第3話 合流と保護

隼人と真白が炎の中に消えている頃、本部のサポートルームでは美濃部が必死に真白を探していた。


「うそでしょ!なぜ急に真白さんの反応が!?」


先ほどまであったはずの反応が急に消失したのだ。

さっきから真白に何度も呼びかけているがまったく反応がない。


「どうにかして真白さんを見つけなければ!美春さん!そちらから真白さんの反応は分かりますか!」


美濃部がデバイスを通じて現場に向かっている美春に言う。


「ごめん無理!でも夜が消えたから夜の影狼はいなくなったことは確か」


美春はそれでも周囲を警戒しながら真白の反応を探す。


「美春さん。そちらに真白さん以外の方の気配はありますか?」

「え、どうして?」

「真白さんの反応が消える前、真白さんが言っていたのです救護人がいると。ならば真白さんと一緒にいる可能性が高い」

「分かった。その線も探してみる」

「お願いします!」


美春が車で周辺を探しまわる。そしてようやくそれらしい反応が検出された。

美春はすぐに美濃部に報告する。


「美濃部君!」

「分かっています!すぐに解析します!」


美濃部はすぐに美春から送られてきた反応を解析する。


「出ました!人体反応です!それと小さいですが真白さんらしき反応もありました!今そちらに詳しい位置を送ります!」

「お願い!」


美濃部から送られてきた位置に美春は急いで急行する。


「反応はここから……」


美春は反応が示す場所、影狼によって廃墟と化したショッピングモールに入って行く。


(真白さん、どうか無事でいてください!)


美春は心の中で真白の無事を祈り捜索を開始する。

そしてショッピングモールの3階の奥の店の奥に二人の人間を発見した。一人は美春も見知った人物だ。


「真白さん!」

「美春ちゃん!」


美春は真白を見つけて彼女に抱き着く。それを真白は優しく抱き返す。


「心配かけてごめんなさい」

「はい!ほんとに心配したんですよ!」


美春は涙を流し、真白の無事に安心する。


「それでそちらの方が救護人ですか?」


美春が目を向けたのはサウナに入って水風呂を済ませて外の整い椅子に座っているぐらいに力は抜けて下を向いている隼人だった。


「あ~、それはそうなんだけ……」

「どうしたんですか?」


明らかに真白の反応が悪い。というか怪しい。


『真白さん!無事でしたか!』

「美濃部君!?」


急に耳元のデバイスから美濃部の大声が真白の耳を突き抜ける。


『心配したんですよ!』

「ご、ごめんなさいってばー!」

「それでほんとに何があったんですか?急に真白先輩の反応が消えて私たちとっても驚いたんですよ」

『その通りです。真白さんのマキナにそんな能力はなかったはずです』

「それは今から説明するわ」


真白は美春と美濃部にことの経緯を説明する。そして隼人が出した炎によってここに移動したことを。


『ということは真白さんが報告していた方が開拓者として覚醒したと言うことですが!?』

「奇跡的ですね」

「ええ、ほんとに……」


美春と真白はぐったりしている隼人を見てそう呟いた。

あの時隼人が覚醒しなかったら真白も隼人も二人とも死んでいただろう。しかも隼人の覚醒した能力が気配遮断を持ちしかも移動系のマキナであったと言う奇跡が重なった結果二人は今こうして生きながらえているのだ。


「それなら彼を保護しない訳にはいかないですね」

「そうね。美濃部君、隼人君の保護の手配を頼めるかしら?」

『もうやっています』

「さすがね」

『ありがとうございます。それにしても真白さんから聞く限り、隼人さんのマキナの能力はかなり優秀ですね。あの夜の影狼の追跡すら遮断するとなると本部ではかなり重宝すると思いますよ』

「そうだ!なら今のうちに紋章の確認をしちゃいましょう!」

『待ちなさい美春さん。それは些か彼に対して失礼ですよ』

「大丈夫だよ。それにまだ影狼がいないとも限らないからね。彼の能力をしっかりと確認しといた方がいいでしょ?ね、真白先輩」


美春の言うことも一理ある。親玉である夜の影狼がいなくなったとはいえ、眷族である影狼がいないという確証はない。美春の言う通り隼人の紋章を確認しておくのは重要なことだ。そして今この状況に置いて最も位が高いのが真白だ。


「美春の意見を採用します」


真白は考え抜いた末に美春の意見を採用した。


「真白先輩、隼人さんの利き手はどっちですか?」

「確か左手だった気がするわ」


真白は過去の記憶を遡って朧気ながら思い出す。

それを聞いて美春は隼人の左手の甲を確認する。

そこには今までには確実になかった紋章があった。


「これは本とペン?ですかね?」

「え?それはおかしいわ。だって隼人君の能力は火だったもの」


真白は美春の報告を聞いてなにかの間違いじゃないかと自分でも確認するが美春の言った通り、左手の甲には本とペンの紋章があった。


「さっきからどうしたんだ……真白…」

「隼人君!」


先ほどの陽炎の使用で意識が朦朧としていた隼人の意識が覚醒しだした。


「お前は…」

「初めまして、私は真白先輩の班に所属する桜花美春って言います」

「自己紹介は後にしましょう。隼人君も目を覚ましたことだしまずは本部に戻りましょう」

「そうですね!」

「隼人君立てる?」

「あ、ああ…」


隼人は何とか立とうとするがふらふらと倒れそうになるが真白が咄嗟に隼人を支える。


「大丈夫?」

「なんとかな」

「お二人とも急ぎましょう。本部からも応援が来てくれるはずです」


隼人たちはショッピングモールから脱出する。

外に出ると遠くから本部の救護車と応援の姿が見えた。


「メディック隊の綾部です」


メディック隊が到着すると代表である綾部が三人に名乗った。


「第46小隊隊長白銀真白です」

「同じく隊員桜花美春です」

「白銀班長と桜花隊員ですね。ではそちらの方が」

「はい」

「わかりました。彼の保護は我々が行います」


綾部はメディック隊の隊員二人を呼び隼人を運んでいく。


「お二人にも本部より帰還命令が出ております。これより本エリアは我々メディック隊の統括になります」

「わかりました。隼人君のことよろしくお願いいたします」

「ご安心ください。我々は救護のプロです。彼の様子を見る限り覚醒直後の精神疲労でしょう。そこまで心配する必要はありませんよ」

「そうですか」


どこかそうではないかと思ってはいたが綾部の言葉を聞いて胸を降ろす真白。


「それでは任務ご苦労様でした」

「そちらこそ頑張ってください」

「はい」


真白たちは後のことは綾部たちメディック隊に任せて本部へと帰還する。

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