召喚士俺、スライム一体で無双します

@Sekimu

第一話 え、スライム?

目が覚めると静かな森の中にいた。

意識は曖昧で体も上手く動かなかったが、ゆっくりと立ち上がり辺りを見回した。

「俺、死んだのか、、」

そう俺、鍵谷カズキ、27歳は死んだのだ。なんの面白味もないただのサラリーマンだった俺は帰り道の駅で見知らぬ誰かに突き飛ばされ、電車に跳ねられた。跳ねられた瞬間の痛みは驚く程鮮明に覚えている。

「あっけない人生だったけど、天国でもこうして動けるならまあ良いか。」

その時だった、

「あんたみたいに大した人生送ってない奴、天国になんていけるわけないでしょ。」

頭上で声がした。すぐ上の木を見上げるとそこには見た感じ15歳くらいの少女が枝に腰掛けていた。

「え、か、、神様?」

「ちが!、、、くもないわね。あんたからしたら私はさながら女神様ってとこかしら?」

「自分で女神っていうか?」

そんな疑念を浮かべながらも俺の中ではある考えが浮かんだ。

これっていわゆる異世界転生というやつでは?!

自称女神の顔を見るとニタッと笑い俺の元へ降りてきて言った。もっとも、着地に失敗して足首をひねっていたようだが。

「さ、さすがのバカもやっと気付いたようね、、。そ、そうよ、あなたは元の世界からこの世界へと召喚された転生者よ。まあ、あんたみたいなのが選ばれたのは召喚者の誤算だったでしょうけど。、、イタタ。」

いちいち勘に触る奴だ。だが、やはり俺は転生者だった訳だ。

ならきっとこの世界で無双できるチート能力を授かれるはず。

そう、これから前の人生とは違ったドキドキワクワクの冒険ライフが始まるのだ!

「で、一体俺の能力は何なんだ??」

女神は自慢気そうに答えた。

「あんたの能力は『友好契約(テナズケ)』。モンスターと契約を結んで召喚獣として操ることのできる力よ。」

おお!召喚士とは何と強そうな職業!モンスターといえばオークやフェアリー、最終的にはドラゴンのような最強モンスターも操れるってことか!

「で、その契約ってのはどうやるんだ?まさかとんでもない条件が要るんじゃないだろうな?」

「フフ、よくぞ聞いたわ。なんと『友好契約(テナズケ)』の真価は契約の条件にあるのよ。」

おお、、、俺は唾を飲んだ。

「なんと、その条件はあんたの仲間にしたいという意思だけ!それだけで簡単に対象のモンスターはあなたのことを大好きになり、自由自在に操れるようになるわ!」

「す、すげえ!!」

予想以上の当たり職業じゃないか!これはこの世界での俺の成功は約束されたようなものだ。

「こんな当たり職をあんたみたいなのに選んであげた私に感謝しなさい。そして崇め奉り、毎月一定の謝礼金を送ってきなさい!」

うるさい女神を無視して俺は早速この能力を使いたい衝動に駆られていた。

そして俺はあることに気付いた。

ガサガサガサ、、、

すぐ近くの茂みから何か物音がする。間違いない、そこに何か生き物がいる。

「フフ、早速お出ましね。」

女神が呟いたその時、

バッ!!

「おおっ!、、、、、、お?」

小さくて丸みのある体。青白く、透明感のある肌。そして何より、そのぷよぷよした可愛い見た目。間違いない、、こいつはスライムだ!!

「最初の契約モンスターにはもってこいの相手じゃないの。さっさと契約しちゃいなさい!」

確かに、明らかに強そうでは無いが、冒険の最初のモンスターといえばやはりスライムだろう。俺はスライムの方向に右手を出しポ◯モンさながらに叫んだ。

「『友好契約(テナズケ)』発動、キミに決めた!!」

すると、俺の手のひらとスライムの足元?に魔法陣が現れた。女神は俺のセリフに若干引いていたような表情だったがまあいい。

キュイーーーン!!

魔法陣から激しい光が放たれ、俺とスライムを包んだ。

「おおおおお!!」

俺はその神々しい光に目が眩み、倒れ込んだ。



ゆっくりと目を開けた。しばらくすると光は消え当たりは静まり返っていた。これは、、、成功なのか?

すると俺の背中にぷよぷよしたものが当たっていた。

そこには俺にべったりとくっつき、嬉しそうに体を揺らすスライムがいた。

「!!」

言葉は発してないが俺に愛情表現をしているということだけは分かった。

「これは、契約成立ってことだよな!そうだよな、女神!」

女神の方を向くと何やら分厚い本を片手にあせあせとページをめくっていた。

俺はなんとなく嫌な予感がした。

「おい、女神!きいてるのか?」

女神は俺の言葉に明らかにびくつき、俺と目を合わせずに答えた。

「そ、そうね、、。上手くいったようでよかったわ。じゃ、あたしはこれで。」

そう言って逃げようとする女神の首を俺は引っ掴んだ。

「な、なによ。」

「おまえさっき焦ってなにかをみてたよな。なにか俺に隠して無いか?」

「…。」

女神は気まずそうに口を開いた。

「じ、実はさっきマニュアルをしっかり読み返してみたところ『友好契約』で契約できるモンスターは1体まででして、、。」

「え?」

俺はスライムの方をみた。ぴょんぴょんと俺の周りを跳ねまわっていた。










  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る