15章 (表記不可)16章 学校のテストは解答が存在する

第15.00章

(表記不可)



いをりのベッドで寝ている風花は口にハンカチが押し込まれている違和感で

意識を取り戻した


対応した消防庁の職員は少女が受話器を置いていた時間、自分の対応が不適切だった

ことを後悔していた

あの少女が自分がした指示を重度低血糖症を起こしている患者にできるわけがない

まず子機に切り替えさせるべきだったのだ



もしもし、と幼い声が聞こえ状況を伝えられた職員は言葉を失った

いをりは相手に


言われたことはしました

ほかにすることはありますか?


と聞いていた


いをりが部屋に戻ると風花と目が合った

いをりは風花のほほに手をあて目をつぶった



おねえがしんえんにおちるなら、ぜったいわたしがひっぱりあげる




第16.00章

学校のテストは必ず解答が存在する



いをりは言った

「これからわたしたちの前に現れる人は怖がるべきじゃない


でもおねえの発作は怖がるべきだ

お店の看板がしばらく出てない。それも2時間以上歩いてる

バッテリーは9パーセント

モバイルバッテリーの充電もない」


「わかってるから、来た道を戻りなさい

まっくらだけど、ゆっくり歩けばなんとか進めるかもしれない

一本道だし駐車場までたどり付く


車のソケットからUSB-Cケーブルで充電する

いをりの好きなUSB-Cだよ

あなたの嫌いなライトニングケーブルが差してあるけど」


「わたしは先に進む。駐車場には他の車も停まってた

血糖のチップは一個

でも血糖値がわかったところで手の打ちようがない


すべての手を使ったのに血糖値が上がらない

問題はそこじゃない。それを解決するしかない

アインシュタインが言ってた


もし物理学の難問を見つけて、そもそもそれに答えがあるかどうか分からず

人生が残り1年しかなかったら

わたしは11ヶ月かけてその難問にそもそも答えが

存在するかしないか、取り組むべき問題なのか探るのに時間をかける


風花が言った

「アインシュタインの名言を引用してクールに立ち去ろうとしてる所に水をさして

申し訳ないけど、それって進むべきかもっと考えろってことになるように感じますが

いをり先生。 そしていをり、」

「なに?」


「一年生のときあなた物理基礎、赤点取ったよ

解答欄全て、空、にして」


「大丈夫、計算ミスはなかった。考え方が間違ってただけ

本質はそこじゃない

そしてアインシュタインの最後の論文も間違ってた

彼も間違える」


「今、大丈夫って聞こえたのは幻聴かしら。でも、

進むべきか、今度はいをりが決めて。あなたが小学3年の頃より大人になった所

をわたしに見せるチャンスだよ


わたしはあのとき一人でどちらか決めなきゃならなくて、

今でもそれが正しい決断だったかっていつも」

いをりは言った

「動いちゃだめだよ、哲学者が言ってた。人は感情の奴隷だ」


ふたりは棺の方向を照らした



そこには、マタニティー用のワンピースを着てふくらんだお腹に手を当てている

女性が立っていた


妊婦さんはお腹をさすりながらお腹に向かってほほ笑んでいる


彼女の靴のサイズは、もちろん22.5cm

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