第8話 凍て星、無情
「お前さんは雪の精霊のようだな。そんなに雪ばかり見つめて。私は遠く昔に大切なものを失ったんだ」
壮絶な雪景色にまた、色が失われた。
「私も失ってばかりだった」
少女が公園に吹き荒れた木枯らしのように言う。
「どうして、大切なものをあっさりと失ってしまったのだろう」
汽笛の音色が遠く彼方に響いた。僕はその不吉な音色に耳を傾けた。
「だから、私は星を買おうとした」
凍て星が輝く夜空、雪になれなかった銀星たちはあの遠く彼方の冬銀河の狭間で何を悔やみ、何を願い、何を憐れんで光を欲しているのだろうか。銀星が地上に舞い降りたかったからこそ、白く瞬く冷たい、六つの花に変身したのか。
「星って何ですか!」
僕の中で何かが弾ける。真冬の吐息がはらはらと口の中から宙へと舞い落ちる。
「星ばかり追うからこんなことになったんじゃないか」
昔、僕は家族から捨てられた。あの日のことを僕は、白いフラッシュバックのように思い出す。あの冬北斗が輝く深夜、僕は母さんの手から離れた。
「もうどこか行ってしまいたいんだ」
無情な言葉は僕の胸をさらに貫いた。
「母さんがあんな風になったから、こうなったんだ」
涙が雪の華に変わるとき、僕はその場で息をしているだろうか。
「星を買ったからって、今までのことがチャラになるわけじゃないだろう」
汽笛が勢いよく鳴り、雪崩が発生したように、列車は一時休止した。すっかり視界は雪化粧に包まれ、空にはいくつかの小糠星が見えた。
「ほら、星なんていくらでもあるだろう。あれを買えばいいじゃないか」
凍て星が僕をそっと、見守っているように僕は感じた。雪合戦をする悪童のように僕は無邪気にはなれない。僕はもう孤独を知ってしまった、大人になってしまったからだ。
「あれを買えばいいだろう!」
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