「俺ごとやれ!」魔王と共に封印された騎士ですが、1000年経つ頃にはすっかり仲良くなりまして今では最高の相棒です

@kaisyain36

プロローグ

「今だ! 俺ごと封印しろ!」

「で、でもそんな事をしたらアルフレッドが――」

「いいから!」



 青年の悲痛な言葉が洞窟内にこだまする。



「早く! 魔竜王を封印するんだ! 俺が止めているうちに!」



 使い古した厚手のコートを身に纏う冒険者の出で立ち。


 袖から覗く筋肉質な腕には大小様々な傷跡が見られ、いくつもの修羅場をくぐり抜けてきたことは覗える。無造作に伸びた黒髪は身だしなみに無頓着というより野生の獣のような雰囲気を醸し出していた。


 騎士アルフレッド・フィガロ。


 ルアー王国騎士団の次期騎士団長と目される男だ。


 剣術だけでなく魔法にも秀でており「弱点は単純な性格だけ」と専らの噂。世界の危機に国王から勅命を受け魔竜王を封じる旅に参加した青年である。


 そんな彼は今、必死の形相で強大なる竜の化身「魔竜王」を捕縛魔法で捉えていた。


 血に濡れた黒髪を振り乱しながら、彼は仲間へと訴えかける。



「いいから俺ごとやれ! 早くするんだ!」



 その叫びにパーティの仲間は戸惑いの表情を隠せない。


 満身創痍で動けないわけではない、仲間を失うのが怖い、全員そんな顔をしている。



「で、でもアルフレッド・・・・・封印魔法を放ったら君は・・・・・・」

「でもじゃない! 今やらないと多くの人が犠牲になるんだ! 躊躇うなイザーク!」



 イザークと呼ばれた男は身をすくめ今にも泣きそうな表情だ。


 ひとたび封印すれば千年は出ることのできない。


 すなわち、今生の別れを意味する。


 その気持ちが嫌でも伝わるアルフレッド。


 乱れた前髪の隙間からのぞく優しい目で仲間たちに説くように訴えかけた。



「なぁ、たのむ、俺だってそんな顔されたら決心が鈍りそうだぜ・・・・・・」



 捕縛魔法を放つ指先がかすかに震えるアルフレッド。悲しみなのか、魔力の限界なのかおそらくその両方か・・・・・・


 時間はない、そう判断した仲間の一人が涙を拭い前へ出た。


 ハーフパンツにノースリーブと言った盗賊のような軽装。


 鋭い眼差しの少女だがその表情からは悲痛の色が覗えた。



「アルフレッドの心意気、アタシは無駄にしたくねぇ」

「ウェルチ、ありがとう」

「……うるせぇ」



 いつも勝ち気な盗賊の少女ウェルチが涙で目を腫らしながら顔を伏せた。


 他の仲間も同様に手に宝玉を掲げ魔竜王の前へと出る。



「イザーク」

「・・・・・・すまないアルフレッド、君は私にとっての最高の友だ。エレオノーラ――」

「えぇ、これより封印の秘術を解き放ちます。オリバーも手伝って」



 静謐な雰囲気の神官が水晶を手にすると上半身半裸の屈強な男がオイオイ泣きながらそれを抱える。



「まだ喧嘩の勝負ついてねえぞアルフレッド! 勝ち逃げかお前!」

「悪いなオリバー……お前の勝ちで良い」

「いいわけあるかぁぁぁ! うおぉぉん!」



 号泣する大男に苦笑しながらアルフレッドはエレオノーラに微笑みかける。



「エレオノーラ、イザークをよろしくな」

「アルフ……」

「っ……そろそろ頼むぜ、もう限界だ」

「――分かった」



 意を決したエレオノーラは宝玉を掲げ呪文を唱え出す。


 まばゆい光が魔竜王、そしてアルフレッドを包みだし少しづつ足下から凍っていくように結晶が広がっていった。


 ――ガァァァァ


 あらがう魔竜王。


 それをアルフレッドは必死で押さえ込む。



「クソ! 暴れるんじゃねぇ!」

「――ダレガ! 人間ナゾニ! 封ジラレテタマルカァァァ!」

「へへへ……仲良くしようぜ……魔竜王さんよぉ」



 ビシッ……ビシッ……


 封印の結晶が徐々に足元から浸食していく。


 冷たく、そして暖かい不思議な感覚に包まれながら、アルフレッドは仲間に別れの言葉を紡いでいく。




「楽しかったぜイザーク」

「あぁ、私もだ、我が友よ」



「後は頼むぜ、エレオノーラ」

「貴方はいつもそうですね……自分ばかり犠牲になって……」



「泣き虫治せよ、オリバー」

「な、泣いてねぇ! 目に岩石が入ってきただけだ!」



「ウェルチ……じゃあな」

「――あばよ、愛しの騎士様」




 そして、アルフレッド犠牲と引き替えに世界に平和が取り戻されたのだった。




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 皆様に少しでも楽しんでいただけるよう頑張りますのでよろしくお願いいたします。 


 また、他の投稿作品も読んでいただけると幸いです。



 この作品の他にも多数エッセイや



・追放されし老学園長の若返り再教育譚 ~元学園長ですが一生徒として自分が創立した魔法学園に入学します~


・売れない作家の俺がダンジョンで顔も知らない女編集長を助けた結果


 という作品も投稿しております。


 興味がございましたらぜひ!


※次回は本日19:00更新予定

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