親友
ある日突然親友が消えた.
他の人には連絡をいれていたらしく、何も知らされていないのは俺だけだった.
あいつは俺のことを親友だと思っていなかったのかとショックを受けながらも手がかりがないか、あいつの家を探したり、過去のメッセージなんかを見返したりしながら過ごしていた.
そして、ある日突然これまだ偶然、あいつからと思える手紙をあいつの部屋で見つけた.
ご丁寧に封がされてあって、宛名まで書かれてる.
あいつが手紙を書く相手なんか今の状況的に俺以外いないだろうと思い、迷うことなく封を切った.
そしたら案の定俺宛で、その内容は驚くべき内容だった.
手紙の内容から、あいつが俺のことを好きだった、いや好きなことがわかった.
わかったけど、俺にはもう妻がいる.
返事は一択しかないし、あいつが消えたから返事の仕様もない.
昔から俺が好きな人のことを話すたび、あいつがため息を吐く光景は見てきた.
けど待てど暮らせど告白はしてこないし、俺だって、そんな勇気はなかった.
どうせ若気の至りだろうと思って有耶無耶なまま、二人とも大人になってしまった.
だからてっきりあいつの俺への好意は消えたんだと思っていた.
いや、そう思いたかった.
男同士の恋愛なんて、女同士恋愛なんて、そう親や親戚が話しているのを聞いたことがある.
親戚に限らず、女同士、男同士の恋愛には障害が多い.
だから、俺はあいつから、あいつの好意から目を逸らした.
あいつの好意を知っていながら.
手紙で謝ってばっかりで本当に悩んで苦しませてしまったんだなと今更ながら後悔する.
後悔したってもう遅いのに.
その結果がこれだ.
俺はあいつの好意を踏みにじってしまった.
あいつの好意を知っていながら、あいつの葛藤に気づいていながら.
あいつを止めることができなかった.
正直に言って、同性だからだとか、あいつの好意だとか言いながら結局世間に沿って生きてしまう俺が一番悪かった.
あいつのいない未来は、あいつからした、俺の中のあいつはそんな小さな存在じゃない.
けど、もう遅いんだよな.
俺を罵倒したって、殴ったっていいから、一回だけでももう一回会いたいと願ってしまう.
そんな未来がくることはもうないのに.
俺だって一生お前を忘れることはできないだろう.
お前への好意を踏みにじってしまった俺の言葉なんか聞きたくないだろうけど.
お前の気持ちから目を逸らした俺を怒りに、来てほしい.
―そう願えば願うほどこの部屋の冷たさを感じ、手紙に一筋の滴が落ちるのだった―
君の笑顔が見れるなら. まほあめ @TerunaNoa
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