多い。良かったとしか言いようがないな。


 そして俺の番になった。


「君はテイマーだ!」


 周りはだんまりだった。

 テイマーの仕事先は冒険者か牧場、王国での魔物を躾ける仕事だけだ。たまに商業をしている人はいるが成功したと言う例はないらしい。


 テイマーは戦闘系の人、全てが出来る冒険者以外にもにも仕事が出来る。だが本人の実力が少ないと言われる事から余り人気ではない。


 魔物を躾けるのもテイマーだから当たり前という感覚である。


「外れだな!」


 先程剣聖と言われてた人が発言した。

 俺は無視をした。

「何とか言えよ!」

「まだ終わってません」


 そう言うと神父は続けた。


「君は僧侶だ!」

「君は魔法使いだ!」

「君は鍛冶だ!」

「ははははは!!」

「また、外れだなぁ!」

「今年はハズレが2人出たぞ!」


 また、剣聖が馬鹿にしていた。


「でも、鍛冶の人がいないと僕たち武器持てないよ?」


 剣士がそう口にした。


「そんなもん俺には「まだ続いています」まぁいい」


 剣聖は何か言っていたが神父の言葉に挟まれた。


「君は剣士だ!」

「君は武道家だ!」

「君は商人だ!」

「君は農民だ!」


……


 しばらく経つと儀式は終わった。

 親に報告する為に家に帰っている。

 テイマーか……

 動物好きの俺にとっては魔物に触れ合えるのはありがたい。


 後は魔法とスキルだな。

 魔法は仕事をする前の独学で勉強するのだ。

 

 例えば学園に行くなら独学するのならその前の一次試験を受けて合格者のみ独学の教科書などをもらえるのだ。そこで魔法の属性も分かる。


 まぁ、俺はテイマーだし冒険者だな。

 冒険者は学園とは違い仕事で他人の命を預かる事はあるがは依頼が偉い人からの無い限りそんなに硬くないのだ。


 ちゃんとした仕事なら城で働ける騎士団やテイマーなら牧場、王国での働き先が安泰である。

しかし魔物を躾けるのもありだがそれだけだと俺的には刺激が何か足りない。


 そしてテイマーだから当然という考えが嫌いだ。だから冒険者が1番その力を発揮できると考えている。


 冒険者は他の仕事よりも決まり事が少ないから独学は2年で良いのだ。


 まぁまずギルドで魔法の属性を調べないといけないけどな。


 俺は家に着いた。


「気のせいか?」


 歩いていた俺をずっと見ていた者の視線に気づかずに……


〜〜説明(物語とは関係なし)〜〜

 職業と仕事、スキルと魔法が分かりにくいと思うのでここに書きます。


 職業は誰しもが唯一向いているもので、仕事がその職業で出来る事だ。魔術師や剣聖だけ城で宮廷魔術師や騎士団の1人として働ける。


 それ以外の職業だと戦闘系は冒険者が多いその他では村の護衛という仕事がある。


 農民なら畑やら漁業で商人なら商業、鍛治なら武器や装備を作る仕事だ。


 コハクのテイマーの場合は戦闘系だが主に魔物が戦う事が多いと言われる事から戦闘系以外にも、様々な仕事が出来る世界である。


 魔法は仕事先で分かる様になりそこで職業のやる事をしっかりと勤めていると発揮出来る能力だ。

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