仮タイトル:異世界から極悪人が召喚された結果、ファンタジー世界はこうなった。

 ◆キャッチコピー

 それは世界が震撼する兵站チート


 ◆概要

 闇の武器商人サラリーマンおっさんが異世界転移してえげつない兵器でもって最強軍隊作っちゃう戦記もの


 ◆以下第一話


 第1話 私はサラリーマン。異世界人は何人目ですか?


「はじめまして。私の名前は斯波しば工作こうさくと言います。しがないサラリーマンです。どうぞよろしくお願いします」


 スーツ姿の斯波と名乗った男がにこやかな笑顔で名刺を差し出す。受け取ったのは、辺境防衛を担うアイラ砦の工房長である鍛冶師ホランドだった。


「お、おう……?」


 エランドは出会いがしらに突き出された紙片に戸惑った。


 無理もないことだ。彼は異世界人と出会うのは初めてだったし、名刺を受け取るのも初めてだった。斯波はこの世界ではまず見ることのないカチッとした不思議な服、現代日本ではスーツとネクタイと呼ばれるもの――を身に着けており、彼の目にはいかにも奇妙な人物に見えた。体格も痩せていて、勇者というには頼りなさすぎる。


 本当にこの男が王が遣わしたという召喚勇者なのか?


「――何か私にご質問がありますか?」


「ない……、いや。ええと、この紙はなんだ?」


「失礼いたしました。こちらは『名刺』と言いまして、私の国の風習で名と身分と連絡先――、それらが記してあるのです。こちらを受け取っていただき、折を見て『こんな奴も居たな』と思い出していただくためのものです。読めますでしょうか? この国の言葉で書いてはみたのですが」


 なるほど。差し出された名刺には『ワールドワイド兵器総合商社シバ 営業員 斯波工作』と記されていた。


 兵器総合商社……。

 字ずらは見慣れないものだったが、意味は分かる。要するに武器商人なのだろう。

 武器商人。こいつ勇者なのに商人なのか。


「この砦は、森エルフたちの猛攻に晒されているとお聞きしております。矢じり、剣、槍、甲冑もろもろが不足しているとか」


「ああ。敵の抵抗が激しくてな。エルフどもの数は少ないんだが、地の利は向こうにある。森は奴らのホームだから見通しの悪い中で一方的に奇襲してきやがるんだ。おかげで騎士どもの腰が引けちまった。どれだけ武器を持たせても、ぜんぶ置いて逃げ帰ってきやがる」


 武器が不足しているのだ。

 おかげで工房付きの鍛冶師であるホランドは寝る暇もなく働かせられている。


 王国の西にはいくつかの異種族の国があるが、中でもアイラ砦の近隣に存在するハイエルフたちは大きな集落を形成していた。人族の基地であるアイラ砦とも交易なども行っていて、関係は良好だった。


 だが変わってしまった。王がハイエルフの森に対して戦争をしかけたからだ。目的は略奪と人狩り。長命で魔力に優れ見た目も美しいエルフ種は人間の世界ではよく売れる。


「クソみたいな話だがな、命令だからしょうがねぇんだ……」


 彼らは言葉も通じ、姿形も人間と酷似している。隣人として共存してきた歴史もある。同じ二足歩行の異種族でも、意思の疎通が難しいゴブリンやオークなどと比べられないほど親しみがある。


 だが似ているからこそ駄目なのだろう。王都に居座る鼻もちならない権力者や金持ちには、彼らの存在そのものに


「エルフの女どもで娼館街を作るんだとよ。男はどうすんのかねぇ。知りたかないな。ああ、考えれば考えるほど、嫌な話だ」


「なるほど。大変なのですね」

「大変なんだよ」


 ホランドはこの戦争に反対だった。

 仕事でなければ、こんな非道には加担はしたくない。


「ですが。命令なのでしょう?」

「まぁな」

「あなたは職人だ。それも雇われ職人。命令には従わざる得ないのだと理解しています」

「ああ、不本意な事だがな」


 状況を一通り聞いた斯波は、武器庫に案内してほしいと言った。商人の勇者様は異種族虐めに乗り気ってわけか。大人しそうな顔してやっぱり勇者なんてのはクソだな。とホランドは思う。


「ここがそうだ。からっぽだろう? 特に矢と砲弾、火薬が足りてねぇ。あんた商人だって話だな。勇者の恩寵ギフトもそれ関係なのか?」


「ええ。その通りです。まずは矢と弾薬ですね?」


 斯波は身に着けたスーツの懐から、板状のものを取り出した。それに指をそわせ、何やら操作を始めた。


「それは何だ?」


「これは仕事道具です。一昔前はノートPCを使っていましたが、ここへ呼ばれる直前にタブレットPCに切り替えていました。タイミングが良かった。ノートは机に置かねばなりませんが、これなら立ったまま使える」


 こんなところでしょうか。と斯波がつぶやき、最後にとんとタブレットを叩いた。するとホランドと彼の前に、見慣れない箱の山が突如として出現した。


「王より先に少額ですが頂いておりまして。これがその対価です。ご注文の弾薬です。年代的にはあっていると思いますが、どうですか?」


 ホランドは驚きながらも冷静に箱の中身を検分する。大量の矢と、石の砲弾と、火薬。


「確かに……。これはすごいな。何もないところから物資が出てきたぞ」


「これが私の恩寵ギフトです。価値のあるものを頂くことで、望まれるものを取り寄せることができる力です」


「なるほど。だからあんた、勇者で商人なのか」


 異世界召喚勇者。この世界の召喚術で呼び出される異なる世界からやってくる人々の呼び名だ。彼らはこの世界に現れる時に一つだけ特別な力を与えられる。それが恩寵ギフトと呼ばれる力。恩寵は人により異なる。単純な怪力だったり、超絶的な魔力であったりが多いと聞くが、斯波のようなギフトに稀にいる。


 稀に、だ。だがその分貴重な恩寵だ。


「対価さえお支払いいただければ、どんな武器弾薬もご用意指せていただきます。おや、まだ残高がありますね。剣と槍も出しておきましょう」


 追加で木箱が山と現れる。中にはぎっしりと鋼鉄の剣と槍が詰まっていた。


「おいおいおい。なんてこった。あんたんだ? 王は何を考えている?」


 ホランドにとってそれは恐ろしい力に思えた。要するに、何でも取りよせ放題という事だろう。そんなものがいれば自分のような工房鍛冶屋は必要がなくなる。作るまでもなく完成品を取り寄せることができるのだから。


 いや、それどころの話ではない。

 対象が何でもだとしたら?


「その力、もしかして、なのか?」

「何度目でしょうかねその質問。かの〈万物王〉と同じ力か? という事ですよね」

「あ、ああ」


 かつて王として大陸に覇を唱えた召喚勇者がいた。

〈万物王〉と呼ばれたその男の恩寵は『創造クリエイト』文字通り無から有を生み出す能力だった。


 彼の力は、召喚勇者などでは収まらず、召喚主である王を裏切り自分自身の国を作るに至った。彼が作りだすあらゆるものは、この世界の理をはるかに超越しており、世界は瞬く間に彼の軍門に下った。異世界から現れたただ一人の男に、この世界のすべてが屈服したのだ。


 だがそれらは、しょせん能力で生み出したものだったのだ。男はほどなくして謎の死を遂げる。それによって彼の王国も煙のように消滅してしまった。


 恩寵は、勇者が死ぬとそれが及ぼした結果ごと消滅する定めなのだ。


「私はね、『武器商人』なんですよ」

「ああ」

「実は私の恩寵、武器しか出せません。しかも、『商人』なのでお代がね。必要なのですよ」

「お代か」

「支払われるモノと同価値の品物。出すものも武器に限る、というのが私の力でして」

「――なるほど」


 ホランドは理解した。であるならば、金による武装の時短ぐらいしか使い道がないと言う事だ。いやそれにしても破格の能力と言えるが。


 今王国はエルフの国に対して小規模な侵略戦争を仕掛けている以外に、大きな戦乱は抱えていない。平時ではあまり使い道のない能力という事だろう。


「加えて言えば、このというのが曲者でして。物品の値段というものは変動するものでしょう? 場所であったり、時代であったり、時節でも変わる。なので金貨を積めばよいという話でもない。まぁ、細かい話はよしますが、それほど便利なものでは無いのです。ありていにいえば、


「なるほど。こんな辺境の砦にあんたが派遣された理由が分かったよ。要するに王はあんたを持て余しているって事か」


「ええ。実はそうでして。私は、窓際の勇者なのですよ」


 そんな風に自虐しながらも、斯波はにこにこと笑っていた。


 ◆雑考

 その後の展開としては、砦内に囚われていたエルフの女の子たちを解放し、王国に反旗を翻して国家転覆を狙っていく。


 方向性的には漫画ドリフターズな感じ。


 ただし主人公は、エグイ現代兵器をエグイ方法で召喚し(敵の兵士の肉体を移植用臓器として価値換算。代償として数千人を生贄に捧げて数億の兵器を召喚……とか??)ていくチート後方支援。三人称で悪趣味味をたくさんぶち込みつつ素敵に楽しくじぇのさーいしていく感じ。


 敵として、信者を麻薬でラりらせて、人体特効させてくる血まみれ元カルト教団の狂聖女とか。武器こそ異世界産だが、徹底的に現代軍隊方式で整備した軍でやってくるどこぞの大佐とか、いろんなヤッバイ地球人が転移してきて、世界をぶっ壊していく感じ。


 凄い。楽しそう。でも書くのカロリーえぐすぎん????


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る