奈落旅行
魔人。
プロローグ「ちょっとした現実」
朽ちる建物、枯れる植物。
崩れた建物の下には人がいて、暴れ出した魔物の腹に人がいて、太陽に焼かれた人がいて。
灼ける音のした方を見てから、2人して目を背ける。
穴の開いた世界。
わかる。この世界が少しずつ崩れ落ちている。この世界はいつか消えてしまう。
神父「どうして……こうなってしまったのでしょう……。」
そう隣で呟いた神父に答えるように、お互いが少しでも気を紛らわせられるように、話が続くように慎重に話を伸ばす。
シスター「知らない。アイツの考えてる事は難しいから。」
神父「…………確かに、そうでした。」
神父「……彼の事はいまだに解りません。」
シスターは俯きながら話す神父の顔をどうにか視界に入れようと試行錯誤しながら話を続ける
シスター「……アンタでも、わかんないのか……。」
シスターが自分達の下を見る。
今更にはなるが、事の経緯を話そう。何とか教会の屋根に登ったところまではよかったのだが、周囲に魔物がいる事に気付いて降りられなくなっていた。そこにただ暴れ回るだけの魔物が近付いてきたのだ。今建物が大きくて形が分かる程度に保てているのはこの教会しかない。
シスター「…………マズい。魔物がこっちに来た。別の場所に逃げるよ。」
それを聞いた神父は、急いで逃げられそうな場所を確認する。
神父「あ、こ、こっちに、こっちに_」
神父が指を指した方向は、神父とアイツが出会った場所。あの気味の悪い塔がある西側。そして、
シスター「……名案。使いたくないけどさ。」
神父「…………。」
この神父の武器がある場所。
神父「……私も、使いたくないです。」
シスター「じゃあ、使わなきゃいい。」
神父「でも、それではこの状況は…」
シスター「…………使うしかないか。アンタがこの世界の人じゃないのが救いかな。
」
気付けば目的のものの前に来ていた。
この世界の人は世界という決まりに縛られていて殺す事ができない。だから魔物が襲ってきても蹂躙されるだけ。逃げる事しかできないだけ。
他にも決まりは色々あるけど、今は気にしなくていい。
神父「離れていてください…。」
シスター「塔の中で待っとく。」
神父「……はい。」
シスター(最後まで頼ってくれるのか。……あの日が懐かしいな。そして、あの日まで一切気付かなかったせいで早めに助けてやれなかった事を後悔させてくれ。)
1度目のサイレンはサイレン付近の存在を。
シスター(………うん。やっぱり大好きだ。あの日無理矢理こじ開けて空間から出てきたお前が大好きだ。)
2度目のサイレンは家内にいる存在を。
3度目の_____
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