第4話 都会に染まった幼馴染は要らない


んでもって朝だ。


居残った以上は責任は果たす。


とはいえ、此処でも細工してある。


この街の最高級のレストラン、ティファナに無理やり朝食を作らせて届けさせた。


『勇者ドルマンの名前と教会の名前を出したら泣きながら用意した』


正確には勇者の為の食事を用意して届けないなら『教会が破門するってよ』そう言っただけだ。


ちなみにティファナは予約が1年先まで入っている人気店だ。


だが、勇者にそんなの関係ない。


今迄は評判を気にしてしなかったが、今の俺にはそんなの関係ない。


「ドルマン、エルザ、セシリア、イザベル飯が出来たぞぉ~」


そう言いながら大きな声をあげた。


宿も制限なし高価な宿の最高の部屋に変えた。


4LDKの高級ホテルだ。


勿論、このホテルでも食事はあるが……勇者なんだから最高の物で良いよな。


「フドラ、スゲーなこの食事」


「どうしたのこれ?」


エルザが驚いた顔をすると、他の二人も頷いた。


「いやぁ、今迄は質素にしててすまなかったな。これからは勇者パーティに相応しい物を用意してやるから、ほら食おうぜ! それに今日はドルマンから重要な話があるみたいだ……飯を食いながら話を聞こうぜ」


朝なのに前の世界で言うフレンチのコース料理に近い物だ驚くよな。


「嫌な事は先に終わらせようと思う! エルザ、セシリア、イザベル……俺はパーティ以外での付き合いはやめようと思う! 今後は俺はお前等と一切男女の付き合いはしない。 悪いなっ!」


此処まで来ると清々しいな。


「それは可笑しいだろう! 散々口説いて置いてどういう言い草だ!」



「好きだ、愛している……散々口説いて置いて、なんで今更そんな事言うのよ!」


「なんで、私ルドラと別れてドルマンを選んだのよ……どうして、どうしてよ……」


まぁ、こうなるよな。


三人とも泣きそうな顔をしているが、今の俺の心には全然刺さらない。


もう俺が好きだった『三人じゃない』


恋人だったイザベルの泣きそうな顔。


昔だったら、凄く心が痛んだ筈だ。


だが、今は痛くない。


そうか……もう俺も好きじゃ無かったんだ。


村に居た時の素朴な雰囲気は何処にも無い……気がついたら此奴ら三人とも『あのやさしい輝き』を失っていたんだな。


「決まっている! お前等が大した事無い女だと気がついたんだよ! 外見も大した事無い、家事も碌に出来ない! 大体、女の癖に下着までフドラに洗わせているクズ女だろう……何処に魅力があるんだ? お前等から戦闘力を奪ったらクズ女三人衆だろうが」


確かに合っているが、ドルマンお前がそれを言うのか?


「それは……解った、もう良いよ……これからは宿も別にとる、私はお前が嫌いだ……討伐以外話しかけてくるな!」


「そう……あなたの気持ちは解ったわ。最低ね! もういいわ、もういいわ!」


「私、フドラと別れたのよ……結婚前提につき合って欲しいというから……酷いよ」


女性三人は飯も食わずに出て行った。


「ドルマン、これどうするんだよ?」


「あんな奴ら要らない……欲しいならお前にやろうか? 」


「いや、要らない」


「そうか、それでな何時でも女手配してくれるって言っただろう? 今夜も頼むよ」


「解った」


まさか、こんな簡単に壊れるとは思わなかったな。


◆◆◆


結局、四人は仲たがいを起こし、真面な討伐が出来なくなった。


ドルマンには娼館も教会のツケで払える事を教え、他の三人にもツケで全部賄える事を教えた。


一度狂った歯車はもう止まらない。


ドルマンは娼館に毎日通い、三人は贅沢をするようになった。


その結果、ブラックウィングの悪評は広がり……その評判は地に落ちた。


そして、俺は ブラックウィングを去った。



◆◆◆


俺はというと村に帰ってきた。


「ただいま~」


「おう、フドラお帰り……どうした?」


「いやぁ、ドルマンのパーティを離団したから村に戻ってきたんだ」


この村は良い……のどかで俺に『綺麗な物』を見せてくれる。


「そうか、よくもこんな何も無い村に戻ってきたもんだな」


「此処は良い、のどかで、心が安らぐんだ」


「だが、若い女も少なくて、此処で暮らすと嫁に困るぞ」


「行き遅れ、未亡人……なんでも良いさ、この村の女ならね」


「それなら居るが……若いのに変な奴だ」


田舎の純朴な人間が都会に行った為に、都会に染まり、人を見下すような人間になる。


あいつ等4人はきっとそうだ。


だが、俺は『そういう人間が嫌いだ』


だから『染めきってやった』


もう、彼奴らは優しかった幼馴染じゃない。


俺は、この村で……綺麗な物だけを見て生きていたいんだ。


「あら、フドラ帰ってきたの?」


「マリベルさん、ただいまぁ~ いつ見ても綺麗だね」


「全く、こんなおばさん捕まえて何っているんだか」


此処で、田舎の冒険者として埋もれて生活するのも悪くない。







FIN

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