第5話 世界の事

 カウールに着いて行くと、20畳くらいの広さで絨毯の敷いてある部屋に入っていった。

 部屋の真ん中にローテーブルが有り、それを挟んで両側にベンチタイプの椅子が置いてあった。

 歓談室なのかな。応接室ほど気が張らない感じ。


「とりあえず好きな様に座れ」

 何か言おうとしたユカちゃんを制してラウールは椅子を指し示した。


「お前たちを連れて来たのは保護の為だ。お前たちは命を狙われている。お前たちを狙っている勢力より先にお前たちを確保しないと、この世界がまずいことになるのだ」

「意味わかんない。そんなことより私達を元に戻してよ」

「まぁ聞け…」

 ラウールはこの世界の事を話し始めた。


 世界は3つに分かれて存在している。

 神々が住まう世界。

 僕達の暮らす世界。

 そしてラウールの世界。今僕らがいる世界だ。

 そのどれにも属さないものは混沌と呼ばれている。

 神々が住まう世界は特に名称は無く、一般的には天界と呼ばれている。神々はこの3つの世界を管理しているので管理者と呼ばれることもある。

 この管理者とは別に創造神あるいは破壊神と呼ばれる神が存在する。

 創造神は混沌も含めた、世界全てをお創りになった。そして全てを無に帰す破壊神でもある。

 創造神は世界に干渉する事はない。現れることがあるとすれば全てが無に帰る時だそうだ。


 僕達が暮らしていた世界は神々の世界に似せて作られた世界。テラルドと呼ばれているらしい。

 今いるこの世界は神々の実験場として創られた世界。マカルドと呼ばれている。

 マカルドは魔力が存在し、魔法や魔術を使う生物や異形のものが存在する世界だ。

 このマカルドにおいても人類は存在している。

 この世界においてヒト族は魔物や魔族に狩られる弱い存在だった。

 ヒト族は魔力を制御することが出来ないので、魔族に対し圧倒的に不利な立場だった。

 物理的な攻撃では限界があった。

 対抗手段はテラルドから召喚した人間。

 テラルドから召喚した人間は、こちらの世界に馴染むと魔力を制御できる様になる。

 そしてその中から、魔王さえ倒すことが出来る勇者が現れるのだ。


 ヒト族が危機的状況に陥ると、異世界から勇者候補を召喚する。召喚された異世界人はある程度の修行をした後、魔族退治の旅に出る。その果てに魔王を倒す。魔王を倒すとヒト族にとって平和な時代がしばらく続くが、いつの間にか魔王が復活。魔族が活性化する。

 こういうサイクルが繰り返されてきたらしい。


 3年前勇者と魔王が戦った。その結果、勇者が魔王を倒した。

 それはいつもの流れだったが、いつもと違うのは魔王が完全に消滅した事だ。

 コアが有れば魔王は復活する。そのコアが完全に破壊されたのだ。

 これはヒト族にとって喜ばしい事かと言えばそう単純な話でも無いのであった。


 問題の一つは、魔王の復活が無いと知った魔族の中から自称魔王がたくさん出てきた事。言ってるだけの奴はともかく、実際に勢力を集めて暴れている者がいる事。

 問題の二つ目。勇者が魔王を倒したので自分の世界に帰れると思ったのに、帰れないと知って戦いを放棄して姿を消した事。

 この事により、ヒト族は魔族に対抗する事が出来ていない。

 そして、問題の三つ目。魔族が勇者候補を殺しまわっている事。召喚がなされた瞬間に魔族が現れ、殺戮の限りをつくすのだ。魔族に対抗出来るまで育つ間もない。

 どうやら、召喚を感知する何らかの方法を持っている様だ。


 これらの問題は実は魔族側にとってもまずい状況らしい。理由は教えてくれなかったけど。


 そこでカウールはユカちゃんとヒロが召喚される前にこちらに連れてきて、育てようとしたというのが事の経緯らしい。


「それで何で私達なの?」

「それは、お前たちが勇者の因子を持つからだ」

「勇者の因子って何?」

「勇者になれる可能性だ」

「可能性という事は、必ず勇者になる訳じゃないのね」

「勇者になるのは一人だけだ。だが、勇者では無くとも魔族に対抗できるものになる」

「何で私達がこの世界の為に戦わなきゃいけないの?」

「この世界の為にお前たちが戦う必然は無い。だが、戦わなければ殺されるだけだ」


「僕は嫌だ!元の世界に帰してよ!!」

 今まで黙っていた、ヒロが叫んだ。




「只今ローディング中です」




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 プロローグが終わって本編開始かな?

 俺の大活躍期待してくれよな。

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