TS魔法少女、拳ひとつで怪物を倒して街を守る。秘密を抱えながらも仲間に認められ、家族や友人からも慕われる〜僕が魔法少女になった理由(わけ)〜

☆ほしい

第1話 こんなにぶっ飛んだ人生を送ることになるなんて

「僕がこっちを引きつける!そっちを頼む!」


声を張り上げると、後ろから仲間の「分かった!」という返事が返ってきた。僕は目の前の怪物を睨みつけながら拳を握りしめる。ペンダントが胸元で微かに震え、全身に力が満ちていくのを感じた。


怪物は鋭い爪のついた巨大な腕を振り上げ、地面を抉るような音を立てながら攻撃してきた。風圧で髪が乱れるが、怯む暇はない。僕は一歩踏み込むと、その攻撃の軌道を正確に見極め、体を低く沈めてかわした。


「でかいだけで鈍いな…!」


低く呟きながら、さらに踏み込み、拳を突き出す準備をする。怪物はすぐに二度目の攻撃を繰り出してくるが、僕は一歩引いて攻撃を受け流した。地面が砕け散り、砂煙が舞い上がる。


「簡単には倒されてくれないか。でも…勝つのはこっちだ!」


拳を握り直すと、ペンダントの震えがさらに強くなり、手袋の甲に描かれた紋様が光を帯びた。全身に力が集中し、頭の中で一瞬だけ無音になる感覚を味わう。次の瞬間、体が自然と動き出していた。


怪物が振り下ろした巨大な腕を、僕は正面から迎え撃つ形で拳を突き出した。衝撃が全身に響く。手袋の甲が鈍い音を立てながら怪物の腕を弾き返した。その反動で怪物の体が一瞬だけよろめく。


「今だ!」


一気に間合いを詰め、拳を振り上げる。ペンダントがさらに輝きを増し、力が手のひらから拳へと集中していく。怪物の胸元を狙い、一撃で仕留めるべく全力で拳を叩き込んだ。


「っらああああっ!」


拳が怪物の中心を突き抜けた瞬間、眩い光が爆発するように広がった。その衝撃に、怪物の巨体が大きく揺れ、ひび割れたように裂け目が広がっていく。


怪物は苦しげな声を上げながら後ろに崩れ落ち、次第に霧散していった。黒い霧となって消える姿を見届けると、僕は拳を下ろし、深い息を吐いた。


「はぁ…やれやれ、これで終わったか。」


静まり返った空間の中で呟く。ペンダントの光も静まり、手袋の輝きが薄れていくのを感じる。少しだけ息を整えると、後ろから駆け寄ってくる仲間たちの気配を感じた。


「お疲れさん。そっちも片付いたみたいだな。」


軽く手を振ると、仲間たちは安堵の表情を浮かべていた。それを見て、僕もようやく体の緊張を解いた。


「よし、次の怪物が出る前に撤収するぞ。僕たちの仕事はまだまだ終わらないみたいだからな。」


その言葉に、仲間たちが頷く。僕は再び拳を軽く握りしめ、空を見上げた。戦いの連続だが、誰かの平和を守れるなら、それで十分だと思えた。


「さて…次はどこだ?」


僕たちは、また次の戦場へ向かって歩き出した。


***


——俺の名前は山田陸(やまだりく)。至って普通の男子高校生だ。いや、普通って言っても、人によって基準が違うだろ?だから、もうちょっと正確に言うと、クラスで目立つタイプでもなけりゃ、特別に秀でた才能があるわけでもない。ただ、適当にやり過ごして、適当に楽しんでるって感じの奴だ。


身長は平均よりちょっと低いくらい。スポーツはまあまあできるけど、部活には入ってない。理由は簡単、面倒くさいから。部活で汗水垂らすより、放課後は家でゴロゴロしてたいタイプなんだ。あと、ゲーム。これだけは少し自信がある。最近ハマってるのは、オンラインで対戦できるやつ。仲間とチーム組んで敵を倒すのが快感なんだよな。でもまあ、実際の生活はそんなにドラマチックじゃない。


家族は、両親と中学生の妹。妹の名前は美羽(みう)。こいつがまた、俺とは正反対で明るくて、友達も多くて、学校じゃ人気者らしい。家では俺に対してやたら上から目線だけどな。「お兄ちゃん、それでも高校生?」とか言われるたびに、返す言葉が見つからなくてムカつくんだよな。でも、まあ、なんだかんだ言って仲は悪くない。多分。


夢とか目標とか、そういうの?正直、今は特にない。大学に行くのか、それとも就職するのかも決めてないし、将来やりたいことがあるわけでもない。なんていうか、毎日がなんとなく過ぎていく感じだな。それが悪いことだとも思ってないし、かといって特別充実してるわけでもない。


だけど、この「普通」の生活が続くと思ってたのは、ほんの少し前までの話だ。まさか、自分がこんなにぶっ飛んだ人生を送ることになるなんて、夢にも思わなかった──。



初投稿です。

10万文字までは、可能な限り一気に駆け抜けます。

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