彷徨える関西人

鰺屋華袋

第1話 運び屋 “ 毒島京一 ”はバカンスが欲しい 前編


 ― 伊豆諸島上空 高度33000フィート一万メートル ―


 一機の小型ジェットが本来の最大巡航速度を速度での飛行を続けていた。


 通常の運航時ならばエンジンや機体の過負荷を嫌って最大巡航速度で飛行する事すらまれなのだが……


(個人所有の機体ならでは……ってところね。確かにを考えれば、どんなに機体を消耗させようと時間を優先するのは分かるけど……)

 

 本来の航空管制羽田この機は……僅かな乗員の他にたった三名の乗客、そしてだけを賓客とするプライベートジェットだ。


 もっとも──たった三人の乗客、しかもそのうちの二人が警護のためのSPとあっては……


 本当ならプライベートジェットのオーナーのみが使用可能な“贅沢で快適な空間”は、その殆どが誰にも使用されないまま宝の持ち腐れとなっていた。


(まあ、気前の良いクライアント様々……って所かしらね)


 コーディネーターの職務はタイトなスケジュールになりがちなのだが……既に請け負った仕事の段階フェーズは輸送パートまで進んでいる。


(あとは然るべき相手にを引き継ぐだけ……)


 用意されたシートは、ファーストクラスも裸足で逃げ出す座り心地で仕事も順調。


(もしがあるとしたら……羽田に着いてからよね?)


 そう思って……ほんの少し、そう……ほんの少しをしただけなのに?!


 ― 轟ッ ―


 機内に響く機体の風斬り音と、体感する加速度が……私の意識を無理やり覚醒させた。


 膝に載せたケースは私の右手に手錠でしっかりと繋がったままだが……


「ちょっと……嘘でしょ?」


 体感していると、窓の外でにたなびく雲の形が……覚醒したての私の精神に容赦なく現実を突きつけてくる。


墜落フォーリングダウン?!……ジーザス!!」


 ………

 ……

 …


 ▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽


『今から一時間十七分前……伊豆諸島上空を飛行中のプライベートジェットで電気系統の不具合が発生、機体はコントロールを失い墜落しました。不幸中の幸いで機体は海面への不時着に成功。搭乗員5名、乗客3名の計8名は救命カプセルで無事機外に脱出した事が確認されました。今回、任務の対象になるのは……』


「ちょい待ち? ワイはそっちが“どーしても”っちゅぅから話を聞いとるだけで……仕事を受けるとは言うとらんで?」


 ワイはシレッと仕事を突っ込もうとするねぇちゃん相互組合職員に、とりあえず“釘”を刺した。


(だいたい……今は手に入れた休暇の真っ最中や。 こんな所プライベートヴィラで仕事の話なんぞ聞いてられるかっちゅうねん)


『勿論です。我々には依頼をするつもりなどほども御座いません。ただ……はまだ頂戴した交渉時間の範囲ですので』


 ワイはかなりにやる気が無い事をアピールしたつもりやったんやが……


 サイドテーブルの端末スマートフォンごしに話す相互組合ユニオンの交渉人はまだまだ“説得する気”満々みたいやな。


「まぁ、待ちーや。まず第一に……今、ワイは半年ぶりの休暇中や。第二に……当然やが商売道具海のアシも用意してへん。第三に……お前等のこっちゃ……ここから見える伊豆諸島の方向が……チェックくらいしとるんやろ?」


 ワイの視線の先には……ギンギンのお天道さんを隠しよる、黒〜いカーテン分厚い雨雲が何重にも垂れ下がっとった。


 ほんま、地元やったら“早よ洗濯モン入れぇ”って、近所中にれて回らなならんとこや……


『存じております。当該海域は現在発生中の大規模な熱帯低気圧によって完全に封鎖されており、発生中の暴風雨で空路による遭難者の救助は不可能です。残るは海路ですが……こちらも爆発的な降雨と波浪によって状況は最悪。しかし、貴方なら……たとえ行き先が“ナイアガラ瀑布フォールズの滝壺”であろうと到達出来る筈です……“相互組合ユニオン”最高の呼び声高い運び屋……“彷徨えるザ・フライング関西人ウェスタン”(クッ)なら……』


 こいつ、ワイので吹き出しかけたな?! 


「コラッ、ワイは西部劇のガンマンか!! 何が“彷徨えるザ・フライング関西人ウェスタン”や! ざっつあだ名コードネームつけよって!! ここが受注カウンタやったら……裏に連れ込んでワレの事(いろんな意味で)にしとんでほんま!」


『で……ご所望のマシンですが……』


「ワイの渾身のジョークセクハラは完璧に無視か!? ええ根性しとんのぅ?」


 なんちゅう図太いやっちゃ……まぁ依頼交渉ミッションシェア担当者マネージャに毒づいてもしゃーないんやけど……


 なんせコイツらは、世界でも有数の変人の集まり“相互組合員ユニオンメンバー”を日々仕切っとるんやからな……こんくらいの事では“アホ毛の一筋”ほども狼狽えんやろ。


『……既に今回のミッションに最適な機体モノがそちらに輸送中です』


 何が交渉やねん……はなからやらせる仕事させる気マンマンやないか。突っ込む気力すら失せるわ……


『そして今回の任務対象は人では在りません。不時着したジェットから脱出したエージェントが所持しているをデータの場所まで運んで頂きます』


 空模様を見る為、ほんの少し視線を外しただけやっちゅうのに……いつの間にか俺のスマホの上にの立体映像が回転しとった。


「ちょぉ待てや……お前コレ……」


 回転する赤いケースには厳重な封印が施され、コンソールには内部のコンディションがリアルタイムで表示されている。側面に刻まれるロゴは“ HUMAN ORGAN ”の文字が……



『察しの良い方は仕事がしやすくて助かります。そして、これの移送が ちなみに……移植対象者は10


 未成年の臓器移植は日本では障害が多い。恐らく今回の話もなルートで回って来たモンやないやろう……まあ、……や


 ワイはスマホを握るとビーチベッドから飛び起き、そのままヴィラの中に入った。


「話を続けぇや」


 バスルームのキャビネットにスピーカーモードのスマホを放り投げ……水のままシャワーを浴びる。徐々に熱くなるシャワーは限界直前で温度上昇を止め……そのまま熱湯に近いシャワーでアルコールを身体から追い出しにかかる。


『時間がありませんので要点のみ……ミッションはこのケースを当該海域の救難ボートから回収し、指定のポイントまで運んで頂く事。報酬は通常額に緊急依頼分のボーナスを……更に休暇保証手当も付けます。全額前払い。達成時間によってはプラス報酬を別途支給。詳細はメールをご覧下さい』


「……《ガイガー人工知能》! メールフォームけぇ」


 ワイはタオルで身体を拭きながら、端末を管理する人工知能ガイガーに指示を出した。


 が俺の指示を理解し、でメールフォームを立体映像に映し出すまで0.8秒……さすが統合AIアプリん中で一番優秀なモデルやな。寡黙な所もワイにピッタリや。

 

「おいおい、ごっついペイ報酬やんけ……こりゃあれか? 依頼主は余程のお大尽で……っちゅう事か?」


『解釈はご随意に……そろそろマシンが到着しますね』


 [BariBariBariBariBariBari………]


 クッソやっかましいローター音……チヌーク双発輸送ヘリ?……空自も一枚噛んどるんか?


「おい! もっかいーとくけどワイはまだ仕事を受けるとは言うとらんで? とりあえずはそのマシンとやらを確認してからや。ワイの腕がなんぼ最高や言うても……ヘッボいマシンやったらどーしょーも無いからな」


『(ぷっ) ……どうぞご自由に』


「おい……今笑ろたやろ? あっ??」


 [ザバッッァァァンンンッッ]


 ヘリから投下されたが立てた水音が、絶妙なタイミングで俺の言葉を遮りよる……


 くそ……あいつ今、絶対笑いよった!!


▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽ 


「ほう……カ○サキのフラッグシップモデルやないか……」


 ワイのプライベートヴィラに繋がる桟橋の程近く……そこに、ついさっきまで無かったはずのジェットスキーがユラユラと波に揺られとった。


 メタリックライムグリーンのカラーリングを施された大型のボディは、空中投下されたせいで水しぶきを被ってキラキラと輝いて……まあそんなんはどうでもええか。


 因みに……投下を済ませたヘリはとっくの昔にその場から消えとった。そんなに機体を目撃されたくなかったか……シャイなこっちゃ。


『確かにガワ見た目ですが……中身はまったくと言っていい程の別物ですね。この個体は防衛省とカ○サキ重鉱業が“次世代の沿岸防衛の要”として総力を挙げて開発した機体です。加速力、操縦応答性、機体安定性、堅牢度、無給油航続距離……どれ一つ取っても“海上の戦闘機”のコンセプトに遜色の無いマシンと言っていいでしょう。因みに開発コードは“マルス軍神”です』


 ……はぁん……大層なこっちゃ。


「……そんだけの機体や。?」


 ワイは愛用のオークリーアイウェアを額に引っ掛けて、大型輸送ヘリチヌークが落として行ったマシンに跳び乗った。


『これは一般論ですが……どの開発機関にしても“新機軸の機体開発”には膨大な運用データが必要でしょうね』


 つまり……ワイの“運用ログの提供”までがコミっちゅう事か。


「世知辛いこっちゃ……」


 スタータースイッチを捻ると……力強い排気音と共にエキゾーストが唸りを上げ、コントロールパネルにシステムインフォメーションが表示される。目的座標のデータに……ふむ、エンジンは過給機付きで……


「ほう、パワーユニットそのものはハイブリッドか……悪うないな……」


『メインは重量比60%までダウンサイジングされたターボエンジンです。出力は主機のみでおよ220kw300馬力を発生。補助動力装置には最新のマグネシウム発電機構が装備されています。このシステムは理論上、海水が供給される状況なら無限に電力を供給出来ますが、今は海水の濾過フィルターの寿命が実質的な運用限界ですね………気に入って頂けましたか?』


 防水型のイヤホンから安心したような声が聞こえた。ふん……こっちゃ。


「そいつはこれから判断するわい。とりあえず……は、お前等のに乗ったろか」


「……感謝します。“彷徨えるザ・フライング関西人ウェスタン”……(ぷっ)」


「ワイの名前は毒島京一や! 笑いが堪えられとらんぞボケ!」


 ワイはハンドルに掛けてあったロープのもやい結び目を解いて、機体と共に投下されていたいかりを海中に放擲レッコした……


「……ワイのバカンスはまたお預けか……」


 一瞬のアクセル全開で開放されたエンジンは、唸りを上げて取水口から海水を吸い上げる。


「ええ反応レスポンスや」


 ワイは船体後部が沈みこむアクションを利用して、船首を伊豆諸島方面に向けた。


「《ガイガー》コイツのOオペレーションSシステムと同期、目的座標までの最短ルートをマーキングせぇ!」


 ― pi! ―


 アイウェアに拡張機能を使ったルートマップが浮かび上がる。相変わらずええ仕事しよる……無言で表示するのが特にエエ。


「毒島京一、相互組合On Demandの要請にfrom従いUNIONこれよりfor take任務をon開始するmission.。なお任務中は騒音が予想される。連絡はアイウェアへの映像投射で……行くぞ!オーヴァー!


 ワイは船首バウを力の限り抑え付け……アクセルを全開にした。


 ▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽


 ― zabbaaaaannnn!! ―


 私達の乗った機体が……本当に、本当に……本当〜〜に多大な幸運のおかげでなんとか海面に不時着し、救難カプセルに移乗してから……既に二時間以上……


 私達はシートにベルトで固定されたまま、凄まじい波に翻弄され続けていた。


「マズいわ。これ以上波に翻弄されたりしたら……ケースは大丈夫でも、中のが保たない……」


 ― ゴゴンッ ―


 救命カプセルにまた海面を浮遊するデブリがぶつかった。この救命カプセルは余程の事が無い限り破壊されたりはしないが……


「ミズ・ユエン……大丈夫……ですか……?」


「くそ……我々がついていながら……本来ならとっくに羽田に……」


 私の護衛役として随伴してきた相互組合ユニオンの職員二人が、シートに固定された状態で弱々しい呻きをもらす。 


 彼等は、墜落時に私とフライトスタッフを庇ったせいで肩と膝を骨折してしまい、現在はベルトで固定されたシートから立ち上がる事すら出来なくなっていた。


「心配はいりません。今は怪我を悪化させない様に大人しくしていて下さい」


 ― ゴゴゴンッ! ―


 また浮遊物が……


 ― ゴゴゴゴゴゴゴゴツンッッ!! ―


 「???? 何なの??」


 私はベルトを外し、カプセルの入口まで手摺を使って慎重に移動した。この救難カプセルは空気膨張インフレータブルタイプだが、主要なパーツには硬式のフレームが組み込まれており、かなり堅牢なつくりをしている。


 ただ、救難カプセルという物の性格上、窓に類する様な物は殆ど無い。なので、唯一外の様子を確認出来る、入口のアクリル製舷窓ポートホールから外を確認すると……


「はぁ?」


 私の自分の目に映った物を疑い幾度か瞬きを繰り返した。しかし何度目を瞬いても結果は変わらない。


「何でこんな所に人が居るのよ??」


 そこには……暴風雨の中を舞う救難カプセルに大型ジェットスキーをにした男が、


 ― ニィッ ― 


 獰猛な笑みを浮かべてカプセルのドアをノックしていた。


 ▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽


 凄まじい暴風雨の中……救命カプセルの舷窓から女が顔を見せた瞬間、ワイはカプセルの入口付近に飛び移った。それに気付いた中の誰かが、ドアの鍵を慌てて解錠する。ワイは……這々の体でドアを開けて中に飛び込んだ。


「ハアハアハア……さっさと……ロック……開けんかい……さっきから……ずっと……ノック……しとるやろうが!! 死ぬかと……思たぞ……」

 

 中に居るのは……男女合わせて八人。情報通りや。因みに……マルスジェットスキーは、ガイガーの奴がカプセルから離れん様に制御してるから問題ない。ここに来るまでにマルスの能力はよう分かった。アイツは……命を預けるのに十分な力を持っとる。


「……貴方、一体誰??」


 ワイが息を整えとる所に……女が話し掛けてきた。


「おう……ワイはユニオンから派遣された運び屋トランスポーターの毒島や。あんたの持っとるそのケースを為に派遣された。さあ、時間があれへん。その手錠外してさっさとケースを渡してくれや」


 ん? なんや皆が妙におかしな目で見よる……? 


「……ユニオンの使いというのは分かりました。今、この場に居る位だから、今更その言葉がウソだとは思わないけど……ごめんなさい……この手錠の鍵が……無いんです」


「はあ……なんやて?? というか……あんた誰や」


「私はユニオンで医療コーディネーターをしているユエン・チェンシーと申します。実は……不時着してからのどさくさで手錠の鍵を無くしてしまったみたいなんです」


 なんちゅーこっちゃ……ワイは周囲を見回した。まぁ当然やが手錠を切断出来そうな道具は皆無やな。


「しゃーない。ねぇちゃんごと運ぶさかい……ワイの後ろに乗ってもらおか」


▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽


(今……この人、私ごと運ぶって言ったの? この嵐の中を……あのスワンボートより小さなジェットスキーで?)


 確かに──忽然と現れた“運び屋”を名乗る男が(窓から見えた外の状況からすれば)、あの事は間違い無い事実だろう。


(でも、人間一人を連れてもう一度この海を帰るなんて……本当に可能??)


「ちょっと……本気なの??」


 私の懸念はごく自然に口から出ていた。それを聞いた男は、おもむろに濡れた前髪かき分け……アイウェア越しこちらを一瞥。次の瞬間──


「本気かやと?? ほんならねーちゃん……ワイがわざわざ“一発ギャグに”伊豆の沖ココまで来たっちゅうんか?」


 ──大きなアイウェアのせいで分かりづらいけど……この人怒ってる?


「いえ、そういう訳じゃ」


「さよか。ほんなら……しょーもない事言うとらんとさっさと仕度せんかい!」


「はっ……ハイッ!!」


 強烈な関西弁で一喝され……私は反論する事も出来ず反射的に返事をしてしまった。


 彼は私の返事に満足そうに唇の端を持ち上げると……そこで初めて目元を覆うアイウェアを外し、救命カプセルに設えられたペーパーナプキンでレンズに付いた水滴を拭った。


 その時──露わになった彼の素顔に……女の私だけで無く他の男性クルー達すらが絶句してしまった。


(………何よその顔……????)


 多機能ゴーグルの下から現れた彼の素顔を見て……私は自分が茫然としている事に気付いた。


 気づいていたが……それでも、そのインパクト彼の美貌は、私の精神をから帰してくれなかった。


 彼の顔は、整ってるだとか……バランスがいいだとか……そういう既存の表現で言い表わせる様なでは無かったからだ。


 浅黒い肌に彩られた輪郭は……メディアが出荷するとは比べるべくもない野生の力強さと鋭さを備え……


 目の形は……穏やかともワイルドとも表現出来る切れ長の瞳に、涼し気な一重瞼としっかりした輪郭の眉が知的な雰囲気を添えている。


 鼻筋は、東洋人としては多少彫りが深い程度だが……鼻梁はミケランジェロが渾身を込めて引いたのかと思わせる絶妙なラインを保っていた。


 口は……こちらは日本人にしては若干大きめながら、絶妙な厚みの唇が真珠の様な輝きを持つ歯並びを微かに覗かせて……彼が吐き出すキツイ関西弁すらに見せてしまう。


 端的に言って美男子……いや、彼の容姿を表す表現が見つからない。あえて説明するなら……彼の名乗りそのまま“猛毒を備えたの美しさ”だろうか……


「ンッ……ンンッ……」


(バカ……何を見惚れてるのよ!! いくら美しくても彼について行くかは別問題でしょ!)


 私は自分でもわざとらしい咳払いを重ねて、頭を無理やり正気に戻した。


(落ち着いて……)


 ここを出てこの男について行くのか、それとも、ここでもう少しな救助を待つか……時間を優先するなら選ぶ余地は無い。ただ私の命まで賭ける様なはしてないし……


「待ちなさい」


「機長??」


 私が躊躇うのを見て……墜落したジェットの機長が声をあげた。五十絡みのが乗った声は、その時点では何ら意見を述べた訳では無かったが……その声音は明らかに難色を示している。


「貴方が相互組合ユニオンのメンバーだと言うのはこの海域に到達した手腕で理解できる。だが、まさにこの状況で……軽々に彼女とそのケースを預けるわけにはいかん」


「機長……」


「私には荷物を契約通りに運ぶ義務があるが……それ以上に乗員の生命を守る義務がある。乗機を墜落させた無能な機長であっても……」


 その時、機長が自らの信条を述べる姿に皆が気を取られていた……それは間違いなかった。ただ、結局その信条を語り終える事は出来なかった……


「はっ、そないゆーてもなぁ……ワイも仕事やねん。?」

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