12月12日クリスマス転スラ女子

京極 道真  

第1話 平凡女子 12月キターーー!異世界

「あー。今日も仕事かあ。」

携帯アラーム6:20止める。

「あー。寒い。サム。」

急いで着替えてコーヒー身支度。10分で完了。

『まるで高校生か。』

脳内で響く自問自答の声。

あれから8年か。時間が経つのは早い。

大学もこれといって何もなく。すべて風のように記憶は消えていった。

『何を詩人のようなこと言ってるの

バカじゃないか。

時計を見ろよ。もう6:43だぞ。いつもの電車に間に合わないぞ。』

またもや脳内で響く自問自答の声。

「はい。はい。分かってますよ。」

「ガタン。」

駅まで16分。中途半端な時間をひたすら歩く。

12月2日の朝。温暖化とはいえ、

「サム。サムだ。」

私のカラダには寒さしか感じない。

『そんなものだ。』

駅に着き、少し喉がかわいた。

自販機Q。「そういえば、無料のチケットあったっけ。」

使おうか。やめた。温暖化。ペットボトルはよくない。

いや。チケットをケチっただけだ。昼休みの飲み物で使おう。

『女子の一人暮しは何かと大変だ。』

そう、脳内で響く自問自答の声を振り切り。

改札「ピー」定期の音が響く。見ずにパスして

とりあえず、人の流れに沿って走り歩き。

特に走る必要はないが、つい小走りに走ってしまう。

狭いホームとわかっているが、最低3人は抜きたい。

一つでも前の車両に行きたい。乗りたい。

別に到着出口には関係ないんだけれど。

とりあえず、電車に飛び乗る。

気づくと3両目。悲しいことにいつもの車両の

いつもの定位置に立っている。

顔ぶれもだいたい同じだ。

女子はセキュリティの面からも毎日車両は変えた方がいいと

言われているが、実際面倒くさい。

秘密主義の私だがつい、欠如してしまう。

「はあー。」思わず声が出る。

しまった。目の前に座っている神経質そうな女子がチラリと私を見る。

が私が見ると急いで目をそらす。

両サイドの男子は変な女子だと少し私から離れる。

まあ、いつもだが。いいっか。疲れている。

朝から私は、つり革に全体重をかけた。

朝の通勤電車。

ふっと視線を感じ窓を見る。

自分が写っている。

『当たり前だ。ばーか。ヒカリ。』

脳内自問自答の声がまた響く。

今日もふつうに仕事か。たまには異世界にでも行きたい!

『じゃあ、行く?』脳内自問自答の声じゃなくて背後から声。

「誰!」

満員電車の中、今度は180度周り全員が

私の声に引いた。

次の瞬間。

「キーッ」と電車が急ブレーキ。

気を抜いていた足。よろける。

男子にぶつかる。振り返らず「すいません。」と私は即座に謝る。

駅に着いた。

声は脳内からかき消された。

会社の駅だ。いつものように狭い電車の車両からアリのように人が出て行く。

そしてまた狭い改札へ。

「ピー」表示される残金。「少ない。あー。」

まあ、いいっか。改札を抜けた瞬間、クラっと脳内が動いた。

立ちくらみか?

まあ、いい。

「おはようございます。」いつも通りだ。

会社での時間も、業務もいつも通りだ。

変ったことは、お昼の自販機Qのチケットで

コーヒー購入ぐらいだ。

時間は決まり通り今日も過ぎていく。

そして何も変化、変わりなく就業終わりの時間だ。

また朝の駅に足は向かう。見ることなく改札も定期で「ピー」と鳴って通る。

乗車時間約37分。座ったまま中途半端な時間が過ぎようとしている。

自宅の駅に着く。帰宅時間の人流れはゆるやかだ。

今日は高校生の集団と車両が重なった。

少しざわざわしている。懐かしい空気感が。

12月。確か。

脳内に残る記憶。たぶん大事な記憶なんだろうが。消した。

正しくは消えていった記憶。

たくさんの時間の中で消えてしまった。

めずらしく脳内の記憶をさかのぼろうと試みようと

高校生の後をゆっくり歩いた。

改札口「ビー!」っと鳴った。

改札が閉まる。「なんで?定期なのに。」

まあ、たまに改札故障はあるし、いいや。これが朝の出勤時のトラブルだったら

温厚な私も文句の一つも言いたくくなるが、

帰宅時だ。

時間はある。問題ない。私は大人だ。

私は駅員さんの窓口に移動「定期で通れないんですが。」

駅員さんは、なにやら機械操作。

「大丈夫です。定期券をもう一度通してください。」

「はい。」

「ピー」と通れた。赤い残高表示がさてる。1212円。

今日の日付か。

偶然かもしれないが「1212」

つい口に出してしまった。8年前の1212。

一瞬、周りの音が消えた。がすぐに高校生たちのうるさい声と電車の音。

世の中の雑音が聞こえてきた。

いつも通りだ。

定期をカバンにいれた。

朝通った道を歩く。平凡で何も変化のない一日が終わろうとしている。

途中コンビニに寄ろうかと思ったが、やめた。とりあえず帰りたい。

「ガタン。」ドアを開ける。

「ただいまー。」返事はない。もちろん誰もいないからだ。

こんなときは、決まってなぜか脳内自問自答の声が響く。

「お帰り。ヒカリ。」

ほんとうにありがたい声だ。

「今日も特に何もなかったし、明日もまた何もない。」

バタン。とりあえずベットに倒れた。

疲れた。

ご飯もお風呂もまだだ。

でも眠い。少しだけ寝よう。5分でいいから。

『おい、起きろヒカリ。』

誰かが私は呼ぶ。

「誰?」

「おい、起きろ。俺様ゼノだ。」

私は目を覚ました。

えっ!景色が違う。

私はお姫様が寝るような大きなふかふかベットの中にいた。

えっーーー!

私の顔を覗き込む男の子を押しのけて窓へ走った。

天上まである大きな窓。長い重いカーテンを開けた。

景色が違う。

「ここは?」

「お城の中だ。」

「お城?」

「異世界の。」

「えっ?」

「ヒカリが望んだから連れてきてあげたのに。

ようこそ異・世・界へ。」







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る