第2話 俺の前世

俺の前世の話をしよう。


俺の前世での名前は曽原敬一(そはらけいいいち)。


昭和という時代を生きていた。


早名大学を在学中に、良い商売を思いつき人生を賭けて起業した。


その仕事は『マンゾクマガジン』という雑誌の販売。


『マンゾクマガジン』はいわゆる風俗の情報誌。


まだ、この手の雑誌は1社しか出して無いから今が勝負所と考えて勝負をかけた。


この雑誌が優れている事はスポンサーが集まりやすい事だ。


ソープランドにファッションヘルス、ピンサロ。


風俗は広告を打ちたくても打つ雑誌が少ない状態だから、すぐに広告収入が期待できる。


そして取材も『自分のお店の紹介をして欲しい』から簡単に受けて貰える。


そう、俺は読んだ。


だから、大学を中退し貯めていたお金を使い起業……結果は成功。


当時は学生社長になって自主退学は、一つの出世コースでもあった。


DCブランドを来て、愛車はポルシェ。


高級マンションで暮らすまですぐになれた。


お金を手に入れ幸せ……だったのかも知れない。


だが、俺は、十代から風俗にどっぷり浸かったせいか『恋愛感覚』が可笑しくなってしまっていた。


風俗の取材をしていた為に『女の子の本音』を若いうちから知った俺は『恋愛に希望が無くなってしまった』


純情可憐な美少女が男性のあれを咥えながらサービスしていたり、口では好き、愛していると言いながら陰では悪口を言っていたりとまぁ色々な物を見て、経験し聞いたな。


当時の俺の知り合いは風俗のお姉さんや風俗のボーイさん等だから、そうなるのも仕方が無いと思う。



結局、前世の俺は、風俗を仕事にし、稼いだお金でキャバクラや風俗に通い……どっぷりと女に浸かった生活をしていた。


多分、抱いた女の数は1000人を超えたと思う。


だが、あくまで欲望を満たしていただけ『愛』とは無縁で結婚はおろか恋愛すらしていなかった。


たった数万円払えば自分好みの女が大抵のことはしてくれる。


そんな世界にどっぷりと嵌まったせいだな。


そして、最後は孤独に死んだ……そんな所だ。


◆◆◆


そんな俺がこの世界に転生してきた。


どっぷりと夜の世界に浸かっていた俺にこの世界は眩しかった。


幼馴染との甘酸っぱい経験。


キスすらしない交際。


前の世界が闇だとしたらこの世界は光。


田舎で暮らし、助け合う村の生活。


本当に綺麗な世界だった。


だが……違った。


それはまやかしで、親友や幼馴染にも、汚い面が沢山あった。


エルザ……セシリア……イザベル……


可愛らしく優しいと思った彼女達も一皮むけば一緒だった。


親友と思っていたドルマンもあの当時の周りの人間と変わらない。


それなら良い……それなら……もう、全部壊して終わらせてやるよ。

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