第227話

「や……八雲さっ」



「無事か!?怪我は!?怖い思いなんてしなかったか!?」




ムギュウッと強く強く抱き締められ、聞かれる。




ああ、こんなにも心配をかけてしまった。



あれから、まだ……あたしも八雲さんも囚われたままだったんだ。



あたしは八雲さんを抱き締め返す。



己のありったけの力を込めて。




「ハイネ!?ハ…イネ…??」




ちょっと苦しそうな八雲さんの声。




「八雲さん」



「……ん?」



「あたしは大丈夫!!大丈夫だよ!!」




顔を上げて、しっかり八雲さんの瞳を見て言う。




「ハイネ」



「あたしね、強いんだって!!」



「!!」




アリスさんがそう言ってくれた。



自分ではまだわからない。



けれど、そう思ってくれるアリスさんに。


これからも一緒に歩いていく八雲さんのためにも。



強くありたい。



だから宣言するように言うと、八雲さんは少し目を見張る。


そして




「知ってるよ」




そう言った八雲さんは、泣いているような表情で笑うと自分のオデコをあたしのオデコにくっつけた。



わわわっ。


近っ、近いですよっ!?



チュウ出来てしまいますよ!?




って、知ってる?




「お前は強いよ、ハイネ」



「っっ」




そう思ってくれてたの……?



……泣きそうだ。




「八雲さ…ん」



「ハイネ」





「ちょっとぉおっ」



「「!!??」」




なんか野太い声がした!!



パッと八雲さんから離れ、見た先には……





皆が居た。




「み」



「チビ子!!」



「チビ子…」



「心配してたのよ!!あのに、何!!アンタって子は!!男とイチャイチャして!!お母さん、そんな子に育てた覚えはないわよ!!」



「お母さん……」




そんなゴツい母は嫌だな…。


と、おもわず顔に出た。




「何、そのブチャイクな顔は」



「ブチャイク!?」




えっ、この総長、女のコにブチャイクって言うんですけど!?




「ホント、ブチャイクね!」 




……桂…さん(イラッ)




「心配したんだからね、バカァッ」




蓮くんっ。




「凛さんに心配をかけるんじゃない」




麻也くん(怖っ)




「「「「まぁ、無事で良かった」」」」




4人がそう言って笑ってくれる。



皆、心配して迎えに来てくれたんだ。



八雲さんを見ると、笑って頷いてくれる。




強くなろう、この人達と生きていくために。




「うん、ありがとう!!」



「「「「「で?何があった?」」」」」




おおぅ……。

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