ルディラ=ユガ

くろこ(LR)

(1)アシェンタ

序①

   ■■の手記


 カルヴァリオ、屍骸――そう呼ばれる怪物との戦いが始まって、もう幾百年が経ったのだろう。それは少なくとも私の父のさらに上、六代前の時代にはすでに始まっていたという。かつては大陸の隅々まで行き渡っていたという輸送路も、あの黒い荒波に呑み込まれ、断絶して久しい。砂漠の向こうに、今でも残っている生命があるのか、知る術はない。奴らの勢いは増すばかりだというのに、人類は日に日に疲弊していく。このままではいずれ、我々の住むこの寂れた大地もささやかな文明も、失われてしまうだろう。

 奴らはどこから来て、どこへ向かおうとしているのか。我々はただ、その嵐に、蹂躙されるしかないのか。

 このままでは、負ける。確実に。それは私の代ではないかもしれない、だがそう遠くない未来だ。確実に、この一帯の人類は滅びる。

 何か手立てを考えなくては――私はまだ、諦めない。


   (中略)


 ああ、この世は地獄なのだ。罪悪の掃きだめなのだ。

 落ちてくる――落ちてくる。

 不要なものを取り除き、完全な世界を作るための、ここは、その廃棄場だ。

 我々こそが――■■■だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ルディラ=ユガ くろこ(LR) @kuroko_LR

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る