第13話 告! ユニークスキルを獲得しました!
そこにいたのは何と!我らのタカト君!
立花がつかまると思った瞬間、反射的に助けに走ったのだ。
というか、なぜタカトが立花を?
――だって仕方ないじゃないか……
そう、立花は権蔵をこの国一の融合加工職人と言ってくれたのだ。
権蔵の腕を最高と褒めてくれる人を、このままみすみすと見捨てていいのだろうか?
――いいわけないだろ!
だが、目の前にいる女たちは軍服姿。
どう考えても非力なタカトに勝ち目はなかった。
――なら!どうする!
タカトの脳内スパコン富岳ならぬスパコン腐岳!
汚い手ならいくらでも思いつくwwww
タカトは周りを見回した。
この場にあるのは段ボールに詰められた大量のエロ本と付録の『聖水もどき』。
――このエロ本を投げつけて、その隙に?
だが、単純にエロ本を投げつけただけでは、そのダメージ量はたかがしれている。
攻撃力を上げるためには質量をかさまししなければならなかった。
だが……どうやって……
――そんなの簡単ではないか!
腐岳が出した答えは、液体をかけることによってエロ本の質量を増加させることであったのだ!
さすがは腐岳!
だが、箱の中に一本しかなかった『聖水もどき』は先ほどタカトが床へと叩きつけたときにその99%が消失されていた。
絶体絶命!
万事休す!
だが、この瞬間!腐岳が新たな解答を導き出したのだ!
<告! ユニークスキル『聖水生成』を獲得しました!>
――何!聖水生成だと!
すでにこぼれて消失したと思われていた聖水を新たに生成できるというではないか。
――でかした! さすがは俺のスパコン!腐岳ちゃん!
<問! ユニークスキル『聖水生成』を使用しますか? YES/NO>
――当然! YESだろwww
<確認しました! これよりユニークスキル『聖水生成』の進化を試みます!>
――何! まだ進化をするというのか! これはワクワクwww
<告! アルティメットスキル『汚されたエロ本』の生成に失敗しました>
――なんだと!
<告! アルティメットスキル『汚されたエロ本』の生成を再度試みます>
<失敗しました>
<再度実行します>
<失敗しました>
<再度実行します>
<失敗しました>
<再度実行します>
<ユニークスキル『聖水生成』を統合します……アルティメットスキル『汚されたエロ本』の生成に成功しました!>
<生成に成功しました!>
<生成に成功しました!>
<生成に成功しました!>
今や、タカトの背中に背負われている『生死をかけろ! 筋肉超人あっ♡修マラ♡ん♡』の四本のアームにはビショビショに濡れた四冊のエロ本が握られていた。
え?タカトの手?
えっとね……タカト君の両手はなぜかズボンのチャックを急いで閉めようとしているようなのですが……どうにもうまく閉まらない様子で手間取っておりましたとさwww
だって、先ほどから体は震えっぱなしwww
――目の前にいるのは軍服の姉ちゃんだぞ! 怖いに決まってるだろうが!
そのせいか、タカトの足元は……水浸し……
おそらく狙いが定まらなかったのだろう……<失敗しました>
ああ……こんな時だからこそ、トイレのあの張り紙がありがたい!
『もう一歩前へ!』
そう!
――もう一歩前へ踏み出すんだ!
チャックを閉め終わったタカトは足元に広がる水たまりを思いっきり踏みつけた!
ビチャン! 飛び散る青春!
次の瞬間! 4本のアームからまるでミサイルでも撃ちだすかのように質量マシマシのエロ本たちが投げ出されたのだ。
その軌跡は、まるであの奇跡のバックホームを彷彿とさせる!
それは1996年、夏の甲子園のこと。
「松山商業 対 熊本工業」の決勝戦……
10回裏1アウト満塁、あと一打で熊本工業の優勝が決まるその場面!
ライトへ上がった大きな犠牲フライは誰が見ても熊本工業の勝利を確信させた。
だが!しかし!
直前で交代したライト・矢野さんによるバックホーム!
まるで狙いすましたかのように大きく開いたキャッチャーミットへと一直線に飛んでいった!
まさに! これこそ会心の一撃!
そして、また、タカトの投げた4冊のエロ本たちも立花どん兵衛をつかんでいる女たちの顔面にめがけてバックホーム!
まるで狙いすましたかのように大きく開いたキャッチャーマウスへと一直線に飛んでいった!
まさに! これこそ会心の一撃! 変態の境地!
顔の横を通り過ぎていくエロ本たちにお菊は反応できなかった。
結果、部下たちの顔面がビチャビチャ!と卑猥な音とともにエロ本によって顔面パックでもされたかのように覆いつくされていったのだ……
おそらく、熊本工業の三塁ランナーもそうだったのだろう。
アウト!と言われた瞬間、何が起こったのか信じられなかったに違いない。
というか、この小説の場合、アウトはアウトでも、違う意味でのアウトになりそうなのだがwwwwまぁ、今はそんなことは関係ないwww
というのも、お菊は目の前で起こったことが信じられなかったのである。
いきなり目の前に立っていたタカトがズボンのファスナーに手をかけたかと思ったら、あふれ出す出す聖水によってエロ本の質量を増加させたのである。
お菊はこれでも一応、女である。
秘密警察と言えども、昼日中から丸出しのウィンナーをいきなり見せられて驚かない訳はない。
顔を赤らめるお菊……
そして、思うのだ……
――ああ……やっぱりタコさんウィンナーだ……
と。
まぁ、確かに、ビン子曰く、タカトのそれはタコさんウィンナー並みに小さいらしい。
だが、タカトの名誉、いや、この小説がエロ小説にならないように念のために言っておこう!
何を隠そう!この時、お菊が思ったタコさんウィンナーは、ホンマモンのタコさんウィンナーであったということを!
そう……
あの時……
忘れもしない10年前……
お菊は思い出していた……
それは自分がまだ第七駐屯地支部のリーダーであった時のことである……
秘密警察である素性を隠すため、お菊は、駐屯地の食堂で配膳アイドルとしてオカズを配っていたのである。
配膳アイドル⁉
まぁ、こう見えてもお菊は巨乳! スタイルは抜群なのだ!
しかも! なぁ~んと!
配膳係の服装は給食当番さながらの白衣が通常であるにもかかわらず、お菊だけは珍しく和装の着流しといういで立ちだったのである!
もう、コレだけでもオカズポイント高いよねwwww
さらに! さらに! おまけで! 肌に密着した白い着流しをワザと着崩して、胸の谷間をより強調していたのだ。
もう、最高のオカズ!
男どもからしたらヨダレダラダラものに違いなかった。
だが、しかし……現実とは不思議なもので……そんなお菊をオカズにしようとするものなど誰もいなかったのだ……
というのも……
暗いのだ……
その立っている姿は、まるで幽霊そのもの……その周りの空気だけがどんよりと暗く重くなっていた……それはもう……坂東皿屋敷に出てくるお菊さんそのものと言っても過言ではない。
そんなお菊に手を出そうものなら、確実に呪われる!
きゃぁぁぁぁぁぁ!
そんなものだから、お菊が配膳するオカズ、すなわちタコさんウィンナーには誰も列をなして取りにこようとはしなかったのである。
タコさんウィンナーが山のように盛られた皿の後ろに立つお菊。
それに対して、横の皿に盛られているエビフライは飛ぶようになくなっていく。
――私は誰にも必要とされていないのだ……
世を欺くかりそめの姿だとは言え、それはお菊には堪えた。
だが、そんな時、一人の少年がニコニコとしながら皿を持ってきたのである。
しかも、その少年……なぜか今、目の前でチャックを下げているタカトにそっくりだったのだ。
ツョッカー病院の屋上で、そんなかつて見たタカトの顔を思い出したお菊は、まるで初恋にデレる少女のような表情を浮かべていた。
いや、過去の黒歴史を思い浮かべて、必死に隠そうとしているような感じにも見える。
まぁ、お菊の過去に何があったのかは知らないが、そのため、一歩踏み出したタカトの動きに反応できなかったのだ。
お菊の横をすり抜けたタカトは立花の手をつかんだ。
「ジジイ! 逃げるぞ!」
だが、なぜか立花はタカトの手を振り払った。
「お前! 手!洗ってないだろ!」
まぁ、仕方ない……ビショビショに濡れた本自体は『筋肉超人あっ♡修マラ♡ん♡』のアームが掴んでいたとしても、聖水生成装置はタカトの手によってしっかりと握られていたのである。
しかも、恐怖で震えブルブルとwww
そんな手でつかまれたら、そりゃ振り払いたくもなるものだ……
だが、この時、立花は理解していた。
このまま二人が逃げたとしても、この軍服の女たちに追いつかれてしまうだろうという事を……
ならば、自分がこの場に残って犠牲となることで、タカトだけでも逃がしてやろうと思ったのかもしれない……
そんな立花の大きな手が、タカトの背中を……
グッと!
押し出す!
どころか!
『筋肉超人あっ♡修マラ♡ん♡』のランドセルを思いっきりつかんで引き戻したのだ!
「ワシの代わりにワンワンよろぴく♪」
そんな立花の意地悪そうな笑顔がタカトの視界から離れていく。
「なに!」
勢いよくランドセルが掴まれた瞬間、前に進もうとしていたタカトの体は反動で跳ね上がっていた!
そして、そのままお尻から地面へと落下を始めたのである。
当然、何が起こったか分からないタカトの体は受け身など取れようはずもない。
このまま床に尻をぶつけることになってしまいかねない!
おそらく、貧弱タカトの事である、したたかに尻などぶつければ、しばらくは行動不能に陥ることになるだろう。
さすれば、軍服の女たちに拘束され、ついにはワンワンの着ぐるみを着せられ、NHKの本部へと連行されるのである。
そして、日夜、「カツドン最高ぉぉぉぉお!」と雄たけびを上げながらエロの妄想が浄化されるまでカツドンを作らされるのである。
もう、そうなったらタカトはタカトではなくなってしまう。
タカトは下ネタがあってこそタカトなのだ。
――ヤバい!
タカトは本能的に悟った。
だが、もう遅い!
床と尻との間は数センチ!
にもかかわらず、フリーになった両の手は遥か体の前方に伸びていた。
両手をココから背後へと回すことなどどうやっても不可能!
と、思われたその時!
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