第2話

ご飯を作って待つあたしに、母はいつも笑顔でありがとう、と言ってくれたし、たまにしかない日中の休みには動物園や水族館に連れて行ってくれた。




中学に上がると、すぐに彼氏ができたけど彼氏なんかよりも母を優先した。休みの日は一緒に買い物へ出掛けたり、恋バナを聞きたがる母に彼氏の話をしたりした。




仕事で忙しくても、母はあたしとの時間を作ってくれてた。本当は友達や両親に会いたかったのかもしれないけど、いつも笑ってあたしと楽しそうに話してた。




父が死んだ時も、毎年やってくる父の命日にも、母は決して涙を見せなかった。もしかしたら、あたしが寝てる時にひっそり泣いてたのかもしれないけど、いつも元気で気丈に振る舞う母にあたしは罪悪感でいっぱいだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る