第45話
「全く。皆でご飯は剛が行かなアカンやろ」
プリプリと怒ったアリスが屋上へ向かう。
剛と替わるために。
兄弟が揃ってきて、一番嬉しがっているのが剛だということを誰よりもわかっているから。
でも光愛を溺愛しているのもわかっている。
「……おぉ」
どっちが良いんだ?
屋上まで後数歩というところで止まったアリス。
そんなアリスの耳に優しい優しい声が届く。
どうやら剛が光愛に話しかけているようだ。
邪魔をしたくなくて、アリスは静かに階段に座った。
愛情のこもった声は耳にとても心地良い。
「ごめんな」
一言目はそれだった。
でも何を謝っているのか、アリスにはわかった。
「母親から引き離して……」
赤子を母親から引き離す。
その選択が正しかったのか……今でも口には出さないが剛もアリスも悩む。
「でもな、あの時はそれが最善だった。俺もアリスも光愛を死なせたくなかった」
可愛い可愛い姪っ子だから。
そう言う剛がどんな表情をしているか、手に取るようにわかるアリス。
きっと泣き笑いで真っ直ぐ光愛を見てる。
両親の愛情を知らずに育った剛。
なのに姉弟の誰よりも愛情深く人を愛せる人ー。
「約束する」
「「……」」
「寂しい思いは絶対にさせない。友達みたいな父親。父親みたいな叔父。口煩いだろう母親替わりの叔母」
「……」
それはあたしのことか?
「そして兄みたいな叔父達。皆が光愛を愛して守る。
好きすぎてウザがられるかもだが……特に俺」
ウザがられるかもという自覚はあるのか。
声を上げずに笑うアリス。
「光愛」
剛が光愛を呼ぶ。
星を宿したような声で。
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