【犯人①】『夜兎』

「犯人は、お前だ。夜兎」


 紅貴は、夜兎に人差し指を向けた。


 夜兎が困った顔をする。


「ど、どうしてですか? 僕は犯人じゃありません。アリバイだってある」


「報告書は、本当は昨日のうちに書いていたんじゃないのか? 時間が空いたお前は、休憩がてら給湯室へ行き、そこでプリンを見つけて食べたんだ」


 紅貴の追及に、夜兎は怒った顔で反論をする。


「そんなのは濡れ衣ですっ。疑うなら、僕のパソコンの履歴を調べてください。昨日は、一日中依頼の仕事をこなしていたので、パソコンすら開いていません」


「なんだと?! ……だって、おかしいじゃないか。報告書を一つ書き上げるのに、15分しかかからないなんて! 最低でも1時間はかかる!」


「それはお前だけだ」


 花月がツッコミを入れた。


「そ、それじゃあ、トイレだ! トイレに立ったと見せかけて、本当は給湯室に……」


「行ってませんよ。第一、僕が食べたという証拠でもあるんですか?」


「証拠は………………ない」


「証拠もないのに人を犯人呼ばわりしないでください」


(くっそ~! 証拠がないと、犯人を追い詰めることができない)

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