第40話 CRATと怪異連合
(銃声に紛れて動いたからバレずに済んだが、この後どうする?)
武装した怪異連合が出入り口から駐車場に向かって馬鹿みたいに撃ってるし、こんな状況じゃCRATに保護もしてもらえないだろう。
「
「能力持ちはいるか!? 魔族の種類は!?」
「不明だ! 気をつけろ! アイツら発砲してばかりで能力を隠しているぞ!」
「敵の数、能力も不明! 現在、
隊員たちの切羽詰まった声が響いている。
魔族が相手ならどんな攻撃があるかわからない。前に調べたことだが、この日本には妖怪だけでも千五百種類以上いるらしい。つまり戦術パターンが無数にあるということだ。
(あいつらも怪異連合か? かなりの数がいそうだし、ひょっとしてこっちが本命か? くそっ……上の階に避難しておけばよかったな)
そう思っても後の祭りだ。戦場のど真ん中に迷い込んだ俺に今できることは車の影で息を潜めることだけだった。
「弾がすり抜けた! 奴ら銃弾が効かないぞ!」
「灰のようなものが噴き出してダメージがない……!」
「灰だと!? 各員、おそらく
隊員たちの声を聞いたところで俺はふと思う。
灰坊主は灰を弄ると現れる妖怪だ。囲炉裏に潜むヤツらしいが、あいつら自体には戦闘能力はほとんどない。たしか魔族ランクはDかCだったはずだ。でも灰化で物理耐性があるのは厄介らしい。
「プラズマ火器に切り替えろ! 焼き払え!」
「了解!」
CRAT隊員たちが青白いプラズマ弾を放つと、出入口側からの銃声が徐々に少なくなっていく。ここからじゃよく見えないが、どうやら怪異連合の奴らが倒されているらしい。
「押し返せ! アルファチーム!」
「了解! 散開して応戦!」
足音が響き、CRAT隊員たちがプラズマライフルを撃ちながら左右に広がっていく。
このままCRATが奴らを片付けてくれるなら大丈夫そうだが、そのとき、俺が下りてきた階段室のドアが開き、怪異連合の男たちが飛び出してきた。
「撃て! CRATがいるぞ!」
「くそっ」
CRAT隊員が応戦するが、
ひとりの隊員が倒れる。だがその隊員が倒れるまに放ったプラズマ弾で肉を焼かれ、怪異連合の構成員がふたり倒れた。
「後ろから怪異連合だ! 応戦しろ!」
隊員たちからプラズマ弾を撃たれ、男たちが階段に引いていく。そこに隊員が手榴弾を投げ込み、階段室から爆音が響く。
(どうなってるんだ!? こんなところを奴らは狙ってるんだ!?)
俺は階段室から目をそらすと、地面を這って進み、なるべく銃声から遠ざかろうとした。
「後方クリア! 正面の敵に火力を集中しろ!」
「了解!」
「クタバレ! テロリストども!」
隊員たちが体勢を立て直したところで、俺を目の前のトラックを見上げた。
灰色のコンテナだ。滑らかな車体で運転席とコンテナが一体型の変わったタイプ。街中で見るようなものじゃない。特殊車両だ。
(頑丈そうなコンテナだ。ひとまずこの中に避難しておくか?)
俺がそう思ったところで、地下駐車場の一角が赤々と照らされた。
(次回に続く)
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