半跏思惟のナウマンゾウ

加賀倉 創作【FÅ¢(¡<i)TΛ§】

弁士による前説『Scientific Myths-科学的神話-』

〈〈〈 二〇四九年 春〈〈〈

 

 理論物理学者の秋津上繁茂アキツカミ ハンモ博士は、地球上の十三の電波望遠鏡を繋ぐことにより、EイベントHホライズンTテレスコープを超える精度を備えた擬似ギジ的な地球規模望遠鏡、『アキツカミ式望遠鏡』を完成させた。



 このアキツカミ式望遠鏡により、秋津上博士は、とある超大質量ブラックホールの撮影に成功した。



 その名は、"Tusita"トゥシタ



 "Tusita"トゥシタは、地球から五六億七〇〇〇万光年彼方の銀河団"Archaïque"アーケイキの中心にある、理論上限界の二七〇〇億太陽質量を持つ、ブラックホールである。



 アキツカミ式望遠鏡が捉えた"Tusita"トゥシタの画像は、火のついた煙草タバコの先のような、ちっぽけな、闇黒アンコク赤橙セキトウの点にしか見えなかった。



 だが、それはマギれもなく、我々の知りうる宇宙の中で最強のブラックホールの途方もない質量が生み出す、強力な重力が曲げられた、電磁波ヒカリの束なのであった……

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