社長と仲良し人事部長!

崔 梨遙(再)

1話完結:1700字

 僕が某求人広告屋(採用コンサル会社)に入社した時の話。僕は、30歳くらいだった。僕は3年のブランクがあったが、順調に新規開拓の営業を進めることが出来ていた。そして、初めてのアポイント。僕はなんとなく、“復帰第1弾、始めてアポイントを取った企業からは、絶対に申込み書をもらってやる!”と決めていた。


 復帰第1弾のアポは、飲食チェーンの会社だった。人事部長と、若い採用担当を相手に商談を進めた。人事部長は、僕が持ち込んだ企画に乗り気になった。僕は、大、中、小、3パターンの企画を提案した。予算に合わせられるように、3パターンの企画を用意していたのだ。人事部長は、1番大きな金額の企画書がお気に召したようだった。


「これはおもしろい! 社長の許可をもらえたら、スグに申し込むよ」

「あ、1番大きな提案ですね。いきなり大きな提案が通りそうなのでしょうか? ご予算に合わせることは可能なんですけど」

「大丈夫、大丈夫、社長とは仲がいいんだ。僕は社長から信頼されているからね。僕が申し込みたいと言えば、スグに申し込めるよ」

「良かったです、よろしくお願いします」

「任せてくれ、スグに電話するから」

「わかりました、お電話をお待ちいたします」


 ところが、全然電話が無い。痺れを切らせた僕が、人事部長に電話をした。


「ご検討いただけていますでしょうか?」

「ああ、なかなか社長からOKがもらえないんや。もう少しだけ待ってて」


 それでも、電話はかかって来ない。


「どのような状況でしょうか? よろしければ、社長様を説得できそうな資料などをお持ちしますが」

「ああ、大丈夫、大丈夫、社長も前向きになってきたから」


 そして、ようやく申込み書をいただいた。良かった。“復帰第1弾、最初のアポのお客様から申込み書をもらう!”この目標を達成した。僕は嬉しくてテンションが上がったが、よく見ると、1番小さな企画だった。まあ、いい。僕は同時に送られて来た求人条件に目を通した。僕は青ざめた。


 スグに部長に電話をかけた。


「あ、崔さん? 申し込み書は届いたかな?」

「あ、受け取りました。ありがとうございます。それでですね、求人条件に目を通しましたが、月給は記載されている金額に間違いございませんか?」

「うん、○○万円やろ? 間違いないけど、それがどうしたん?」

「申し上げにくいのですが、安すぎます。平均給与は○○万円です。この条件では、もしかしたら応募は無いかもしれません」

「その条件で社長にOKをもらったんやから、それで進めてくれないと困るんや! それに、多少不利な条件でも採用に成功させるのが崔さん達の仕事やろ? 崔さんは、黙ってこちらの言う通りにやってくれたらええんや!」

「そこまでおっしゃるのでしたら。それでは、この条件で進めます。ですが、これは多少不利というレベルではありませんよ。致命的です。それは、また。定期的にお電話しますので」


 後日。部長に電話をかけた。


「崔さん! どうなってんの? 全然応募が来ないんやけど」

「さようでございますか、やっぱり給与の問題だと思います」

「だったら、給料が問題だって最初に言ってよ!」

「申し上げました。部長が、この給料で進めろとおっしゃったんですよ」

「給料をアップする! このまま応募ゼロだと僕のメンツが丸つぶれやからな」

「平均給与は○○万円です」

「わかった! 早速社長の許可をもらうから」

「お願いします! 今ならまだ間に合います!」


 給与を訂正したが、やっぱり遅かったのか? 応募は3名だった(と思う)。人事部長はお怒りだった。長時間、僕は怒られた。



 “社長に信頼されてるから大きな企画でやる”と言いつつ、長い時間をかけて1番小さい企画、“この給与でいく”と言いつつ、逆ギレ。僕は、給与の安さが気になった時に、お申し込みを断れば良かったと後悔した。僕は、翌年、最初から平均的な給与の条件での申込みを提案したが断られた。これは本音すぎるかもしれないが、正直、断ってもらえてホッとした。言いたくないが、こちらにもお客様を選ぶ権利がある。

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社長と仲良し人事部長! 崔 梨遙(再) @sairiyousai

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