TS魔法少女なのに拳闘スキル!?見た目だけ可愛い俺が怪物ワンパンで街中の噂になってる件
☆ほしい
新章(全訂版)
第1話
恥ずかしながら、エタってしまいました。
しかし、TS魔法少女が好きなので、全訂しました。
*
――目の前が、ぐにゃりと歪んだ。
「……うおっ!? な、なんだここっ!」
思わず声が裏返る。え、なにこれ? さっきまで学校の屋上にいたはずなのに、気がつけば俺、まるでおとぎ話の世界に迷い込んだみたいな部屋に立っていた。
ふわふわの絨毯。金色にきらめくシャンデリア。壁にかかったでかい鏡は、俺がどれだけ動いても波一つ立たない完璧な映り込みをしてきやがる。……そして、そこに映っているのは。
「……誰だ、この美少女は」
短めの金髪。ぱっちりした水色の瞳。小柄で華奢な体。ふわっと広がるドレスみたいな服。顔を赤らめて困惑してる様子まで、漫画のヒロインそのものだ。
いやいやいや、待て待て待て! 冷静になれ、俺!
胸に手を当てる。……ある。おそろしいことに、しっかり、ある。
「……まじかよ……俺、これ、マジで、女の子になってんのか……?」
現実逃避したくて目を閉じたけど、瞼の裏に浮かぶのは、さっきの、ありえない自分の姿だけだった。
「ようこそ、リク!」
頭上から、ぱっと弾けるような声が降ってきた。驚いて見上げると、そこには――
「……ちっこい……」
手乗りサイズくらいの、羽の生えた生き物。うさぎでも猫でもない、なんかもふもふした、ふわもこ系の妖精? みたいなのが、宙に浮かんでた。
「ボクは〈ピリカ〉! 君をサポートするために派遣されたパートナーだよ! 今日から一緒にがんばろうね!」
「え、待て。なにがどうなってんだ。まず、俺、なんで女になってんだよ!」
俺が声を荒げると、ピリカはふわふわと前に飛び出してきて、両手――いや、両前足? をぱたぱた振った。
「うんうん、そこから説明するね! リクは"魔法少女"に選ばれたんだよ!」
「魔法少女ぁっ!? ……いやいや、待て、なんで男の俺が!」
「ふふっ、そこはあんまり気にしないで? 魔法少女の資格って、性別とか関係ないんだ!」
「いやいやいや、めちゃくちゃ気になるからな!?」
必死にツッコミを入れる俺をよそに、ピリカはくるくる回りながら、にこにこと言葉を続ける。
「ここはね、魔法少女専用の〈マイルーム〉なんだ。現実世界の時間は止まってるから、安心していいよ!」
「マイルーム……?」
「うん! 変身したり、装備を整えたり、作戦会議をしたりするための特別な空間! 魔法少女のみんなは、現実で一瞬で変身してるように見えるけど、実はこの部屋に一度来て、いろいろ準備してるんだよ!」
「なるほど……いや、だからって、何で俺が魔法少女に……」
「それはね、リクに"適性"があったから!」
「適性って……なんだよそれ……」
思わず頭を抱えた。適性って、こんなチートみたいな美少女ボディにされるのが適性って、どんな基準だよ。というか俺、ふつーの男子高校生だったんだけど!?
「安心して、リクは強いよ! だって、すでにこんなスキルが備わってるんだ!」
そう言いながら、ピリカが指をぱちんと鳴らす。すると、俺の目の前にホログラムみたいな表示が現れた。
―――
【ステータス】
名前:リク(仮)
属性:拳闘魔法(ぶん殴り特化)
スキル:
・【超身体能力(魔法少女補正)】
・【拳魔(フィストマジック)】
・【魔力反応探知】
備考:潜在戦闘力Aランク認定
―――
「……え、拳闘魔法? フィストマジックってなに? 魔法少女なのに拳……?」
「うん! リクの魔法は、シンプルにして最強! "殴る"だけで魔法効果が発動するんだよ!」
「シンプルすぎるだろッ!!」
華奢な体でバグモン(怪物)をボコる魔法少女――。そんな光景が、なんかもう、うっすら頭に浮かびかけた。
「さ、まずは初回のチュートリアルミッションだよ!」
「待て待て、展開早いな!? ちょっと待たせろ、整理させろ!」
必死で叫ぶ俺を無視して、ピリカは勝手に俺の手を取る。ちっちゃいくせに、なんでこんなに力強いんだよ!
「だいじょうぶ、リクならできるよっ!」
「信用するな、そんな美少女ボディ初体験の男を!!」
こんな調子で、俺の魔法少女生活が、今まさに始まろうとしていた。
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