第13.00章 曲がらないトング
第13.00章
曲がらないトング
風花は注射を終え強烈な寒気と叫び出したくなるような恐怖に耐えていた
白上風花は音楽女子大学ピアノ専攻の2年生
進級の前、大学の演奏会で三日間学生54名が演奏した
奏者の家族と友だち、近隣の住民、ドレス姿の女子大生を鑑賞する紳士も聴きにくるので学生は一般受けする曲を選曲した
ドレスを着た私たちを鑑賞したいって理由でも、楽しんでくれるなら
問題ないよ。でもそれ以上近づいたら憲法違反で自衛隊に武力行使させるね
二日目
お昼休憩に入り、みんなは学食などでお昼ごはんを食べた
この女子音楽大学の学食で一番人気があるメニューは
「アボカドとサーモンの冷製パスタ」
620円
その次に人気があるのは
「カツカレー エリーゼのために」
470円
演奏の順番は各学科の教授12人が円卓の机で方針を決めそれから場所を移した
12人の円卓会議の場所を決めたのはランスロット卿(演奏創作学科教授)
次の場所は、炭火焼肉店だった
12人は牛角カルビを焼きながら話した
それぞれの異なる個性を考慮していた時、モードレッド卿(67)(鍵盤専攻の教授)が
これは私のタンだ
とエクスカリバーを腰に携え、ハーマイオニー嬢(26)(幼児音楽教育女性助教授)
からトングをつかんだとき落としたのを店員さんに交換してもらった
体勢は整った、が信念を曲げない教授がいる
トングは曲げても信念は曲げない(ランスロット卿 演奏学科教授(61))
問題は演奏会の最後の一人はだれにするか。飲み放題幸せ2時間コースが迫っていた
明日いきなりステーキで決めよう経費で落ちるしとなり
牛角アイスを口に含んだ瞬間、全員が同じひらめきを得た
結論は
各学年から1人選び6人で演奏して終える
騎士たちは聖杯を手にした
二日目の午前、彼女たちが奏でた曲は
ゴールドベルク変奏曲のアリア(ヨハン・セバスチャン・バッハ)
ファイナルファンタジー7メインテーマ(植松伸夫)
カノンロック(Jerry C)
マリーゴールド(あいみょん)
パッヘルベルのカノン(ヨハン・パッヘルベル)
風花の順番はお昼休憩の直後
細い腕、そして鎖骨と背中を広く見せたドレス姿で風花が弾いた曲は
Imagine ジョン・レノン
この子がこれから大勢の前で発表するとは思えない物静かな立ち居振る舞い
舞台の真ん中でお辞儀
そして
白上風花の弾く Imagine ジョン レノン
茶道の所作のようグランドピアノから離れ舞台の真ん中へいき、深いお辞儀
壇上から去った
風花のImagineは彼女が作曲したと勘違いさせるほどだった
その時ジョン・レノンのImagineは一時的にジョン・レノンの手から離れた
つぎの奏者の学生は3分間の間を置き、壇上にあがる気配りをした
そのとき聴いていた国立市役所の職員がその場にいたのがきっかけで
市主催のミニコンサートがあると風花にオファーがくるようになる
しかし自分にそぐわないと判断すると風花は断った
ある理由で自分の演奏を人にさらせない
風花は表現できる場所が限られていることを知っていた
単独のミニコンサートでは曲の間におしゃべりをした。風花はそれが好きだった
聴きに来てくれる人に語りかけ次の曲を弾く
そしてスイッチが入り肌を切られるような雰囲気に変わり演奏を始める
お話しの内容は、
わたしの今弾いた曲の好きなところ、間違えたところ(そこをやり直した)
演奏中、わたし姿勢悪くなってないですか?熱中するとそれどころじゃなくて
コンビニの皮付きポテトすごい美味しいから食べてみてほしい
食べたことある人いますか。ぜったい食べてみて
演奏中トイレ行きたかったら遠慮しないでくださいね
わたしもいっしょにいきます
コネクションができ断ることも増えた
断りの返事を伝える時、風花は声が震えていた
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