俺の引きこもり生活は邪魔される
早瀬茸
第1話 俺の生活
4月10日。それは、新学期開始から一週間経った平日の月曜日だ。俺の高校でも先週の月曜に新しいクラスが発表され、生徒たち皆喜んだり笑い合ったり、はたまた悲しんだり寂しい気持ちになったりしたはずだ。高校最後の一年間を精一杯遊ぼうとする者、良い大学にいくために勉強に励もうとする者、大勢の生徒の思惑が交錯していたと推測される。この時期は学生たちなら、誰でも胸に希望を抱いて情熱を燃やすものだろう。
……まあ、俺みたいなやつを除いてだが。別に学校でひとりぼっちだからとか、スクールカーストの底辺に居るからって訳では決してない。
では、なぜか。俺はその日、学校に行ってすらいないからだ。こう言うと、俺が不良で面倒だから、学校をバックれたのかと思う人もいるだろう。そんな理由でもない。
じゃあ、どうしてか。それは、俺が今年に入ってから一歩も外に出ていないからだ。いや、正確に言うと、去年の夏休み明けからずっと学校に行っていない。
――俺は年々増えていると言われ、社会のお荷物とされている正真正銘の引きこもりだ。
よって、俺は皆が学校に向かっているであろうこの時間(午前8時)に、漫画を読んでいる訳である。
はぁ……、本当、一人の時間って最高だな。家にいる者が出払い、自由気ままなに何も考えず過ごせる、この時間が至福の瞬間だ。……このまま何も考えず、娯楽に身を任せる時間が続けば良いのに。
太陽が部屋を照らすなか、俺はベットで横になり漫画を読んでいる。現実を忘れ作品の世界に没入できるのが好きで、朝に漫画を読むということがいつの間にかルーティン化していた。朝は現実を思い出して辛くなってしまう時間だから現実を忘れることができるのは至福な時間だ。
しかし、この設定を考えるの控えめに言って神だよなあ。背中から羽が生えるのはよく見るけど、攻撃する武器が生えてくるんだもんな。常人ではまずこんなことは思いつかないだろう。
ちなみに、ここ数ヶ月の生活はほとんど決まり切っている。朝は起きたい時間に起きて、漫画を読み、お腹が空いたら適当にご飯を食べ、ボーっとして、スマホをいじったり、ゲームをしたり、昼寝をしたり……普遍的な引きこもりの生活を全うしているというわけだ。その生活に悪いだの後ろめたいなどの気持ちは今は特になく、ただただ気分の赴くままに過ごしていた。
今日も今日もとて、いつもと同じまったりとした生活に身を投じるか……と現に身を投じながら思っていたその瞬間だった。
―――いつもと違うことというのは、突然やってくるものである。
部屋の構造上、窓側に向きながら漫画を読むと光が眩しすぎてそれどころではなくなるので、俺はいつも逆側のドアがある方向に向かって読んでいた。この時間、そのドアが動くことはなく、今日も廊下と部屋を隔てる職務を全うしていた。
―――その瞬間までは。
本当に何の前触れも無くシーンとした空間に、ドアがバンっと激しく開く音が響き渡った。
「あなた、いつまで引きこもり生活を続けるつもりですか!」
――鼓膜が裂けてしまうのではないかと思うほどの大声は、俺をフリーズさせるには十分だった。
次の更新予定
俺の引きこもり生活は邪魔される 早瀬茸 @hayasedake
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