思い込みを超えた先の可能性

星咲 紗和(ほしざき さわ)

第1話 思い込みの鎖

思い込みは、人を縛る見えない鎖のようなものだ。自分には無理だ、これはできない、あの人ならできるけど自分には無理――そう思い込むことで、私たちは可能性の扉を自ら閉じてしまう。


たとえば、小学校の頃の私は運動が苦手だった。体育の時間、マット運動の前転すらまともにできず、「運動神経がない」というレッテルを自分で貼っていた。友達が器用に跳び箱を飛ぶ姿を見ては、「すごいな」と感心する一方で、「自分には絶対無理」と心の中で繰り返していた。


でもある日、体育の先生に言われた一言で状況が変わった。「できるかどうかじゃない、やってみなきゃわからないだろう」。その言葉に背中を押され、恐る恐る挑戦した跳び箱。何度も失敗したけれど、少しずつコツをつかみ、ついに成功した瞬間の感覚は今でも鮮明に覚えている。「あれ、思ったより簡単だった」と笑ってしまうほどだ。


思い込みは、不安や恐怖から生まれることが多い。「失敗したらどうしよう」「恥をかきたくない」という気持ちは誰しもある。だけど、その思い込みに縛られ続けると、いつしか自分自身を過小評価するクセがついてしまう。


大人になった今でも、同じような場面に出くわすことがある。新しい仕事の依頼や未経験の分野に挑戦する際、真っ先に頭をよぎるのは「できるかな?」という不安だ。でも、あの跳び箱の記憶が教えてくれる。「できるかどうかを決めるのは、試してからでも遅くない」と。


思い込みの鎖は、自分の手でほどくことができる。だからこそ、「無理だ」と決めつける前に一歩踏み出してみることが大切だ。その一歩は、きっと思い込みを突破する大きなきっかけになる。

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