ブリッツ・ヴァルキリー 乙女たちの最速神話

比良坂

プロローグ


 ※この小説はフィクションです。


 ※実際の運転では交通ルールを守り、安全運転を心掛けましょう。




 ※※※※




 女性レディースの走り屋が【公道乙女ヴァルキリー】などと呼ばれ初めたのは、年号が昭和から平成へと変わってから少し経過した頃であった。


 当時、ハリウッドで製作された北欧神話をモチーフにした映画が日本で空前の大ヒットを果たしていた。


 主人公の戦乙女が戦車チャリオットに騎乗し勇猛果敢に戦う様と、峠を車で攻め競う女たちが、とても似ていたからだ。





 それから更に、月日は経過する……。





 平成半ば、女性の社会進出促進を名目に、日本随一の複合企業である帝和グループが、ヴァルキリーたちの頂点を決める公道レースの開催を決定する。




 その名は、【ブリッツ・ヴァルキリー】。



 一般車両立入禁止のクローズドコースと化した高速道路や、公道を颯爽と駆け抜ける、美しく勇ましい乙女たち。そして、彼女たちの愛車マシン


 幾度か起きた大震災のチャリティーレースや著名ヴァルキリーたちの軋轢や恋愛スキャンダルも挟み込んで、全世界の老若男女は、極東の小さな島国で行われる公道レースに熱狂した。


 その人気は、年号が平成から令和へとなった今現在も変わらない。


 すっかりヴァルキリーたちに魅了された世の男どもは、今年は誰が勝つか、誰と誰の接戦ドッグファイトが観れるかと熱弁を奮い合う。


 ヴァルキリーファンは饒舌である。


 しかし……。





 第七回ブリッツ・ヴァルキリー。


 そのグランプリの最中に起きた、死者六名、重軽傷者十二名にものぼる凄惨な事故……【沈黙のクリスマスイブ】については、皆一様に口を紡ぐのだった……。




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