第11話 売れない作家、地元のダンジョン冒険者に絡まれる
手には召喚した銃器をチラつかせ威嚇するように現れた。
いかにもな不良連中。
コメント欄も「カチコミか?」なんて言葉であふれていた。
<おい、あいつら「バクテリア」の連中じゃないか?>
「バクテリアですって?」
そのコメントを拾った美波が渋面を前に押し出す。
「あのバクテリアが何のようなのよ」
「知ってるのかミナミ……ん」
言い慣れないなぁミナミンって。
美波はゆっくり頷いた。
「別の公園のたまり場にしているタチの悪い連中よ。地元最強を謳う冒険者集団という名の。族よ族」
なるほどな……俺の時代にはなかったけど、今じゃバイクだけじゃなく武器でオラつくのも主流というわけか。
大怪我しない召喚武器を用いて小競り合いしたり仲間とダンジョンに潜るのは、ある意味健全なのかもしれないな。
「ちょっと何の用ですか?」
ハルルさんが語気強めに対応するとリーダー格らしき男が負けじと凄んで見せる。
「気にくわねぇなぁ、人気配信者のハルルさんだからって、やっていいことと悪いことがあるだろうが」
「悪いこと? 言いがかりなら余所行きなさい」
「言いがかりじゃぁねぇ!」
リーダー格の男はそう言ってビシッと指さした……俺を。
「コイツだよ、コイツ! 「盾だけでトレント倒しました」だってぇ!?」
「何なんだよ盾ニキってのはよ! 変なニキ呼び流行らそうとしてんじゃねぇ」
「信じられっか! 台本ありきで裏でコソコソやってんだろう! なぁ!」
そこまで言われ松尾さんはカメラの横で激高した。
「何を言いますか!! 自分が本気で挑んで負けたんですよ! それを台本とは!」
松尾さんの発言にコメント欄が反応する。
<確かにジャスティスは手を貸さなそう>
<真面目だし、なんかノリ悪いだろうから断りそう>
<逆に説教してきそう、不正許すまじって>
<友達いなさそうだもんな、クラスで浮いてそう>
褒めてるようで貶されているコメントが多数だった。
「まあ、確かに頼むとしても松尾さんには頼まないよなぁ」
俺も同意する、「真面目な自治系配信者の彼が芝居に協力するわけにはいかないだろう」が共通の認識のようだ。
一方松尾さんはコメント欄にキレ散らかしていた。
「友達いなくてウザがられているとか! お前は同級生がこの野郎!」
(あ、友達いなかったのは図星っぽい)
面倒臭い委員長タイプのなんだろうなぁ……
コメント欄に噛みつきだした松尾さんをよそに、リーダー格の男は銃器を構えながら吠える。
「とにかく! 俺たちのシマで嘘ついて目立とうとしてんなら、喧嘩売られているとしか思えねんだ!」
地元最強を売りにしている彼らにとって、それは許せないらしい。
「まぁ確かに、盾だけであんなことされちゃ、CGとしか思えないかもね」
「だよな、そうだよな」
これに対して周囲のギャラリーも唸る。
「そうなのか」
誰でも盾だけでダンジョンの奥底に放り込まれりゃあの位の芸当はできると思うが。
にわかに盛り上がるギャラリーから「やっちゃえ」「勝負しろ」とヤジが飛び交う。
そのボルテージに当てられたのか、それとも怒りで我を忘れているのかは定かではないが……おそらく後者だろうが松尾さんが腕をブンブン振り回し吠えた。
「おっしゃ! やったろうじゃないですか!! ジャスティスの名のもとに! 私のチームとお前らの全面戦争ですぞ!」
「おいおい、カメアシの立場で何決めてんの!? あと、ちゃっかり「私の」チームと後ろの一員に加わっているし……」
決定権を持っていない松尾さんを諫めようとするも……
「よく言ったべ! なら戦争じゃ!」
リーダー格の男が勝手に快諾してしまった。
「いや、俺はやるとは――」
「どうすんべ、ここはタイマンか!」
「ここは四対四だろ」
「俺にもやらせろ!」
「あぁ!? 俺が行くに決まってんだろ!!」
おぉう、こっちの話も聞かずにモメ始めたぞ。
血の気の多い連中らしく戦いたくてウズウズしてるようで……今「やらない」なんて言ったらこの場で襲いかかってくる勢いだぞ。
「せっかくのコラボなのに、こいつら警察呼んで法テラスに訴えて慰謝料ふんだくってやろうかしら」
おっと、ハルルさんのドズ黒い部分が見え隠れしているんですけど!?
「まぁまぁハルルさん、アイツらの相手するのも悪くないですよ、カイ兄のカッコいいところも見れるし何より再生数も稼げますよ」
「そ、それもそうね」
美波……コイツはもう腹黒いところ一切隠そうともしねぇ。
「ていうか勝負する方向なのかよ、面倒くせぇ」
とりあえず、「俺が俺が」と揉める連中をどうやって落ち着かせようか思案する……まぁ人聞きが良かったら不良なんてやってないか?
そんなことを考えていると、今度は別の方がざわめきだした。
ザワザワ――!
おいおい、今日一番のざわめきだぞ?
「今度は一体なんなんだ。また別の不良か?」
うんざりして振り向いた先には――
「やあ」
不良よりたちの悪い女がそこにいた。
「ま、円佳?」
「う、うそ……」
「え、日高円佳!?」
ダンジョン配信者のレジェンド、研究者として連日メディアに引っ張りだこの日高円佳がそこにいた。
※次回は12/21 18:00頃投稿予定です
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・売れない作家の俺がダンジョンで顔も知らない女編集長を助けた結果
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