第2話
家の中に入ると、木の香りがふわりと漂い、静かな空気に包まれる。自然光が窓から差し込み、床や家具を柔らかく照らしていた。シンプルで温かみのある空間に、俺たちが選んだ家具や小物が並んでいる。
壁には、二人が撮った写真や小さな絵が飾られている。
窓際には植物がいくつか置かれていて、リビングにはソファと小さなテーブルがあり、くつろげる空間が広がっていた。
お気に入りの本や雑誌がさりげなく置かれた棚もあり、ここが二人の場所であることを実感する。
「今日は何をしようか?」
俺が尋ねると、彼女はソファに倒れ込むように座り、足をばたつかせながら笑った。
「んー、まずはお腹空いてる!何か作ってよ」
俺は洗面所で手洗いをしてから、キッチンへ向かい冷蔵庫の中を確認した。
「そうだな。パスタとかでいいか?」
「良き!」
彼女からの了承も得たところで、俺はさっそくパスタを作る準備に取り掛かった。
3分後・・・。
「あのー琴音さん」
「なんだい優斗君」
「少し、離れてもらえませんか?」
「それは無理な相談だ」
「でしたら、少しでいいんで力を弱めていただけると助かるのですが」
「いやだ」
俺は今、食器を一通り洗っているのだが、背中から彼女が力強く抱きしめて離れようとしない。
顔を俺の背中に埋めながら、くんすかくんすかとまた匂いを嗅いでいる。
「汗かいているんだけどな・・・」
冬といえど、俺は先ほど走ってきたため、汗をかいている。なので、洗面所の横にある洗濯機に汗でぬれた下着を脱いだが、今の俺が清潔な状態ではないことくらいわかるはずだ。
それなのに彼女は、気にせず俺にしがみついてくる。
「気にしないよ。むしろ、いい匂いだから」
「褒めてるのか?」
「もちのろん!」
決して嫌なわけじゃない。ただ、こうして触れられていると、俺も男だというか、いろいろと我慢しているわけで・・・。
「もう少しだけ我慢してくれ」
これは、彼女に言い放った言葉であり、自分自身に言い聞かせる言葉でもあった。
「それはどうかな~?」
彼女は『ふふふー』と意地悪そうに笑いながらも、顔を左右に振る。
「・・・分かったよ」
俺は思い切って彼女をお姫様抱っこした。
「わっ!急に何をするぅー」
驚いた顔をしたと思ったら顔を『ぷくー』と膨らませた彼女を抱きかかえ、俺はソファに寝転がせた。
「もう~、せっかくいいところだったのに~。優斗の傍は一番安心するんだよ~」
「後でな」
俺は彼女の頭を軽く撫でてから、再びキッチンに戻り、料理を再開した。
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