第2話 死の感覚
色とりどりな壁色に、
統一された薄茶色の屋根で構成された
美しい街並みに、トオルは思わず見惚れていた。
「見たところ、街の様式は中世といったところか。
イメージ通りの異世界の風貌…!」
獣人や
さっそく、街中を隅々まで散策したいところだが、
まずは自分のステータス確認をしてからだな。
「えーと…、
確か『ステータス』って唱えるんだったよな?」
その言葉を発した瞬間、
トオルの目の前に自身のステータスが表示された。
「おぉ…!!凄い!!本当に出てきた…!
てかこれって地味に初魔法じゃね…?
まじアガるな…!」
初魔法を行使したという余韻に暫く浸った後、
トオルは改めて自身のステータスへと目を向けた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
個体名:イズミノ トオル
種族名:
年 齢:17
【スキル】
【加 護】
なし
【魔 法】
自覚魔法
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
なるほど、
スキル以外にも加護と魔法が別枠であるのか。
それにしても⋯
スキルは既に結構持ってるけど加護はゼロ、
魔法も今は1種類のみか…。
…………………
ま!新しい魔法の覚え方は道行く人達にでも
後で聞いてみればいいか!
それよりも、
今は自分の持つスキルの効果確認からだな!
トオルは、すべてのスキル・魔法を一括選択し、
自身の持つ力の詳細を確認した。
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【スキル】
■
任意発動型。
運命・選択・未来を変え、
やり直すことができるスキル。
『セーブ』と唱えることにより、
唱えた瞬間からの
ただし、
セーブの能力は連続して行使することができない。
再度セーブの能力を行使するには、
3時間のインターバルをおく必要がある。
分けて保存することができる。
任意の保存した
『ロード』と唱えることにより、
保存した
ロードする
スロットリストから任意で選択できる。
ただし、
1スロットにつき5回までしか
ロードすることができない。
5回ロードした
このスキルの保有者が死亡すると、
自動的にロードの能力が発動する。
ロードできる
『リセット』を選択することができる。
■
任意発動型。
他個体のステータスを
確認することができるスキル。
ステータスを確認したい対象の半径15m内に入り、
『インサイター』と唱えることにより、
対象を直視している間だけ
ステータスを確認することができる。
■
常時発動型。
耳を通して聞こえてくるすべての言語が理解でき、
また、その言語で会話することができるスキル。
ただし、文字として書かれている文章や、
理解していない言語での念話は理解できない。
■
常時発動型。
すべての魔法属性の適性を得ることができる
スキル。
■
任意発動型。
魔族・魔物と
従魔関係の契約を結ぶことができるスキル。
互いの血液を合わせながら『
唱えることにより、従魔契約を結ぶことができる。
ただし、従魔契約を結ぶには、
お互いに契約を結ぶことを承諾している
必要がある。
契約を結んだ対象同士であれば、
お互いのステータスの確認と、
契約を結んだ者同士の念話がいつでも可能になる。
また、一部の魔法に限り、その者の練度・適性に
応じて、互いの取得している魔法を
共通利用することができる。
契約は、結んだ者同士のどちらかが
死亡するまで解消されない。
■
任意発動型。
正確な日時や、
時の流れを知ることができるスキル。
『タイム』と唱えることにより、
時間や日付、時の流れを確認することができる。
また、
一部の時間異常に対して中位級の抵抗を得る。
【魔 法】
■
自身のステータスを確認することができる魔法。
『ステータス』と唱えることにより、
自身のステータスを確認することができる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
なるほど、
色々便利そうなスキルが揃っているみたいだ。
特に
異世界で暮らしていく上で必須スキルといえる程に便利そうなのがわかった。
そして極めつけは
これは一言でいえば、
ゲームのセーブ機能みたいなもんだろ?
めっちゃ強いじゃんか!
正直これがあれば仮に大怪我したり死んだりしても
安心ってこったな!
なんでこんな強くて便利なスキルを
元々持ってたのかは謎だけど、まぁ…運が良かったと思うことにしよう!
一通りスキルの中身を確認したトオルは、
自身ステータスを閉じた。
んじゃま、何があってもいいように、
念の為セーブしとくかな!
保険セーブ〜♪保険セーブ〜♪
これからの旅において、
心強い保険を手に入れたことに安堵したトオルは、鼻歌交じりでセーブを行った。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【スロット1】ロード残余5回
日付:
時刻:13時26分11秒
場所:ケイティニア人魔共栄国の首都、
オルティナ、共栄噴水広場
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
スロット1にセーブしてから17分経過。
日時:
あれから少し散策して分かったことがある。
まず、あちらこちらに書かれている文字だが、
まぁ…分かってはいたが全っ然読めん。
なんかグロい肉焼いてた店の店主に聞いた話によると、どうやらこの国の文字は大半が共通語である
『アロア語』で書かれているらしい。
通貨に関しても、
共通通貨である『ドイル』が使われているとか。
……………。
異世界転移に浮かれて失念していたが、
お金の問題はデカいな…。
早急に解決しないと餓死エンドなんてことになりかねん…。
服装も完全に現代日本仕様のせいで
結構浮いてるし、服や飯を買うためにも、
まずは資金調達からだな…!
丁度近くに巡回中っぽい衛兵さんもいるし、
何かお金を稼ぐ手段がないか聞いてみるか。
「そこの衛兵さん〜!
巡回中のところすみません〜!
ちょっとお伺いしたいことがあるのですが、
少しお時間いただいてもよろしいでしょうか?」
トオルは、
顔がよく見える型の鎧を着た、
巡回中の衛兵に駆け寄りながら声をかけた。
「ん〜?なんだ坊主?そんなに慌ててどうした?」
「いやぁ、ちょっと今一文無しなもんで、
お金を稼ぐ手段を探してるんですけど、
如何せん、
この国には来たばかりで仕様が分からず。
衛兵さんは何か俺みたいな人でもすぐにお金が
稼げるような場所とか知ってたりしますか?」
「ほう…旅の者か!ようこそケイティニアへ!
そういうことであれば、
ギルドで仕事を斡旋してもらうといい。
あそこであれば直ぐに仕事が舞い込むだろう。」
「本当ですか?!助かりました!
教えていただきありがとうございます!
では最後に、ここからギルドまでの行き方を
教えてもらえますか?」
「おぅ!いいともよ!
まずはここを真っ直ぐ行って…」
丁寧にギルドの道までを教えてもらったトオルは、
気の良い明るい衛兵にお礼を言い、
その場を後にした。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
スロット1にセーブしてから1時間2分経過。
日時:
………や………やばい。
あんなに丁寧に教えてもらったのに…。
あれから30分以上歩いたのに、一向に着かない…。
これはもうあれだ…、紛う事なき迷子だ…………。
⋯⋯⋯⋯⋯⋯。
あぁぁあぁ…もう…!
そもそも道が複雑すぎるんじゃい!!
あまりにも街の構造が迷宮すぎる!
…………はぁ…。
おかしいな…俺は方向音痴じゃないはずなのに…。
こうなるんだったら最初から、
聞いたことをメモしとくんだったな…しくった…。
自分の記憶力を信じ過ぎた…。
…………切り替えよう。
あれから30分以上も歩いたんだ、
さっきよか近付いてる筈!
ここでもう一回、誰かにギルドまでの道を尋ねて、
しっかりとメモに残せば今度こそは――――――
……………!
とある人が目の前を通り過ぎた瞬間、
言いようもない程に心がざわつき、
頭が真っ白になった。
隙かさず、
先程自分の目の前を通り過ぎた者に声をかけた。
「「「 あ…あの!!」」」
「…!はい…?」
そこには淡紅色と純白の服を纏まとった、
薄黄色でワンカールの髪型をした女性がいた。
見れば見るほど、
懐かしさと嬉しさで心が満たされていくのを感じ、
トオルの目から一滴の涙が溢れる。
何故こうも
懐かしく、嬉しく、
そして悲しく感じるのだろうか…。
彼女とは今初めて会ったはずなのに…。
「あの…どうかなされましたか?!
急に泣き出して…!
あの…私…どうしたら…?!」
その女性は慌てふためいた様子で、
オロオロしながらトオルにそう問いかける。
……?!てかヤバい…!!
初対面なのに急に呼び留めて泣き出すなんて…!
しかもこの格好…!不審者全開じゃないか…!!
は、はやく、早く弁明を…!
「す…すみません⋯!
自分でも状況あんまわかってなくて…
み…道が、ギルドに行くまでの道が分からなくて
急に声をかけてしまって…」
そう言うと彼女は少しの間キョトンとした後、
吹き出すように笑い出した。
「ブッ…!アハハハハ…!なにそれ…!
そんくらいの事で
泣き出してしまったのですか?!
アハハハ…!もう、笑い死にそう…!
涙止まんない…!!アハハハハ…!!」
くっ、こんなにも豪快に笑いものにされるとは…!
しかしぐぅの手もでない…
状況的に見てもそうにしか見えないし…
なんで泣いたのかは俺にも分からんし…うぅ…。
一頻り笑った彼女は、
息を整えた後、トオルに改めて話しかける。
「はぁあ、もう…まったく…
心配して損しましたわ!
それで、
ギルドまでの道を教えてほしいんですの?」
「………ん?あぁ!あぁそうなんだ…!
道を教えてもらったものの、
迷子になってしまって…」
「ふぅ~ん?じゃまた私がここで道を教えても
同じように
迷子の泣き虫さんになっちゃうって訳ね
まぁいいわ…!
丁度私も今からギルドに用があって向かう所
だったから
そこまでならご一緒いたしますわ…!」
「い、いいのか?!助かる!!
………でも迷子の泣き虫さん呼ばわりは
どこかキツイものがあるからやめてくれ…。」
「フフフッ!だって真実ですもの!
撤回する気はありません!
それよりも行くなら早く行くわよ!
ただでさえ予定を押してしまってるんですから、
先にギルドで待ってる
相棒にドヤされてしまいますわ!」
そう言うと、彼女は俺の手を引いて、
急ぎ足でギルドへと向かった。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
スロット1にセーブしてから1時間22分経過。
日時:
あれから約10分後、
俺たちは無事ギルドに着くことができた。
「ふぅ…!やっと着いたわね…!
さ、ここがギルドよ!
あなた身なりからして旅の方でしょ?
ギルドから仕事紹介してもらうんだったら、
まず入り口入った直ぐ正面にある
紹介窓口に声をかけることね!」
「あ、ありがとう!
ほんとここまでしてくれてマジ助かったよ…!」
「フフッ…!まぁ、いいってことですわ…!
じゃ、達者でねぇ〜!」
「あっ、ちょっと待ってくれ!
最後に名前を教えてくれないか?
いつか必ず、このお礼がしたい」
そう言うと、彼女はニッコリと微笑んだ。
「えぇ、わかったわ!
私の名前はアリシア・フォールンよ!
お礼が返ってくるのを楽しみにしとくわ…!!
あなたの名前は?」
「俺の名前は泉野透だ。」
「フフッ!そう!トオルね!覚えたわ!
じゃまたね!」
そう言い終わると、
彼女はギルドの扉を開けて中に入ろうとした。
がその瞬間、ギルドの中から小型サイズの何かが声を上げながら彼女の顔に向かって飛び出してきた。
「リルリル遅いよ!
こんなにボクを待たせるなんて…!
ボク、すっごく心配したんだからね!」
そう言いながら飛び出してきたのは、
黄色い鱗に黄色いモフモフな毛、立派な羽に2本の角を生やした、
小型犬サイズの可愛らしいドラゴンだった。
「ど、ドラゴン?!
初めてみた…!本当にいたのか…!」
「あら、竜を見るの初めてなんで珍しいわね…!
そうよ!この仔は私の相棒竜のライラ!」
「…⋯このかわった見た目の男の子はだれなの?」
「ん?俺か?俺はトオルだ!
訳あって
君の相方さんにここまで道案内してもらってな」
「?!」
「?!」
………なんだこの妙な雰囲気は?
なぜかふたりとも驚き顔で固まっている…。
「トオルさん、
あなたライラの言葉が分かりますの?」
「えっ?アリシアさんは分からないのか?!」
「いえ…私は
ライラと会話ができるだけで…」
「あ…それなら俺も同じ理由ですよ
俺も
「?!」
「?!」
また驚くように固まるふたり…。
何かやばいことでもいったのか…?
「す、すみません…!
突拍子の無いことを伺うのですが、
もしかしてトオルさんは従魔士テイマーと
呼ばれるスキルも保有していたりしますか…?」
「あぁ、もっ、持ってるけども…」
そう言い終わると、アリシアとライラは互いに目を
合わせ、嬉しそうに微笑みあっている。
「それではトオルさんがディール伯爵が見つけたと言っていた適合者だったのですね!」
⋯⋯⋯?!
「は…?!
ちょ、何言ってるんだっ……てちょい…!
そんな
引っ張らなくとも俺もギルドに入るから!」
「そうも言ってはられませんわ!
私は今日、
その用件でこのギルドに赴いたんですから!
ほら!ライラも行くわよ!」
「わぁ!!やっとみつかったんだね!
ボクのあるじ!
アルアルがその人ってことでしょ?!」
「ちょ…マジあんたら!
何言ってるのか話についてけないんだが…!!」
「訳なら
ギルドの談話室で説明させていただきますわ!
さぁ!早く行きましょう!」
アリシアは半ば強引にトオルの手を引きながら、
ギルドの扉のノブへと手を掛ける。
――――――――――――――――――――
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
日時:
あなたは死亡しました。
ロードの力を自動行使しました。
セーブスロットから、
ロードする
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
………………………
…………
……
……………………………は………?
「な、何があった………?
死んだ…………?
俺が……………?……………は?」
状況が理解できない…。
ここは、異世界転移する前にいた暗い空間か…。
んで、俺は本当に死んだのか…?
いつ?なんで?どうやって?
全然何も…痛みすら感じなかった……。
あっ………!
アリシアやライラも近くにいた…!
あのふたりは平気だったのか…?
いや、でも…
あの時俺はアリシアに手を引かれていた…
すごい近くにいた…。
まさか…一緒に………?
い、一体何が…何が起こったんだ…
無限に広がる暗闇の空間で、ただトオルは一人、
困惑することしかできなかった。
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