赤と青のライディングジャケット〜マルコム・スミスさんを偲んで。

高杢匠

第1話 林道の終点で。

高速道路の出口で料金を払い・・・・・、いつものダム湖に向かって、愛車、ADバンを走らせる。

ダム湖を見下ろすちょっと広めの駐車場のあるドライブインにたむろする、ローリング族・・・・・・の色とりどりの2ストロークレーサーレプリカの群れを横目に見つつ、林道入口の大看板を左手に見ながら、急坂 右カーブを駆け上がる。


急勾配に耐えかねて、エンジンの回転が落ちるタイミングで、シフトを4速から2速に落とす。

3キロほど走ると、荒かった舗装は砂利道に変わる。

ここから、50キロにも及ぶ未舗装林道が始まる。


道は荒れているが、十分に道幅のあるダートを20キロほど走ると、左へ曲がる小さな分岐がある。

分岐の入口は雑草に覆われており、道があるようには思えないが、100メートルほど進むと、1車線程度の黒土の道がはじまり、3キロほどで行き止まりになる。


この近辺は、戦後、まもなく植林した樹木を伐採、運び出すために作られた支線らしいが、なんらかの事情でこれ以上道を造ることができず、放棄されているようだ。


突き当りはちょっとした広場になっており、脱輪しないように、ADバンを慎重にUターンさせ、先端をいま来た道へ向ける。

「何らかの事態」で、緊急にここを離れなければならなくなったときに、素早く発進できるようにする準備だ。


僕は最近発売されたばかり・・・・・・・・・・のテント「ムーンライト3型」を取り出し、設営を始める。


今から30年ほど前。

当時はまだ硬派な紙面内容だった「BE-PAL」や、田中律子がよく表紙を飾る「OUTODOOR」といった「アウトドアライフ」をテーマにした雑誌が発刊され、地味ではあるが、野外活動が趣味としてのカテゴリーを確立しつつあるころだった。

社会人となってクルマと免許を手に入れた僕は、こういった「アウトドア」を週末の趣味にするようになっていた。


当時は今ほどキャンプ場の数は多くなく。たまに利用したとしても、無料ではあるが、整備の行き届いていない荒れ果てたところか、妙なルールを押し付けてくる「ヌシ」のようなクセの強いオーナーがいるような施設が多く、あまり居心地のよいものではなく、僕の当時の住まいの高崎からほど近い林道のこの場所を見つけ、休日の楽しみとしている。


現在は、林道終点でキャンプをするような行為はご法度だが、当時はまだまだこういった規制はゆるく、林道の道端で野営をすることを勧めるようなスタイルの入門書すらあった。



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