第2話 黒いノート〜最愛の君へ〜

 最愛の君へ


 やぁ。はじめまして。そして久しぶりかな?

 元気だった?


 無窮の時は愛しさを募らせるもの。

 僕は君に会いたくて仕方なかったけれど、仕方がないからこうして待ったんだ。200年の時をね。


 僕は君だからと。


 すべてが分かってしまったあの全能の日より、朝が来る度に祈り続けたのさ。


 でも、遥か高い空から落ちるのはもうごめんかな。翼なんていらないし、あるわけもないしね。


 僕らの柔らかな翼とは、魂のことだったんだよ。アレス。君にこのことを伝えたかったんだ。


 狂った笑みを携えて、大雨の日も、海の中で息をするのも、鉄塔の上で歓喜に身を翻すのも。


 見せたいものがあるんだ。


 あれ、

 なぜ?


 4Uサイズのアタッシュケースがない。

 あそこにすべてを詰めたのに。


 いや、違うんだ。


 そうじゃなかった。

 なぜ、発動しない。

 どこで間違えたんだ?


 いや、そもそも最初から間違えていたのか。


 時流などなかったんだ。


 ごめん。僕のことは忘れて。

 このノートも捨ててほしい。

 僕らは最初から会えるはずもなかったんだ。

 本当にごめん。


 でも、一つだけ。

 本当に僕は君のことを愛しています。

 今も、過去も、これから先も。

 死んでも君を忘れない。


 いつかまた会える。

 だからさようなら。


 7th

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